AIで法務業務に革新を起こす 京大発ベンチャーLegalForce

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契約書レビュー(契約内容の再検討)業務は長時間かかるケースが多い。定型の契約書のレビューは面白みに欠けるとの声もある。そこで、手間がかかり業務効率の余地がある契約書レビューを、AI(人工知能)を活用して自動化しようという京都大学発のベンチャー企業が誕生した。「LegalForce(リーガルフォース)」がそれだ。

導入社数は100社超

同社は代表取締役CEO(最高経営責任者)の角田望氏と、代表取締役共同創業者の小笠原匡隆氏が2017年4月に設立した企業。 

角田氏は2010年京都大学法学部卒業後、同年に旧司法試験にトップ合格を果たした人物。司法修習生を経て2013年に森・濱田松本法律事務所に入所し、M&A案件、コーポレート・ガバナンス関連業務などの数々の法務案件を経験した。 

一方、小笠原氏は東京大学法科大学院の特別成績優秀者に選ばれ、司法試験に合格後、角田氏と同じく森・濱田松本法律事務所に入所した。 

その後、両氏はLegalForceを設立し、過酷な労働環境に置かれがちな法務担当者の業務改善を目指し、契約書レビュー業務に特化した契約書レビューソフトウエア「LegalForce」の開発に着手。2018年8月にオープンβ版の提供開始し、2019年4月に正式版の提供を始めた。 

正式版の投入から4カ月後の8月には導入社数は100社を超えた。この間、英文秘密保持契約書、OEM(相手先ブランド生産)契約書、建設工事請負契約書など複数の契約書の自動レビュー機能の追加も行った。 

2年で資金調達額は約6億円に

LegalForceの強みは京都大学との共同研究と優秀な人材の採用にある。大手法律事務所出身の弁護士や情報処理工学専攻の若手エンジニアを採用し、従業員数は30人を超えた。

また自然言語処理技術で高い知見と実績を有する京都大学の情報学研究科教授である森信介氏を共同研究者と技術顧問として、さらに同研究科准教授である末永幸平氏も技術顧問として迎えている。 

こうした取り組みが高く評価され、同社は2018年3月に京都大学イノベーションキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、複数人の個人投資家から合計8000万円の資金調達に成功した。  

2018年11月にはジャフコ、ドリームインキュベータ、京都大学イノベーションキャピタルから約5億円を、さらに2019年1月には三菱UFJキャピタル、みずほキャピタルから約4000万を調達し、累計の調達額は約6億円に達した。

訴訟大国の米国では法律分野の課題をITを用いて解決するリーガルテックの市場規模は年々拡大傾向にあり、企業価値が10億ドル(1000億円超)を超えるユニコーン企業も誕生している。

一方、民間の調査会社によると日本のリーガルテック市場は2018年時点で230億円ほどで、これが2023年には350億円ほどに拡大するとの予測がある。こうした流れに乗り、同社は目指す「リーガルテックの総合カンパニー」となれるかどうか。調達資金の活用法と事業戦略が試されることになる。

年月 LegalForceの沿革(同社ホームページより)

2017年4月

設立

2018年3月

8000万円の資金調達を実施

2018年8月

AI(人工知能)搭載の契約書レビュー支援ソフトウエア「LegalForce」オープンβ版の提供開始

2018年11月

約5億円の資金調達を実施

2019年1月

約4000万円の資金調達を実施

2019年4月

契約書自動レビューソフトウエア「LegalForce」正式版の提供を開始

2019年8月

正式版導入社数100社達成

文:M&A Online編集部