コロナ禍で一段と冷え込み 外食・フードサービス業界の2022年のM&A

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写真はイメージです

3年目を迎えたコロナ禍の中、2022年の外食・フードサービス業界のM&Aは一段と冷え込んだ。客足は戻りつつあったものの、コロナ前の状態には至っておらず、多くの企業が身動きの取れない状況に陥ったよう。

およそ2年ぶりの入国規制の緩和や、海外個人旅行客の受入再開、さらにはワクチンや治療薬の普及など明るい材料はあるものの、助成金の打ち切りや助成率の低下などが見込まれており、2023年の急回復は難しい状況にある。外食・フードサービス業界は、もうしばらくコロナとの闘いが続きそうだ。

業界再編に向けた動きも

2022年の外食・フードサービス業界のM&A件数(2022年12月23日時点)は19件で、2021年よりは6件増えているものの、コロナ前の2019年(31件)に比べると60%ほどにとどまった。

一方、金額は617億円ほどで、コロナ禍にあった2021年(50億円)、2020年(170億円)を大きく上回り、コロナ前の2019年(419億円)さえ、200億円ほど超える伸びとなった。

ただ、これは持ち帰り弁当や定食チェーンを手がけるプレナスのMBO(経営陣による買収)が598億円に達したためで、これを除くと、19億円ほどに留まる。この金額は2021年の半分以下の水準であり、2022年はM&Aが大きく冷え込んだといって問題なさそうだ。

そうしたコロナ禍の厳しい経営環境の中、業界再編に向けた動きと見られる案件が目だった。国内で外食・フードサービス事業を運営する企業が、国内で外食・フードサービスを運営する他の企業に、子会社や事業を売却するとの発表が5件あった。

さらに異業種(外食・フードサービス以外の業界)企業による、外食・フードサービス企業の買収案件も5件あった。2023年は、補助金や支援金の状況によっては、この傾向が一段と強まることもありそうだ。

金額トップは総額の97%を占めるプレナス

2022年の金額トップは、プレナス<9945>が株式の非公開化を目的にし実施したMBOで、この1件で全金額の97%ほどを占めた。

同社はコロナ後を見据え、中食、外食市場の競争激化に打ち勝ち、持続的な成長基盤を構築するには、中長期的な視点から迅速で柔軟な意思決定を行える体制が必要と判断し、非公開化に踏み切った。

1960年に事務機器などの販売で創業。1987年に持ち帰り弁当チェーン「ほっかほっか亭」を九州・山口で展開していたほっかほっか亭九州地域本部を吸収合併したのを機に外食事業に参入。2008年に「ほっともっと」ブランドに切り替え、全国展開している。

金額の2位は天満屋ストア<9846>が、名物駅弁「桃太郎の祭ずし」で知られる三好野本店(岡山市)を子会社化した案件で、取得金額は約7億円。

三好野本店が各種弁当、仕出し料理の製造やレストラン運営を通じて培ってきたブランド力、ノウハウを活用し、総菜など調理食品の充実などスーパーマーケット事業の基盤強化につなげるのが狙いだ。

三好野本店は1891年創業の老舗。コロナ禍が直撃し、業績が悪化。売上高が半減し、赤字が膨らんだことで債務超過に陥っていた。事業再生ファンドの支援を得て、経営の立て直しを進めていた。

金額の3位はレトロな居酒屋「昭和食堂」や、低価格業態の「新時代」などを運営する海帆<3133>が、居酒屋経営のSSS(東京都千代田区)を子会社化した案件で、取得金額は約6億円。

居酒屋で新ブランドを獲得し、事業拡大につなげるのが狙いだ。SSSは「すずの邸」「鳥魚門」「桂」などのブランドで居酒屋19店舗を展開している。

【外食・フードサービス業界の2022年の主なM&A】

 文:M&A Online編集部