希望退職者募集、2月すでに5社|新型肺炎の直撃も

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サッポロホールディングス本社(東京・恵比寿)

希望(早期)退職者の募集に踏み切る上場企業の列が途切れない。先週末(21日)には、特殊印刷のNISSHAが250人規模での募集を発表した。2月に入り、希望退職者の募集計画を発表するのは東芝機械、シチズン時計、サッポロホールディングス(HD)、ラオックスに続き5社となった。

サッポロHD、人数定めず2回に分けて募集

2月中に希望退職者の募集を発表した4社はいずれも売上高が1000億円を超える大手クラス。

サッポロHDは、中核子会社のサッポロビールで早期退職優遇制度を実施する。約2400人の社員のうち、勤続10年以上で満45歳以上の社員を対象とするが、募集人数の目標は定めていない。ビール事業の強靭化、食品など成長分野へのシフト、グローバル展開の加速といった基本戦略に沿い、人員配置の適正化を進める狙いという。  

募集時期は2回に分け、1次分が4月1日~6月10 日(退職日は11月20日)、2次分が10月1日~12月10 日(退職日は2021年5月20日)。所定の退職金にセカンドキャリア支給金を加算し、希望者には外部の専門会社を通じた再就職支援を行う。

サッポロHDは昨年12月末、米国市場で苦戦中の果汁飲料から撤退し、酒類事業に経営資源を集中するなど事業再構築に乗り出している。

シチズン時計は子会社のシチズン電子(山梨県富士吉田市)、シチズン電子タイメル(同)の両社で200人程度の希望退職者を募集する。両社は照明用LED(発光ダイオード)、小型チップLEDなどを生産している。

新型コロナウイルスの感染拡大が引き金になったのが免税店大手、ラオックス。主要顧客である中国人観光客が激減し、業績を直撃する事態となっているためだ。

2月17日(~3月6日)から、子会社を含めて160人程度の募集を始めた。うちラオックス本体は販売職の社員を中心に140人で、全社員の約2割にあたる。退職日は3月31日。組織・人員体制を見直し、中国からの訪日客依存からの体質転換を図る。

ラオックスの2019年12月期業績は売上高9.8%増の1295億円ながら、営業赤字31億円、最終赤字78億円で、営業・最終とも2年連続の赤字に沈んだ。

「訪日客」依存からの転換を目指す…ラオックス(東京・銀座)

NISSHAは250人規模、9年ぶりの募集へ

NISSHAは、同社と国内子会社の正社員を中心に250人規模の希望退職者を4月28日~5月15日に募集する。退職日は6月30日。希望退職者を募集するのは2011年(490人応募)以来9年ぶりで、2017年10月に社名を日本写真印刷から変更後初めて。

同社は印刷技術を応用し、スマートフォンやタブレット、ゲーム機などに広く使われるタッチセンサーをはじめ、プラスチックや金属の表面を装飾する加飾フィルム、医療機器など幅広い製品を展開する。

しかし、中国向け製品の需要減などで国内工場の稼働率が低下し、2019年12月期は売上高が16%減の1731億円に落ち込み、営業・最終損益も40億円を超える赤字に転落。25億円規模のコスト改善に向けた収益力強化策の一環として、希望退職者募集を決めた。

東芝機械は2月4日に発表した中期経営計画に、200人~300人規模の希望退職者募集を盛り込んだ。対象者は本体と子会社の社員で、連結従業員の1割近くに相当する。3月中旬から4月初旬に募集する。

同社は東芝グループからの離脱に伴い、4月1日に「芝浦機械」への社名変更を控える中、旧村上ファンド系投資会社が1月に開始した敵対的TOB株式公開買い付け)への対応に追われており、経営の重要事項が目白押しだ。3月末に買収防衛策の発動を付議する臨時株主総会を開き、局面転回を目指す。

ノーリツ、ファミマは応募が殺到

一方、ノーリツ、ファミリーマートは今年に入って実施した希望退職者募集の結果(両社とも計画公表は昨年11月)を発表した。ノーリツは600人の募集に789人、ファミリーマートは800人の募集に1111人(退職が認められたのは1025人)が応募し、予定数を3割以上上回る殺到ぶりとなった。

◎希望退職者募集を発表した企業  ※HDはホールディングス

社名 募集内容と結果
2月 東芝機械 200~300人規模(3月中旬~4月初旬)
シチズン時計 200人程度(子会社のシチズン電子、シチズン電子タイメルが対象)
サッポロHD 定めず(4月1日~6月10日、10月1日~12月10日)
ラオックス 160人程度(2月17日~3月6日)
NISSHA 250人程度(4月28日~5月15日)
1月 曙ブレーキ工業 200人(2月24日~3月9日)
〃      片倉工業 100人程度(3月9日~19日)
リョーサン 80人程度(2月3日~14日)
佐鳥電機 60人程度(3月16日~31日)
ジオマテック 40人程度(2月3日~3月2日)
  <19年10月〜>   
12月 オンワードHD 350人程度(20年1月7日~30日)→413人応募
ダイドーグループHD 50人程度(20年1月10日~24日)→35人応募
三越伊勢丹HD 新潟三越伊勢丹(20年3月閉店予定)で実施
11月 日本電波工業 約100人(11月25日~12月24日)→129人応募
オンキヨ― 約100人(12月12日~20日)→98人応募
ファミリーマート 約800人(20年2月3日~7日)→1025人退職
LIXILグループ 定めず(20年2月17日~28日)
ノーリツ 約600人(20年1月17日~31日)→789人応募
味の素 100人程度(20年1月6日~3月13日)
ラピーヌ 40人程度(11月18日~27日)→31人応募
10月 サンデンHD 200人程度(10月25日~11月8日)→215人応募
スペースシャワーネットワーク 15人程度(12月2日~18日)→22人応募
〃      日立金属 2020年3月末退職で実施予定
FDK 250人程度(12月10日~17日)→183人応募

文:M&A Online編集部