アーム売却が「ご破算」になってもソフトバンクは痛手を負わない

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孫社長兼会長はアーム売却が流れても余裕綽々(しゃくしゃく)か?(Photo By Reuters)

米半導体大手エヌビディアが英半導体設計大手アームの買収計画を取り下げるとのニュースが報じられた。ブルームバーグによると、独占を懸念する欧米の規制当局が難色を示しているためという。報道の通りだとすると、ソフトバンクグループ<9984>は総額400億ドル(4兆5500億円)もの超大型案件を失うことになる。

売却がダメならIPOがあるさ

しかし、ソフトバンクGにとって「朗報」ではないにせよ、経営上は「痛くも痒くもない」だろう。理由はすぐに「次の手」を打てるからだ。それはアームの新規株式公開(IPO)だ。ソフトバンクはエヌビディアへの売却前にアームのIPOを検討していたが、投資額に見合う売却益が見込めないとして断念していた。

だが、アップルがインテル製からアームアーキテクチャを採用した独自CPUへシフトして成功を収めるなど、アームの評価は上がっている。さらにエヌビディアとの合併がなくなったことから、他社からの買収申し入れが寄せられる可能性もあるだろう。

欧米の規制当局が今回の買収に「ノー」を突きつけたのも、近年は売上高がほぼ横ばいで利益率の低下などが懸念されているアームの「潜在能力」を高く評価した証拠だろう。それこそがIPOや巨額買収の「呼び水」となる要素なのだ。

巨額売却の機会を逸する可能性が高いと報じられた26日、日経平均は続落したものの、ソフトバンクGの株価は前日比87円(1.72%)高の5156円で引けた。投資家はソフトバンクグループがアームで「もう一花」咲かせる可能性を期待しているようだ。

文:M&A Online編集部