大阪カジノリゾート計画の全貌、1兆800億円の調達方法と収支計画

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未開発の地が広がる夢洲

2022年4月27日、大阪府が統合型リゾート施設誘致に向けた「区域整備計画」を国に申請し、受理されました。2023年春~夏ごろに工事を発注して、2029年秋~冬ごろに開業をするという内容。収容人数6,000人以上の会議室を核とし、カジノ、劇場、美術館、レストランを併設する巨大施設です。ホテルの総客室数は2,375~2,760室。客室数日本一の品川プリンスホテル3,679室には劣るものの、国内第2位の客室数を誇るホテルとなります。

大阪府は開業3年目のIR事業全体の売上高を5,200億円、純利益を750億円と試算しています。そのうち、カジノによる収益が8割。4,160億円がカジノの売上高となります。これは東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランド<4661>のコロナ前2020年3月期の売上高4,644億5,000万円に匹敵する規模。勝算はあるのでしょうか?

この記事では以下の情報が得られます。

・カジノリゾートの全貌
・初期投資の資金調達方法
・収支計画

MGMとオリックスが2,120億円ずつ出資

大阪府がカジノリゾートの誘致を計画しているのが夢洲。1988年に新都心を開発するテクノポート大阪計画の対象となった人工島で、バブル崩壊とオリンピック招致の失敗によって負の遺産と呼ばれています。現在、夢洲はコンテナの集積地と広大な空き地ばかりの未開発地。大阪府と大阪市はテクノポート大阪計画によって巨額の負債を抱えることとなりました。

カジノ誘致が成功すれば、夢洲の土地活用だけで年間およそ25億円収入を得ることができます。

■IR区域図

「大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域の整備に関する計画」より

誘致を計画する土地面積は49ヘクタール。土地を所有する大阪市はIR事業者への賃料として月額428円/㎡を徴収する計画を立てています。月2億1,000万円、年間25億円。賃貸借期間は土地の引き渡しから35年後まで。35年間で880億円の不動産収入が得られることになります。

ただし、夢洲の土地は土壌汚染や液状化対策が必須。大阪府は土地改良に必要な費用として788億円を負担するとしています。そのほか、大阪市は夢洲で開催される2025年の日本国際博覧会に向けたインフラ整備に合計272億2,500万円を投じる計画です。

カジノリゾートの中核を担う企業が日本MGMリゾーツ(東京都千代田区)とオリックス<8591>。初期投資額1兆800億円のうち、借入で5,500億円、出資で5,300億円を調達する計画です。出資割合はMGMが40%、オリックスが40%、少数株主が20%となります。

■資金調達の概要と内訳

※「大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域の整備に関する計画」より
※「大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域の整備に関する計画」より

MGMリゾーツはラスベガスに本社を置く統合型リゾート施設運営会社。マカオでカジノを運営するMGMチャイナの株式51%を保有しており、業界分析のディールラボによるとカジノのシェアは世界トップ。大阪府はMGMを出資者に選んだ理由として、潤沢な手元流動性(2021年9月末時点で64億ドル)を有するとともに、十分なキャッシュフローを創出できる事業計画を立てているとしています。

オリックスも同様に手元流動性があるだけでなく、関西3空港の運営、うめきたのまちづくり、大阪ドーム運営、ORIX HOTELS&RESORTSなどを全国で運営している実績があります。この2社は2021年9月に大阪府から運営事業予定者に選定されていました。

■イメージパース

※「大阪・夢洲地区特定複合観光施設設置運営事業(提案概要)」より

事業効果は年間来場者数が1,610万人、年間売上が5,200億円。2社の提案によると、納付金・入場料で大阪府と大阪市は年間1,100億円(納付金が約770億円、入場料が330億円)が得られるとしています。

2016年のUSJの年間来場者数は1,390万人でした。それを上回る人数を想定していることになります。東京ディズニーリゾートの客単価は14,000円程度ですが、カジノリゾートは単純計算で32,000円。カジノ効果によって、ディズニーリゾートをはるかに上回るお金を落とす計画を立てていることになります。

カジノはギャンブル依存症を助長するか?

この事業計画のポイントは来場者数を確保できるかどうか。1,610万人は他国のカジノリゾートと比較して決して多すぎるわけではありません。シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズの年間訪問客数が4,500万人。同じくシンガポールのリゾート・ワールド・セントーサは2,000万人が訪問しています(内閣官房内閣広報室「諸外国におけるIRについて」より)。

シンガポールはIRの導入によって外国人観光客が970万人から1,740万人へと1.8倍増加しました。マリーナ・ベイ・サンズに訪れるカジノ客のうち、外国人の比率は80%~85%。国内よりも海外観光客に期待ができます。

折しも、日本は日本銀行の金融緩和による空前の円安。日銀が緩和策を継続する限りは円安が続くとみられ、新型コロナウイルスの影響が薄れるに従って、インバウンド需要が急回復する可能性もあります。円安はカジノリゾートにとって追い風となります。2019年の訪日外国人旅行者数は3,188万人でした。カジノを訪れる外国人の割合が8割(1,288万人)だとすると、2019年の外国人旅行者の4割が夢洲リゾートを訪問すれば計画を達成する数字です。決して夢物語ではありません。

ただし、この計画を推進するのは大阪府や大阪市の住民の支持が不可欠。カジノリゾートの一番の問題点がギャンブル依存症です。久里浜医療センターの「ギャンブル関連問題の実態調査」によると、ギャンブル依存症が疑われる日本人の割合は全体で2.2%でした。これはアメリカの1.9%、香港の1.8%などと比較して高い数値を示しています。

日本のギャンブル依存が強いのは、パチンコ・パチスロによるものです。

■過去1年間で最もお金を使ったギャンブルの種類(単位:人)

※久里浜医療センター「ギャンブル関連問題の実態調査」より

パチンコ・パチスロは全国各地に店舗を構え、生活に根付いているために依存症を誘発している側面があります。リゾート型のカジノ施設がギャンブル依存症を今以上に助長するのかは不明です。

2025年に日本国際博覧会を開催する大阪府と大阪市は、夢洲のインフラの整備と開発を進めています。それを無駄にしないためにも、カジノリゾートの誘致を成功させなければなりません。国や自治体だけでなく、旅行、宿泊、外食業界にとって見逃すことができないカジノリゾート。今後の動向に注目が集まります。

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