減速する中国市場で勢い増すトヨタ、海外の報道は

alt

2018年の中国自動車市場は前年比2.8%減の2808万台と、28年ぶりの減少になった。しかし、軒並み業績不振だった海外の自動車メーカーに対して、トヨタ自動車<7203>の新車販売台数は147万台と同14%も増加。ブルームバーグは、トヨタが今後10年間で中国での自動車生産を3倍にする予定とも報じている。トヨタの中国での現況について、海外メディアの論調を整理した。

景気減速期の中国社会のニーズに対応

米ニューヨーク・タイムズ紙は2月6日、トヨタの2019年3月期第3四半期決算報告を受けて「北米での売上が低迷する中、中国での成功が(北米の)マイナスを相殺した」とコメントした。理由として、景気停滞に伴うコスト重視志向が明らかな中国で、ブレッド&バター車(余分な装備や装飾のない実用的な車)需要が拡大していることを挙げ、「安くて勢いのある」(”cheap-and-cheerful”)新型「カローラ」や「レビン」といったセダン車が消費者の関心を集めていると説明している。

セダン人気でトヨタの中国販売は高成長を維持(同社ホームページより)

2018年のトヨタ車中国販売では、「カローラ」「レビン」「カムリ」がトップ3に。米中貿易問題の紛糾などで景気減速が深刻化し、中国の一般市民が自動車への支出を控えるようになったため、これら3車種の人気がクロスオーバーSUVの「RAV4」といった高額な大型モデルを上回ったと指摘。その一方で、消費者嗜好が二極分化しており、最高級ブランドの「レクサス」人気も根強いと述べた。

中国での自動車販売の減少には、小型車の購入減税の廃止と貿易問題が影を落としていると同紙は分析。2018年にこの30年近くで最も成長が鈍化した中国経済について、今年はさらに成長ペースが弱まるだろうと予測している。

さまざまな要素を組み合わせて需要を喚起

米CNNは2月8日、「中国のトヨタと、よろめく世界のライバル」という刺激的なタイトルで、中国自動車市場の現況を報じた。昨年の需要減少の原因については、ニューヨーク・タイムズ紙と同じく、補助金の撤廃や景気減速、米国との貿易問題を挙げた。

その上でトヨタの成功は、いくつもの要素(中国市場への注力、競合他社にとって逆風となった新関税、プラグインハイブリッド車の現地開発)を組み合わせ、新車需要を巧みに掘り起こしたことにある、と解説した。 

その中でも特に昨年の中国の新関税導入は、米国工場からハイエンド車を中国に出荷しているBMWとダイムラーの利益を押し下げた一方で、「レクサス」には相対的な割安感を与えトヨタにとって追い風になったとCNNは分析した。

「追い風」になったハイブリッド車

さらにCNNは中国政府が大気汚染問題と二酸化炭素(CO2)排出量削減に取り組む中で、電動車の普及を積極的に推進してきたことが、トヨタを助けていると指摘した。世界最大の電気自動車(EV)市場である中国だが、報道によるとCO2排出目標達成のためには、純粋なEVのみでは不十分だと政府は認識している。ハイブリッド車(HV)は一般的にEVよりも安く購入でき、充電や走行距離についての懸念もない。

トヨタは2017年、現地生産のハイブリッド・ユニットを搭載した「カローラ」および「レビン」を約14万台販売しており、今後さらにラインナップを拡大する予定だ。トヨタのHV戦略は、まだ完全にEVに乗り換える余裕がない中国の消費者をターゲットとするものでもある。CNNは調査会社ライトリサーチの「中国政府のHV支援策は、トヨタにとって競争上重要な足がかりとなる」とのコメントを紹介した。

ハイブリッドモデルの充実も中国販売の追い風に(同社ホームページより)

その他のメディアでは「レクサス」の売上の限界を危惧するブルームバーグや、中国の需要は停滞しアメリカの需要についても3.5%の低下を予測するゴールドマン・サックス、新日米通商交渉等リスク想定が難しいと指摘するロイターなど、トヨタの将来展開に懸念を示す報道も見られた。

<参照記事>
https://www.nytimes.com/reuter...
https://www.bloomberg.com/news...
https://edition.cnn.com/2019/0...