ロイヤルホストは今期280億円の赤字、リッチモンドが重荷に

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2004年ホテル事業に参入

ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」を運営するロイヤルホールディングス<8179>が、今期280億円の純損失(前期は19億2,300万円の黒字)を計上する見込みとなりました。2020年12月期第3四半期の売上高は前期比42.0%減の611億5,100万円。決算期が同じすかいらーくホールディングス<3197>の第3四半期売上高は25.1%減の2,135億6,300万円となっており、売上の減少幅はロイヤルホールディングスが大きく上回っています。純損失額もロイヤルの186億2,900万円に対して、すかいらーくは146億2,400万円。ロイヤルの損失額が大きくなりました。

その背景には、ロイヤルがレストラン事業だけでなく、ホテル運営や空港ターミナル、機内食などの多角化を進めていたことがあります。特に売上が好調だったホテル事業が大打撃を受けています。新型コロナウイルス第3波の危機が訪れ、その影響が長期化することは必至。ロイヤルは退店と組織改革、希望退職者募集などのリストラを急ピッチで進めています。

この記事では以下の情報が得られます。

・ロイヤルホールディングスの事業別業績
・主なM&A
・リストラの内容

ホテルとてんやが足をひっぱる構図に

ロイヤルホールディングスは、1951年福岡空港での機内食の提供と喫茶営業からスタートしました。1953年に中州に開業した「ロイヤル中州本店」でレストラン営業を本格化。1971年にロイヤルホスト1号店をオープンしています。2000年に入ってからはM&Aによる多角化に本腰を入れました。2004年にリッチモンドホテルのアールエヌティーホテルズを子会社化。2005年に百貨店を中心にレストラン事業を展開する伊勢丹ダイニング、2006年に天丼てんやを運営するテンコーポレーション、2008年に全日本空輸の完全子会社で機内食の製造・販売をする福岡ケータリングサービスを次々と子会社化しました。

更に2018年にスープ店を展開するチャウダーズを買収し、2019年に西洋フード・コンパスグループから、サービスエリアなどの食堂や売店などの運営事業も取得しています。

積極的なM&Aにより、ロイヤルホールディングスは大きく5つの事業を持つこととなります。外食事業、高速道路などの食堂を運営するコントラクト事業、機内食事業、ホテル事業、食品事業です。買収によって売上は右肩上がりとなっていましたが、2017年12月期を境に営業利益は減少に転じます。

ロイヤルホールディングス業績推移
ロイヤルホールディングス2019年12月期参考資料より

外食事業全体が不振に悩んでいましたが、落ち込みが鮮明になっていたのは天丼のてんやです。

■ロイヤルホールディングス外食事業、コロナ前売上(単位:百万円)

売上高 2018年12月期 2019年12月期
外食事業 61,780 62,622(1.3%増)
ロイヤルホスト
38,019 38,918(2.3%増)
てんや 13,213 12,725(3.7%減)

■ロイヤルホールディングス・コロナ前の経常利益(単位:百万円)

セグメント 2018年12月期 2019年12月期
外食事業 2,778 2,379(14.4%減)
ロイヤルホスト 2,180 2,158(1.1%減)
てんや 370 △31


てんやは2019年12月期に赤字へと転落しています。そしてリッチモンドホテルも2019年12月期から利益が減少に転じました。

■ロイヤルホールディングス・コロナ前の業績ーホテル事業(単位:百万円)


2018年12月期 2019年12月期
売上高 28,682 30,286(5.5%増)
経常利益 4,291 3,622(15.6%減)

※ロイヤルホールディングス2019年12月期参考資料より筆者作成

リッチモンドホテルは2019年3月に門前仲町、天神、5月に京都など、新たなホテルを次々とオープン。特に京都は関西の旗艦店として位置づけられ、期待の高い物件でした。この年は先行投資としての開業費用が嵩んでいたのです。2020年に飛躍する準備をしていたともいえます。ロイヤルホールディングスは、ホテル事業への依存度を高めていました。それが新型コロナウイルスで打撃を受けた大きな要因です。

