「経済安定」の名古屋でスタートアップ創出、CVC担当者が語る支援の意義

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第15回Conference of S venture Lab.参加者。安藤全史・名古屋テレビ・ベンチャーズ合同会社/名古屋テレビ放送 成長投資戦略室 成長投資戦略部長(中央)、藤田豪・MTG Ventures 代表取締役(中央右) 、柴山政明・愛知県経済産業局 経済産業推進監(中央左)

    ストライク<6196>は2023年11月8日、スタートアップと事業会社の提携を促進するイベント「第15回Conference of S venture Lab.」を、名古屋市の「WeWork グローバルゲート名古屋」で開いた。東海地方では初開催。「伝統と革新が交わる名古屋のCVCが語る」と題し、名古屋テレビ放送(メーテレ)、MTG Ventures 、愛知県のCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)担当者が比較的経済が安定しているとされる名古屋でスタートアップ支援を行う意義を語った。

    登壇したのは、安藤全史・名古屋テレビ・ベンチャーズ合同会社/名古屋テレビ放送 成長投資戦略室 成長投資戦略部長、藤田豪・MTG Ventures 代表取締役、柴山政明・愛知県経済産業局 経済産業推進監の3人。地域経済を支える自動車産業が「100年に一度」の大変革を迎える中、スタートアップを育成する意義や人材育成の問題について、意見交換した。

    「安定」の名古屋でスタートアップに挑む

    ―自己紹介と現在の仕事について

    安藤 26年前に名古屋テレビに入社して、CMの営業とイベントを10年位ずつ担当してきた。3年前に新設された成長投資戦略室で、新規事業と投資によって新しい収益を生み出すことを、両方行っている。(兼務する)名古屋テレビ・ベンチャーズは2017年4月に立ち上げたが、全体の投資枠20億で、現在30社に投資している。愛知県は5社くらい、投資対象のほとんどは東京になる。

    安藤全史・名古屋テレビ・ベンチャーズ合同会社/名古屋テレビ放送株式会社 成長投資戦略室 成長投資戦略部長
    安藤全史・名古屋テレビ・ベンチャーズ合同会社/名古屋テレビ放送株式会社 成長投資戦略室 成長投資戦略部長

    藤田 ベンチャーキャピタル(VC)を26年、名古屋では20年仕事をしている。MTG VenturesはCVCでやっていて、2018年に会社を作り、50億円の約束金額で37社に投資した。地域ファンドも16億円で、14社に投資している。

    柴山 「STATION Ai」(ステーションエーアイ、2024年10月開設予定のスタートアップの創出・育成、オープンイノベーションの支援拠点)プロジェクトの立ち上げから、スタートアップの支援からエコシステムの形成に向けた施策に取り組んでいる。VCでは、STATION Aiのメンバー向けのファンドをソフトバンクと作っている。

    ―「STATION Ai」構想きっかけに、名古屋のスタートアップ支援が変わった。構想が生まれた背景は?

    柴山 愛知県は自動車産業が主力だが、100年に1度の大変革期を迎えている。早めの地域構造転換が必要。スタートアップのエコシステムを作ることが、新しい地域構造を作る。他がやっていないので「うちが最初にやりましょう」ということになった。スタートアップのエコシステムのためには、拠点、大きなコミュニティーが必要と考えている。

    名古屋のスタートアップの課題は「人」

    ―人づくりについて

    藤田 起業家が増えるようになったのに、ベンチャーキャピタリストは増えていない。みな経験者を採用するから、(人が育たず)パイが足りなくなる。スタートアップにお金は出せるが、投資した後にどう伸ばせるか、「その先」ができない。

    安藤 成長投資戦略室は、前身の組織が2人で始まり現在8人ほど。私はプロパーだが、足りないピースを埋めるため、そのたびに外部から採用している。

    柴山 「STATION Ai」は、行政だけでは絶対にできないので、産学官のプレイヤーを巻き込んで、一緒に走っていた。スタートアップのエコシステムはどんどん生まれているものの、生まれた後に出口戦略までアドバイス、支援する人材が育っていない。メンターというか、我々は「STATION Ai」入居者にはリーンスタートアップを教えているが、そういうことができる人が育っていない。

    ―名古屋、愛知のスタートアップエコシステムの実情について

    藤田 まだまだ五合目。足りないのはマインドセット。愛知県は(製造業などで)潤っている県なので、今すぐは困らない。ご家庭のご両親も学校の先生も、危機感は特にない。自分の子供が「スタートアップやる」といわれて「よしやれ!」というマインドセットになっていない。それでもスタートアップが育ってきている。自動車産業に飛行機産業にプラスして、起業する、という選択肢を増やしていかないといけない。

    柴山政明・愛知県 経済産業局 経済産業推進監
    柴山政明・愛知県 経済産業局 経済産業推進監

    安藤 マインドセットという面では、テレビ局も前から「このままでは…」という話があったのが、いよいよ(危機感が)足もとまで来ている。私たちの部署では新しい収益を生み出す仕事をしており、新規事業を積み上げてはいるが、(本業が)下がっていくスピードに追い付いていない。短期と、長期の収益を得る両方の観点があるが、テレビ局は、今そういうところに来ている。

    柴山 私は5割の到達と考えている。スタートアップのエコシステムに、まだやれていないことがある。我々は市場そのものを開発して、そこにスタートアップが参加できるというものを、出口戦略に置き始めている。愛知県で革新創造計画を策定しているが、社会課題解決を、イノベーションで解決する。ブルーオーシャンの新しい市場を作り、再配分構造に頼らない社会課題解決に仕組みが作りたい。認知症対策、MaaS、農業など新しいものを企画していき、そこで生まれたものをスタートアップが組み込んで、活躍する。それが出口戦略となる。

    文:M&A Online

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