トランプ大統領が米国企業の決算開示義務を四半期から半期に変更するよう米証券取引委員会(SEC)に検討を要請したことが先に伝えられた。お得意のツイッターで明らかにしたものだが、日本企業も事の成り行きに少なからず関心を寄せている。
日本では上場企業が四半期決算を義務づけられてすでに10年。「何を今さら言い出すのやら」といった声がある一方、「負担軽減につながる」との本音も漏れる。トランプ発言でにわかにスポットがあたる「四半期決算」とは。
四半期決算は企業が1年を4期に分けて3カ月ごとに開示する決算のこと。日本では2003年から証券取引所の自主ルールに基づいて行われていたが、2009年3月期以降、金融商品取引法により公表が義務づけられた。四半期末から45日以内に四半期報告書を提出することになっている。それ以前は、1年の半分にあたる「中間決算」と事業年度末の「本決算」の2本立てだった。
日本企業の多くは4月から翌年3月を事業年度としている。この場合、4~6月を第1四半期という。7~9月の第2四半期が出そろえば、第1四半期との累計で中間決算と呼ばれる。
「1年中、決算に追われている感じがする」。四半期決算が導入された初めの頃、企業の財務・経理幹部はこう漏らすことがしばしばだった。目先の業績や株価を気にしすぎるあまり、長期的視点からの経営を阻害するとの指摘も少なくなかった。しかし、すでに義務化から10年。四半期決算に異論を唱える向きはごく少数だ。
ついでながら業績予想の修正はどうか。直近の予想値に比べ、売上高が10%以上、経常利益や当期純利益だと30%以上の開きが見込まれる場合、適時開示することが求められている。
トランプ大統領は決算発表を年2回にすることを望んでいるという。ツイッターの中で、この件について米財界首脳から意見具申があったことを明らかにしている。報道によると、ツイッター投稿後、「とても真剣に検討している」と記者団に語ったという。
そもそも米国は四半期決算の“ご本尊”ともいうべき存在だ。SECの監督のもとで、四半期決算がスタートしたのは1970年にさかのぼる。SECは米政府の独立機関で強力な権限を持ち、米国を揺るがせたエンロン事件やワールドコム事件の不正会計を暴いたことでも知られる。
証券市場のルールづくりはSECのいわば専管事項。四半期決算をめぐるトランプ氏の「検討要請」が今後、見直し論議に発展することになるのか、それとも単なる口先介入で終わってしまうのか。世界経済への影響力も大きいだけに、その行方が注視される。取り扱い次第では投資家保護、情報開示の流れに逆行する、不正行為を呼び込むとの批判を招きかねない。
もっとも、欧州連合(EU)や英国は四半期決算を任意の扱いとする規制緩和を実施している。EUでは多くの中小企業にとって負担が著しい、投資家保護目的としては必要ない、長期的投資を妨げるなどとして2015年に四半期の開示義務を廃止した。英国でも企業の長期的なパフォーマンス向上の観点から義務づけの廃止に動いた。
日本では政府が2017年6月に公表された「未来投資戦略2017」の中で四半期開示について言及。国際的な状況や議論も踏まえ、義務的開示の是非を検証しつつ、 重複開示の解消や効率化のための課題や方策を検討との方向性が示された。今回のトランプ発言が日本での議論を加速する引き金になれば、それなりに意味が大きい。
文:M&A Online編集部