楽天が携帯電話に参入 M&Aや仮想通貨をも巻き込んだ大競争時代に

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楽天市場の携帯電話画面

楽天<4755>がイー・アクセス以来、13年ぶりに携帯市場に参入することになった。現在、同社は大手から回線を借りて、格安スマートフォン会社を運営しているが、今後はNTTドコモ、au、ソフトバンクと並ぶ第4の携帯電話会社となる。

楽天が第4の携帯電話会社に

楽天の参入によって顧客獲得合戦の激化や、電子商取引などを取り込んだ新しいサービス競争の過熱、さらには仮想通貨などを取り入れた新たな事業の展開など、今後大きな変革が予想される。

こうした流れに乗ることのできない事業者は即刻、M&Aの対象となる。2019年は格安スマートフォン会社を含めた携帯電話会社の大競争時代へ幕開けとなりそうだ。

楽天が参入するのは第4世代携帯電話システム(4G)。2019年10月のサービス開始を目指し、6000億円を投じて基地局などを整備する。

格安スマートフォン並みの料金を計画しているとみられており、激しい顧客獲得競争が予想される。この過程で格安スマートフォン会社の中には業績悪化に陥り、買収や廃業などの事態に発展することも十分考えられる。

サービス競争が過熱 仮想通貨にも影響が

楽天はネット通販の大手で顧客数は9000万人に達するといわれる。この基盤を生かした携帯電話事業が強みとなりそうだ。例えば、ネット通販で貯めたポイントを携帯電話料金の支払いに使えるなどは、簡単に実施できるだろう。

現在、ポイントはゴルフのプレー費やホテルの宿泊代などにも使える。携帯電話料金の支払いで貯めたポイントをこうしたレジャーなどに使うことも可能だろう。ハンバーガーやガソリンなどの料金の支払いでもポイントを貯めることができ、携帯電話と絡めた生活のあらゆる面で囲い込みが可能になる。

さらに仮想通貨に関する事業の可能性も考えられる。今年になってLINE<3938>やヤフー<4689>、マネックスグループ<8698>が相次いで仮想通貨交換業への参入を表明しており、今後も大手企業の参入が見込まれている。

先行3社が打ち出す作戦は

仮想通貨は法定通貨を用いた決済よりも手数料が安いため、ネット通販事業者にとってはメリットがある。ヤフーはオークションやショッピングなどを展開しており、決済を仮想通貨で行うことでコストダウンが実現すれば、例えばショッピングを利用した顧客に対し、これまで以上のポイントを還元するなどのサービス向上が可能になる。

同様の効果は楽天でも考えれるため、楽天による仮想通貨交換業への参入には現実味がある。新規参入を表明しているLINEは新たな仮想通貨の発行を計画しており、より強力な囲い込み戦略を描いている。ヤフーや楽天についても同様の選択肢はある。

楽天の携帯事業参入に関しては、基地局の耐震性や、無線技術者の数、次世代規格である「5G」への対応など、いくつかの問題が指摘されている。こうしたハードの面の競争では後発である楽天は劣勢であることは間違いない。

一方で先行する携帯電話会社3社は携帯電話と電子商取引を融合させたサービスの取り込みに前向きだが、この分野に関しては楽天の方が優位であるといえる。先行3社がどんな手を打ってくるのか。ハード、ソフト両面でし烈な競争になりそうだ。

文:M&A Online編集部