年金納付延長で深刻な影響を受けるのは「高学歴サラリーマン」

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少子高齢化に対応するため、年金納付期間が5年間延長される

「年金納付は64歳まで」。厚生労働省が国民年金(基礎年金)の保険料納付期間を20歳以上60歳未満の40年間から、65歳未満まで5年間延長して45年間とする検討を始めた。2025年に法改正する方針だ。少子高齢化が進み、年金制度を維持するため納付期間を延長する。定年延長や再雇用で65歳まで働くのが「当たり前」となり、65歳未満までの年金納付には問題がなさそうだが、唯一の例外がある。それが高学歴サラリーマンだ。

納付期間5年延長で大学時代の未納リカバリーが難しく

国民年金は20歳になると納付義務が生じる。しかし、学生時代は未納で社会人になってから納付を始めた人も少なくない。ただ、国民年金の納付期間は最大40年間なので、大学を卒業した22歳から納付を始めれば62歳で完了する。厚生年金が適用される再雇用で65歳まで働けば、老齢基礎年金をほぼ満額受け取れるのだ*。

*厚生年金の加入期間のうち60歳以降は国民年金の加入期間ではないが、実際にはこの期間も加えて計算した年金額と老齢基礎年金の受給額の差額を経過的加算額として受け取ることができる。

だが、納付期間が45年間に延長された場合、大卒で学生時代に未納だったサラリーマンは67歳まで納付が必要だ。65歳で退職すると、その後の2年間は収入がなくても国民年金に任意加入して納付を続ける必要がある。これが大学院(修士課程)修了者となると69歳までの4年間と、退職後の納付期間がさらに伸びる。

70歳まで雇用が維持されても給与減額で負担は重くなる

任意加入がなくても年金は支払われるが、基礎年金分は未納期間に応じて減額される。国民年金には納付猶予や学生納付特例を受けた場合の追納制度はあるが、それでも最大で10年以内。例えば2023年3月末までに追納できるのは2012年4月以降の未納分に限られる。30代前半には、ほとんどが対象外だ。

2021年4月1日に施行された改正「高年齢者雇用安定法」では、「70歳までの定年引上げ」もしくは「70歳までの継続雇用制度」などの措置を講ずる努力義務が新設された。しかし、あくまで注意義務に過ぎない。

幸いにして70歳まで雇用が延長されても、ほとんどの企業が60歳以降の継続雇用で給与を減額している現状では、65歳以降にさらに給与引き下げが進む可能性がある。年金負担は決して小さくない。「たかが5年、されど5年」なのである。

文:M&A Online編集部

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