浴衣の季節、呉服業界の再編に注目してみた

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花火大会や縁日に足を運べば、夏を感じさせる浴衣美人に出会えるこの季節。和文化の象徴とも言える呉服関連企業の低迷が叫ばれて久しい中、近年はM&Aなどにより浮上のきっかけを探る動きが活発化している。昨年から今年にかけて起こった、代表的なトピックをご紹介しよう。

RIZAPグループで再生なるか、堀田丸正

まず取り上げたいのは、積極的な企業買収で事業の多角化を図るRIZAPグループ<2928>だ。1861年創業の老舗である堀田丸正<8105>を2017年6月に子会社化。多数のアパレル関連事業を持つRIZAPグループが、堀田丸正が長年培ってきた撚糸・洋装・和装事業のノウハウを活かしながらさらなる業容拡大を目指す。

堀田丸正公式ホームページ

ヤマノグループ傘下であった堀田丸正は、タレントを起用した着物やジュエリーブランドを持ち、和装のみならず意匠撚糸、洋装も含めた繊維専門商社として発展を続けてきた。しかし、近年は中国・東南アジアから安価の繊維素材が大量に輸入され、衣料品販売事業の伸び悩みなどの背景からたびたび営業赤字を計上、抜本的な事業の再構築が課題となっていた。

今回RIZAPグループ傘下となったことにより、同社の製造部門を中国現地法人で担うことによる収益改善、同社の企画・マーケティング力を生かした商品開発が出来るようになることが見込まれており、大幅な経営の改善が期待されている。

また今案件と同月には、全国に62か所の教室を展開するハクビ京都きもの学院の全株式が、ネクシィーズグループ<4346>から呉服小売り大手のまるやまへ譲渡された。業界再編の動きを象徴的に表す2つのトピックと言えるだろう。

後味の悪さが残った、さが美のTOB

2016年10月に株式市場を賑わせたさが美<8201>TOBも記憶に新しいところ。ユニー・ファミリーマートHD<8028>傘下にあった同社を巡る買収合戦は、いわゆる再生ファンドのひとつであるアスパラントグループの買い付け成立をもって決着したが、そのスッキリしない結末には今も疑問が残る。

さが美公式ホームページ


事の発端は2016年8月、ファミリーマートとの経営統合を控えていた旧ユニーHDは事業整理の一環の中で、さが美をアスパラントグループに売却すると発表。アスパラントの条件は総額約30億円、発表当日の株価80円に対して56円という安値でのTOBであった。

アスパラントは同月よりTOBを開始したが、その約1か月後、ニューホライズンが対抗買収案を発表。最終的にアスパラントの案に比べ金額的に大きく上回る、1株当たり90円、総額約43億円の買収案が提示されたことにより、事態は次なる展開を迎えるかと思われた。

しかしながら、ユニー・ファミリーマートとさが美はともに「信頼関係が築けていない」という理由をもってニューホライズンの買収案に不賛同を示し、ニューホライズンも友好的なTOBしか行わないとの理由から正式なTOBを申し立てず、結果的に当初の安値TOBが成立することとなったのだ。

なぜ金額的に好条件だったニューホライズン案を蹴り、当初の案を押し通したのか。依然として十分な説明がなされないまま、現在に至っている。企業にとって、株主にとってどちらの買収案が魅力的であったのか。これからのM&Aを考えるうえで押さえておきたい事例だろう。

呉服業界に迫る変革の時

これまで取り上げた企業以外にも、2017年7月、民事再生法を申請していた装いの道が、数多くの企業再生に実績のある佐々木べジ氏とスポンサー契約を締結。再生への道を歩み始めている。
旧来から続く伝統を守りながら、呉服業界は今日まで成長を続けてきた。
果たして、この再編を機に変革の時を迎えることができるのだろうか。
2020年を前に改めて和文化が注目される機運も高まる中、本稿で取り上げた企業が成長することを願いたい。

文:M&A Online編集部