日本自動車市場がインドに抜かれて世界4位に転落した意外な理由

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成長著しいインド市場向けに新車投入が相次ぐ(Photo By Reuters、写真はGM「Beat Activ 」)

2022年の自動車販売台数で日本が中国、米国に次ぐ3位から4位に転落した。日本を追い落としたのはインド。日本の人口減による市場の縮小とインドの人口増による拡大が最大の原因だが、それだけではない。日本自動車市場が転落した原因は、意外にも…。

インドが日本を抜いて世界3位の自動車大国に

インド自動車工業会(SIAM)によると2022年の同国新車販売が425万台を超えるのが確実となり、420万台だった日本を追い抜いて世界3位に。これから発表する同年10~12月の商用車やタタ自動車などの販売実績が上乗せされるため、日本との差はさらに開きそうだ。

インド自動車市場は2017年に401万台と、ドイツを抜いて世界4位にランクアップ。5年後の2022年に3位の日本に追いついた。ただ、インド市場は不安定で、2020年はコロナ禍に伴うロックダウン(都市封鎖)で235万台にまで激減。2021年はロックダウンの緩和で持ち直したが、車載半導体不足に伴う生産不振で308万台に留まった。

今回、日本がインドに追い抜かれた背景には、半導体不足などによる生産不調もある。人気車では納車まで1年待ちも珍しくない。生産が需要に追いついていれば、セールスチャンスを逃すことなく販売台数が上積みされた可能性も大きい。しかし、半導体不足は日本もインドも同様ではないのか?

半導体の使用個数でインドに先行許した日本

電子情報技術産業協会(JEITA)によると、乗用車1台に搭載されている半導体は一般車で約30個、高級車では80個という。クルーズ制御や車線キープ、側方監視といった先端機能が盛りだくさんの日本車は、半導体の使用数が多いため半導体不足の影響が長引いている。

一方、インド国内で販売される自動車には、こうした付加機能が普及していないため、半導体使用量が少ない。そのため半導体不足の影響が小さく、生産量の回復が早かった結果、自国市場の潜在需要を取り込んで新車販売が伸びたようだ。

半導体不足が解消すれば日本での新車販売も潜在需要を取り込んで急増するのは確実で、インドを再び追い抜いて3位に再浮上する可能性もある。だが、インドは2023年中にも中国をしのぐ世界最大の人口を擁(よう)する上に、国民の所得水準も上昇している。人口減と所得水準の伸び悩みで縮小する日本市場とは対照的だ。中・長期的にはインド市場は、世界3位が「定位置」になるのは避けられないだろう。

ただ、インド市場は先行する中国や米国に比べると電気自動車(EV)生産台数が極めて少ない上に、2021年のインド国内シェアで首位がスズキ自動車<7269>系の「マルチ・スズキ」の63.6%、2位が韓国の現代自動車の15.8%と、外国車メーカーの寡占状態にある。EV化への対応と、国内シェア9.8%のタタ自動車をはじめとする国産車メーカーの底上げが課題となる。

文:M&A Online編集部

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