「いきなり!ステーキ」苦戦続く、黒字から大幅な赤字予想へと一転

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※いきなり!ステーキ | アピタテラス横浜綱島

「いきなり!ステーキ」を運営するペッパーフードサービス<3053>が、2023年8月14日に2023年12月期通期業績の下方修正を発表しました。

1億3000万円の営業利益との予想を、4億900万円の営業損失へと一転させました。3900万円の純利益も5億8000万円の純損失へと切り替えています。

ペッパーフードサービスは「いきなり!ステーキ」の徹底的な退店を行って、ステーキ事業単体では利益を出しています。しかし、売上高の回復が遅く、会社全体を黒字化するまでには至っていません。

不採算店を閉めることが黒字化への光明となっていましたが、再び暗中模索のステージへと舞い戻ったようにも見えます。この記事では以下の情報が得られます。

・ペッパーフードサービスの業績推移
・「いきなり!ステーキ」の店舗数の推移

店舗数は2019年の4割程度まで縮小

ペッパーフードサービスは5期連続の営業損失となる見通しです。2023年12月期の売上高は前期をわずか1.2%上回る数字。当初の予想では、通期の売上高を153億9200万円としており4.2%の増加を見込んでいました。コロナ禍から日常を取り戻したにも関わらず、店舗の稼ぐ力が戻っていません。

※決算短信より筆者作成

ペッパーフードサービスは新型コロナウイルス感染拡大の影響で債務超過に転落し、2020年にペッパーランチを投資ファンドのJ-STAR(東京都千代田区)に85億円で売却しました。その影響で売上高は大幅に縮小。さらに主力の「いきなり!ステーキ」の退店も進め、かつて700億円近くあった売上高は150億円を下回るようになりました。

同社はコロナ禍を迎える前の2019年12月期に営業損失を出しています。これは「いきなり!ステーキ」を過剰に出店したことによる、一部エリア内で顧客の取り合い(カニバリズム)が生じたため。ステーキ事業の好調で業績が急成長したペッパーフードサービスは、新規出店数を目標に掲げていました。それが裏目に出たのです。

2019年12月末は490店舗ありましたが、2023年6月末は195店舗まで縮小しています。

※月次情報より筆者作成

2022年8月12日に創業者・一瀬邦夫氏が代表取締役を退き、一瀬健作氏が就任しました。このタイミングで、ペッパーフードサービスは既存店舗のうち、収益性の回復が見込めない店舗の減損損失11億6500万円を計上しています。その影響により、2022年12月期に2億1600万円の純利益としていた従来予想を修正し、10億9000万円の純損失へと切り替えました。

一瀬邦夫氏は事業売却や第三者割当増資による資金調達に奔走し、迅速な不採算店の整理を実行します。それに加えて残る店舗の減損損失を行い、店舗の減価償却負担を減らして利益が出やすい状態へと導きました。バトンタッチはお膳立てされていたとも言えますが、店舗の稼ぐ力が戻りませんでした。今期は営業赤字となってしまったのです。

肉マイレージの”改悪”を修正するも顧客の戻りは遅く

当初の計画では、2023年12月期第2四半期の「いきなり!ステーキ」の売上高は72億2100万円でした。この期間の店舗数の平均値は200で、1店舗当たりの6カ月間の売上高は3600万円を見込んでいたことになります。実績は計画を6.1%下回る67億8400万円。1店舗当たりの6カ月の売上高は3400万円でした。

前年同期間の売上高は66億1400万円、1店舗当たりの売上高は3000万円でした。コロナ禍が去って稼ぐ力はやや戻っているものの、計画を上回ることができません。ペッパーフードサービスは2023年12月期第2四半期に1億3700万円の減損損失(そのうち「いきなり!ステーキ」が1億3500万円)を計上しています。

ペッパーフードサービスの2023年6月末時点の有形固定資産は、すべて合わせて8億8900万円ほどしかありません。減価償却費は半期で1億円程度。2019年12月期は減価償却費だけで12億円以上計上していました。店舗は減価しきったとも言える状態。償却負担を減らす余地はありません。

原材料高、エネルギー高も利益を圧迫しており、「いきなり!ステーキ」の売上高を何としてでも伸ばさなければなりません。

ペッパーフードサービスは2022年12月にMSワラントを発行し、50億円あまりを調達する計画を発表しました。そのうちの25億円は新規出店のための設備投資資金に回すとしています。支出予定期間は2023年1月から2027年12月。退店は一通り済み、出店によって収益力を回復させる計画です。しかし、既存店の売上高が戻らない状態で出店攻勢をかければ、かつての過剰出店の悪夢が蘇ることにもなりかねません。

「いきなり!ステーキ」の躍進を支えた「肉マイレージ」は、食べた累計グラム数でランクが変わる方式から、食事回数へと変更しました。これが大批判を巻き起こし、仕組みを一部戻しました。しかし、一度離れた顧客は簡単には戻りません。ペッパーフードサービスは顧客目線への回帰を訴えています。それを成果に結びつけるべきタイミングが訪れています。

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