前回に引き続きIoT(モノのインターネット)の分野で活発な動きがありました。GEが産業向けIoTデータ統合プラットフォームのBit Stew Systemsと機械学習による予測解析のWise.ioの2社の買収を発表しています。また、グループ企業のGE Digitalを通じて、産業機器のインターネットとの相乗効果が期待できるフィールドサービス管理ソリューションのServiceMaxを$915Mで買収すると発表しました。
一方、ハイテク調査会社のGartner(ガートナー)はIoTに強い同業のMachina Rsearchの買収を発表しました。
調査会社のIDCによれば、米国の2016年のIoT関連支出(ハードウェア、ソフトウェア、サービス、接続サービスを含む)は$232B(約2.6兆円)に達する見込みです。業種別の内訳では、製造が$36B、輸送が$25Bと多くなっています。様々な業種に共通する用途(製造オペレーション、貨物モニタリング、スマートビルディング、など)への支出も$31B近くなっているそうです。全体として今後は年率16%で成長し、2019年には$357B(約4兆円)に達すると予測しています。
IoTの市場では、半導体企業はセンサや無線接続モジュール、ソフトウェア企業はクラウドサービス、デジタル家電メーカはIoT機器を得意としていますが、ベンチャーの台頭や(それらの買収による)大企業の新規参入など競争・協業関係は混とんとしています。産業向けIoTの分野では、自らがメーカでもあるGE、Siemens(シーメンス)、NEC、などが積極的に取り組んでいます。
GEによる今回の買収はいずれも同社が産業インターネットのオペレーティングシステム(編集部注:クラウド用コンピュータのOS)と位置づける「Predix」のプラットフォーム事業を強化するものです。
以下に、GEの最近のM&Aとベンチャー投資についてまとめてみました。産業向けIoT関連以外では、タービン部品や金属3Dプリンタなど、発電所や航空機向けの部品やその製造技術への投資が目立ちます。
年月 | 企業名(事業内容) ※買収額は米ドル表示 |
2014年1月 | API Healthcare(医療機関向け人材管理) |
2014年5月 | Wurldtech( 産業インフラセキュリティ) |
2016年4月 | Metem(タービン超合金部品) |
2016年9月 | Arcam(金属部品3Dプリンティング) |
2016年10月 | LM Wind Power(風力発電タービン部品;ブレード)$1.65B |
2016年10月 | Concept Laser(金属部品3Dプリンティング) $599M |
2016年11月 | Bit Stew Systems(産業向けIoTデータ統合プラットフォーム) $153M |
2016年11月 | Wise.io(機械学習による予測解析) |
年月 | 企業名(事業内容) ※資金調達額は米ドル表示 |
2015年5月 | TTTech(自動車ECU)€50M |
2015年10月 | Welspun Energy (インド電力会社) $165M |
2015年10月 | Bracket Computing(仮想インフラ・ソフトウェア)$46M |
2015年12月 | Optomec(産業用3Dプリンタ) $6M |
2015年12月 | ThetaRay(データ解析;予測メンテナンス、不正防止)$15M |
2016年5月 | Pivotal(ソフトウェア開発PaaS)$653M |
2016年7月 | Carbon(3Dプリンタ;等方性樹脂部品製造) $81M |
・Harmanをサムスンが買収(車載エレクトロニクス;$8B)
・Hibernia NetworksをGlobal Telecom & Technologyが買収(通信サービス;$590M)
・TubeMogulをアドビが買収(ビデオ広告プラットフォーム;$540M)
・CrowdTangleをFacebookが買収(ソーシャルコンテンツ効果解析)
・FacioMetricsをFacebookが買収(顔画像解析)
・Machinimaをワーナー・ブラザースが買収(ゲーマ向けビデオ)
・M&O SystemsをBroadridgeが買収(金融機関向けIRソリューション × 報酬管理)
・KindyをSittrが買収(ベビーシッターアプリ)
・Machina Researchをガートナーが買収(IoT調査会社×ハイテク調査会社)
記事提供:TransCap 編集:M&A Online編集部
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