中小PMI指針、中小企業のリソース少なく配慮も必要

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中小企業庁は12月23日、「中小PMIガイドライン(仮称)策定小委員会」(座長・松中学名古屋大学大学院教授)の第3回会合を開いた。中小M&A実施後の経営統合(PMI)に関する新たな指針について、譲渡側と譲受側の事業が一体となってシナジー(相乗効果)の発揮を目指す「結合・発展型PMI」の実施体制などを論議した。

前回(第2回)会合の内容はこちら
中小PMI指針で「維持型」の取り組み重視へ

「人事・労務」「会計・財務」「法務」のDDを実施

「結合・発展型PMI」では、M&Aの目的に関わらず共通して実施すべきと考えられる「人事・労務」「会計・財務」「法務」の統合について議論。いずれも大企業のPMIなどを参考に「事前検討」「方針策定」「計画策定」「結合実行」の段階に分けた取り組みを整理した。

具体的には、統合前に各業務領域の現状を把握するデューデリジェンス(DD)を実施し、対応すべき課題やリスクを確認する。必要に応じて弁護士や公認会計士、税理士など外部専門家との協議も交え、優先順位や業務実態に沿った問題解決に努める。

リソースが少ない中での対応を考慮

一方、中小企業庁は「中小企業の多くはM&Aの経験が乏しく、PMIの重要性すら十分に認識されていない状況」と指摘。ガイドラインにおける具体的な課題や取り組み例の記載について「一定程度の網羅性は意識しつつも、その全てに取り組むことを期待するのは現実的ではない」とした。中小企業の人材や金銭などのリソースには制約があることなども考慮し、ガイドラインでどこまで踏み込むかが焦点となる。

このほか、PMIの推進体制も論議し、中規模以上のM&Aを実施したことのある中小企業に対して中小企業庁が実施しているヒアリングの結果を共有した。これによると、PMIの実務的作業に従事した役職員の平均人数は譲受側が4.9人(うち専任1.8人)、譲渡側は1.4人(同0.7人)に過ぎない。このため、外部専門家のサポートや譲受側と譲渡側が協力してPMIに取り組むチーム、会議体の設置が望まれる。

来年2月の次回会合で記載方針を決定

既存の「事業承継ガイドライン改訂検討会」の下で活動する小委員会の次回会合は、2022年2月1日を予定。中小M&Aの効果を最大化するPMIの在り方や進め方に関する個別論点の協議を終え、ガイドラインの記載方針を固める。2月中に最終化に向けたレビューを行い、3月上旬の検討会で最終確認する。

文:M&A Online編集部

関連リンク:
中小企業庁:中小PMIガイドライン(仮称)策定小員会(第3回)配布資料
M&A実施後の経営統合に関する指針策定に向けて第1回中小PMIガイドライン(仮称)策定小委員会を開催します