債務超過から抜け出せないタカキューに復活の道はあるのか?

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※画像はイメージ

スーツを販売する「TAKA-Q」の運営会社タカキュー<8166>が、経営不振にあえいでいます。2023年2月期に10億5,000万円の純損失を計上。2022年2月末に8億7,600万円の債務超過となっていましたが、債務超過額が19億3,300万円まで膨らみました。2024年2月末までに債務超過が解消されない場合、上場廃止となります。

タカキューは2020年2月期から2022年2月期までで全店舗の45%に相当する136店舗の退店を実施。2023年2月期は34店舗を閉店しました。希望退職者の募集も行い、人員整理にも努めてコストの大幅な圧縮を進めています。

2024年2月期は4,000万円の純利益を見込んでいるものの、この数字を達成しただけでは債務超過は解消されません。タカキューは大規模な増資などによる資金調達が急務です。

この記事では以下の情報が得られます。

・タカキューの業績
・イオンとの関係

コロナ禍に入る前から業績が悪化していた

タカキューは1947年にオープンした4坪の紳士衣料店が前身。1964年に「TAKA-Q」の名前で店舗展開を行うようになりました。現在、「semanticdesign」や「SUITIST」、「on the day」などのブランドを展開しています。

新型コロナウイルス感染拡大によって営業活動に制限が課された他、リモートワークが進んでスーツ需要が落ち込むなど、商環境の急激な変化で業績が急悪化しました。

しかし、コロナ前の2019年2月期にはすでに営業赤字に陥っていました。

※決算短信より筆者作成

2019年2月期上半期は2店舗を閉店しましたが、新規で4店舗を出店しています。しかし、結果は減収。このころから店舗の収益力低下が鮮明になり始めます。タカキューは不採算店の退店に着手し始め、2019年2月期は通期で7店舗を新規出店し、16店舗を退店。新規出店よりも、閉店スピードを高めました。

更にこの期に固定資産の減損損失6億2,900万円を計上しました。2019年2月期は期首に2億円の営業利益、1億円の純利益を予想していたものの、ふたを開けると16億2,300万円の営業損失、20億1,300万円の純損失という散々な結果に終わりました。

そのような状況下でコロナに襲われます。

タカキューは2019年2月末時点で302店舗ありましたが、2023年2月末に130店舗まで縮小しています。

タカキューの上場維持には意味があるのか?

債務超過解消のカギとなるのが、イオン<8267>。タカキューは1992年8月に当時のジャスコと資本業務提携契約を締結し、資本を受け入れました。イオンは現在もタカキューの株式33%超を保有する筆頭株主で、持分法適用関連会社となっています。

ただし、タカキューが確固とした収益改善計画を立てて黒字化の道を示さない限り、イオンが救いの手を差し伸べることはないでしょう。タカキューが属するイオンのサービス・専門店事業は営業利益率が1.3%ほどと収益性が低いためです。

セブン&アイ・ホールディングス<3382>がアクティビストと激しく対立するなど、流通業界も株主からの圧力にさらされるようになりました。イオンもいつ不採算事業の切り離しを提言されてもおかしくはありません。

タカキューが資本増強を行わない限りは上場廃止となるため、今期中に何らかの動きがあるのは間違いないでしょう。ただし、数字だけを見ると上場を維持するメリットは低いと言わざるを得ません。タカキューは2023年2月末の時点で、現金及び預金と売掛金だけで20億円を超える資産を持っていますが、時価総額は18億円ほど。市場の評価は高くありません。

小売店の場合、ブランド力の強化や従業員のモチベーションアップを目的として新規上場や上場維持に努めることがあります。しかし、経営不振に悩まされて店舗を大量に閉店し、希望退職者を募ったタカキューの従業員が、高いモチベーションを維持するのは難しいでしょう。「TAKA-Q」のブランドもかつては認知度が高かったものの、今は大手紳士服チェーンの影に隠れています。

むしろこのタイミングで一度上場廃止にし、再起をかけるためにも再上場を目指す方が得策のようにも見えます。

タカキューに回復の兆しがないわけではありません。スーツの在庫を抱えないオーダースーツの需要獲得を強化し、2023年2月期のオーダースーツの売上高は、コロナ禍を迎える前の2020年2月期と比較して15%増加しています。オーダースーツの売上比率は、2020年2月期の23.1%から2023年2月期は31.2%となりました。オーダースーツへの転換を進めた効果もあり、既製品のスーツの在庫は2020年2月期と比較して半減しています。

また、Eコマースの売上高は14億5,500万円で、前年同期比7.2%増加しています。店舗や在庫を持たない低リスク経営を進めています。

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