【キャリア】試用期間中にM&A。その時どうする?

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※画像はイメージです

誌上カウンセリングPart2

Bさん 女性 20代後半 商業施設運営会社 企画

相談内容「試用期間中に会社が買収されてしまった!!」

 Bさんは、大手グループ企業の商業施設運営子会社に3カ月前に転職。テナント企画などの管理運営を担当している。試用期間が終わったばかりのある日、突然メールで「本社集合」の連絡を受ける。本社の会議室に行ってみると、全社員が集まり「会社が買収されました」と事後報告が。部長クラスも知らされなかった突然の発表にBさんは驚き、これからどうなるのか不安で、どうしてよいかわからない。

キャリア・コンサルタント(以下、CC):「会社が買収されると聞いて、どう思いましたか?」

Bさん:「とても信じられません。試用期間中にまさか会社が買収されるとは思いませんでした。転職を決めた理由のひとつに、大手グループだから安心というイメージがありましたから…。これからどうなってしまうのか…」

CC:「突然のことで不安ですよね…。Bさんのおっしゃる不安とは、どのようなものですか?」

Bさん:「そうですね…、安心して長く勤められるかどうかという点でしょうか。前職の在籍期間が短く、今度こそ長く勤めたいという気持ちが強かったので」

CC:「長く勤めることが安心につながるのですね。入社当時は長く勤めることでどうなりたかったのでしょうか?」

Bさん:「前職では業界の事情はつかめたものの、小さい会社でしたからどんな仕事もするなんでも屋だったんです。だから大手に転職し、安心して長く働ける環境下で着実にスキルを身に付けたかったのですが…。こんなことになってショックです。社長は代々親会社からの出向者が就任する決まりなのですが、買収の報告をした後、「では私はこれで」とあっさり退任され、親会社に戻られました。残された社員の多くが親会社から見捨てられたと感じているようで、社内の雰囲気も騒然としており、みな悪い方にばかり考えています」

CC:「入社時の期待と違ってショックですね。“悪い方”というのは?」

Bさん:「無名の企業に買収されたので、なんとなく不安なんです。大手グループから外れ、財形など福利厚生も解約となりましたし…」

CC:「大手グループという安心感がなくなったのですね。」

Bさん:「うちの会社は大手グループの傘下ということもあり、温室育ちで帰属意識の強い人たちが集まっているように感じます。リストラはしない、雇用条件も維持される、という話ですが、中間管理職はいずれ役職を下ろされるのでは?という思いからか、戦々恐々としているようです」

CC:「なるほど。Bさんのお仕事が変わるなどの心配はあるのでしょうか?」

Bさん:「いえ、新社長の話では、買収後も雇用条件や仕事内容は変わらないとのことでしたので大丈夫だと思います。ただ、親会社のネームブランドが今後は使えなくなるので、営業上不利になると思います。取引先の大口顧客が親会社だったということもあり、営業ノルマも課せられていませんでしたが、これからは新規開拓も必要になってくるのではないかと…」

CC:「今後は新規開拓も必要と予想されるけれど、Bさんの雇用条件や仕事内容は変わらないのですね」

Bさん:「そうですね。お給料も同じですし、買収から3週間が経ちますが、仕事内容は変わっていませんね。そういえば新社長が、新規出店のリサーチのノウハウを教えて欲しいと言っていました。それが買収理由だったと思います。そうですね…。そうなると買収されてもスキルを磨く機会は十分ありそうですね」

CC:「今お話を伺っていて、買収というイメージが頭の中で変化したように感じましたが、いかがですか?」

Bさん:「はい、買収されて不安定になると思い込んでいました。せっかく転職したのに!と焦っていたのだと思います。でも、今の部署には長年この分野に携わってきたベテランの先輩が複数いて、毎日が刺激的です。買収という形にはなりましたが、むしろ親会社のしがらみに縛られず、いろんなことが出来そうです。早くスキルを身に付けて、戦力になれるよう頑張ってみたいと思います」

キャリア・コンサルタントのワンポイントアドバイス

 カウンセリングを進める中で、Bさんは「買収されることが悪いことだ」という否定的な捉え方をしていたようでした。マスコミが報道する買収劇では、負の側面がクローズアップされがちですから、Bさんのようなイメージを持たれる方は多いと思います。ところがM&Aは規模の大小を問わず国内においても日常茶飯事に行われており、買収されてうまくいくケースはたくさんあります。

 考えてみてください。企業はなぜM&Aを行うのでしょうか?買収する目的は、自社のさらなる成長のため、あるいは救済型M&Aでは会社を立て直す(良くする)自信があるから買収をするのです。こうした背景を理解していれば、合併や買収など予期せぬ転機が訪れてもいたずらに騒がず、冷静に現状を整理することが出来ますね。

 前回は、M&Aのような突然の転機を乗り越えるには、現在置かれている環境の中で「自分はどうしたいのか?」を明確にするためには、「自分自身を客観視する機会を設けることが大事である」とお伝えしました。

 そこで今回は、客観視するために具体的にどうすればよいかをお話したいと思います。不安や焦りが生じる環境では、感情に支配され、自分自身をうまくコントロールできない状態にあります。こうした感情を切り離し、冷静になるためには「自分をとりまく状況」をチェックするとよいでしょう。

チェックポイント

□(この転機を)どう捉えているか。肯定的か? 否定的なのか?
□転機のどの時点にいるか。起きたばかりか? 数か月経過しているのか?
□どんな状況や変化があるか?(あったのか?)職場環境、役割、人間関係、仕事内容など
□その状況や変化に対してどの程度コントロールできそうか?
□自分が目指したい目標は何か?

 上記の項目を書き出したり、誰かに話をしたりすることで、自分自身を冷静に見ることができます。そうすることで、目指したい方向性が明確になり、決断しやすくなります。

 Bさんは状況を整理することで、「買収=不安定な環境」というのは単なる思い込みであることに気づきました。雇用条件や仕事内容は変わらないこと、実務に通じる先輩社員が複数いて学べる環境にあること、前職が中途半端なスキルしか身に付かず、一人前になるため思い切って転職したことを思い出しました。

 Bさんは前向きな気持ちでベテラン社員の下、業務に専念することにしました。職場の騒動もひと段落し、現在は順調にキャリアを積み上げています。

※人物の特定がされないよう、一部内容を加工しております。

聞き手・話:キャリア・コンサルタント 砂川未夏/編集:M&A Online編集部

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