■ロイヤルホールディングスの事業別売上占有率(2019年12月期)

セグメント 売上高(百万円) 占有率
外食事業 62,622 44.5%
ホテル事業 30,286 21.5%
機内食事業 9,537 6.8%
コントラクト事業 34,664 24.7%
食品事業 11,051 7.9%

ホテルの月次売上は昨対12.7%まで減少

新型コロナウイルスの感染拡大によって、ビジネス環境は様変わりします。リッチモンドホテルの2020年5月の売上は昨対12.7%となりました。GoToトラベルキャンペーンで10月は55.6%まで回復したものの、第3波危機で見通しは暗くなっています。

機内食への影響も深刻。5月、6月は昨対で6.0%という厳しい数字に。10月になっても11.7%までしか回復していません。コントラクト事業の空港ターミナルも10月は36.4%と戻りが遅くなっています。

皮肉なことに、日常食業態のてんやは最も苦しい時期だった4月でも58.1%。10月は92.1%まで回復し、業績の下支えに一役買いました。

ロイヤルホールディングス月次売上
ロイヤルホールディングス2020年12月期第3四半期決算参考資料

ロイヤルホールディングス第3四半期の売上は前期比42%減となり、170億円近い経常赤字を計上することとなりました。

■ロイヤルホールディングスの第3四半期業績(単位:百万円)

2019年12月期第3四半期 2020年12月期第3四半期
売上高 105,433 61,151(42.0%減)
経常利益 3,563 △16,920

■ロイヤルホールディングスの事業別売上高(単位:百万円)


2019年12月期第3四半期 2020年12月期第3四半期
外食事業 47,296 33,905(28.3%減)
ホテル事業 22,488 9,599(57.3%減)
機内食事業 7,114 2,001(71.9%減)
コントラクト事業 26,376 13,795(47.7%減)
食品事業 7,820 5,629(28.0%減)

コロナの影響を受けたとはいえ、事業別にみると外食へのインパクトはまだ小さくなっています。ホテル、機内食は壊滅的。コントラクト事業も空港の閉鎖によって大きな影響を受けました。利益をみると、ホテル事業の苦しい実態がより鮮明に浮かび上がってきます。経常損失額は事業全体と比較して突出して高い59億500万円となり、前年同期と比較した減少額は84億2,900万円となっています。

■ロイヤルホールディングスの事業別経常利益(単位:百万円)


2019年12月期第3四半期 2020年12月期第3四半期
外食事業 1,988 △3,470
ホテル事業 2,524 △5,905
機内食事業 757 △1,738
コントラクト事業 1,161 △2,344
食品事業 132 △651

※2020年12月期第3四半期決算参考資料より筆者作成

ロイヤルホールディングスは矢継ぎ早のリストラ策を繰り出しています。10月末までで40店舗を閉鎖し、更に20店舗の追加退店を検討しています。50歳以上、64歳以下の社員に対する早期希望退職者の募集も開始。人数は200人を見込んでいます。それに合わせて組織もスリム化を進めています。外食事業3社を1社に統合し、コントラクト事業2社も1社に統合しました。下期の賞与の減額を決定するなど、コスト削減策も進めています。

2020年9月末時点の純資産額は305億7,200万円。前年同期と比べて41.3%も減少しています。12月末までであと100億円の純損失を計上する見込みなので、純資産額は200億円程度にまで縮小することとなります。来期は自己資本に厚みをつけるための、増資や事業売却による資金調達が視野に入ってくると考えられます。

幸いなことに、ロイヤルホールディングスは十分な増資余地のある会社です。2019年末時点での発行可能株式総数は1億2,000万株。株価は1,900円前後でPBR(株価純資産倍率)は2.3倍です。サイゼリヤ<7581>のPBRは1.1倍。ブロンコビリー<3091>が2.1倍。すかいらーくが2.7倍です。競合のファミリーレストランと比較しても、株価は遜色のない水準にあります。

苦境に立たされたロイヤルホールディングス。今後の動向に注目が集まっています。

文:麦とホップ@ビールを飲む理由