オウケイウェイヴに疑惑発覚、CVCを使って資金流出を画策したか

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50億円もの取立不能に陥って混乱が続くQ&Aサイト「OKWAVE」の運営会社オウケイウェイヴ<3808>に、疑惑が持ち上がりました。2021年12月に組成したコーポレートベンチャーキャピタル「OK FUND L.P (オウケイファンド エル・ピー)」を使い、資金の流出を画策したのではないかというものです。

オウケイウェイヴの経営陣は50億円の取立不能の一件を、Raging Bull(渋谷区)に騙された被害者という立場をとっています。

しかし、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の一連の問題は、経営陣が積極的に関与しているものであり、経営責任が追及されることにもなりかねません。

この記事では以下の情報が得られます。

  • オウケイウェイヴがCVCを使った疑惑の内容
  • 2021年12月に買収したアップライツの不自然な買収額

元社長の松田元氏が流出させた株はどこへ?

オウケイウェイヴの元代表取締役社長・松田元氏は、ネットワークビジネスで有名なワールドレップサービス(東京都中央区)の代表取締役会長・許善政氏に、オウケイウェイヴ株を担保として資金の借り入れを行いました。

大量保有報告書によると、担保に差し入れた株式数は540,700。担保権は実行されており、許善政氏は一時4.32%を保有する筆頭株主となります。

※大量保有報告書より

関係者の証言によると、現在のオウケイウェイヴ代表取締役社長・福田道夫氏はこの事実に憤りを感じており、何としてでも流出した株式を買い戻そうとしていたと言います。

詳細をみる▶[変更報告] <3808> オウケイウェイヴ 2021年12月21日に松田 元が提出

松田氏はオウケイウェイヴが開発した仮想通貨Wowbitを、2018年5月にBit-Zに上場させました。しかし、瞬く間に無価値に近いところまで暴落。投資家からの反感を買いました。

福田氏はオウケイウェイヴの創設メンバーの一人。2006年6月の上場にも尽力しました。会社への思い入れは人一倍強く、外部から招聘された松田氏に会社が荒らされることを快く思っていませんでした。許善政氏が筆頭株主となり、会社がやがてネットワークビジネスに手を染めることにもなりかねないことに警戒していたのかもしれません。

福田氏が頼った人物がエムズ・コンサルティング(東京都港区)の代表取締役・佐久間将司氏。佐久間氏は仮想通貨スピンドルの創設メンバーでもあります。

■スピンドルのメンバー(一部)

スピンドルはタレントのGACKT(ガクト)氏が創設に関わっており、ガクトコインとして知られています。ガクトコインはGACKT氏とのつながりが深いミュージシャン仲間などから100億円を超える資金を集めたと言われています。しかし、2018年5月の上場後すぐに暴落。無価値同然となります。

スピンドルの発起人でドラグーンキャピタル(東京都千代田区)代表・宇田修一氏は金融商品取引法に違反したとされ、業務停止命令を関東財務局から受けています。佐久間将司氏はドラグーンキャピタルの監査役でした。

オウケイウェイヴの福田氏と、エムズ・コンサルティングの佐久間氏は同じ慶應義塾大学出身。大学時代から親しい関係を築いていました。

2019年にスピンドル被害者の会が設立され、創設メンバーは世間からバッシングを受けていました。それに構うこともなく、2020年から2021年にかけて佐久間将司氏、宇田修一氏がオウケイウェイヴに頻繁に出入りするようになったと言います。

総資産1億5,000万円の会社の株式52.6%の取得に10億円を投資

オウケイウェイヴは2021年12月にコーポレートベンチャーキャピタル「OK FUND L.P (オウケイファンド エル・ピー)」を立ち上げます。

出資総額は20億円。オウケイウェイヴが99.95%、エムズ・コンサルティングが0.05%を出資しています。コーポレートベンチャーキャピタルの代表は佐久間将司氏です。

「特定子会社の異動に関するお知らせ」より

オウケイウェイヴがソリューション事業の一部をPKSHA Technology<3993>に売却したのが2021年6月。譲渡価額は70億9,000万円。コーポレートベンチャーキャピタルの立ち上げ資金はこれが原資になっているものと考えられます。

コーポレートベンチャーキャピタルを立ち上げてわずか5日後の2021年12月15日、オウケイウェイヴは音楽などのエンターテインメント事業を行うアップライツ(東京都港区)の第三者割当増資を引き受けると発表します。

アップライツは佐久間氏が持ち込んだ案件で、十分なデューデリジェンスが行われた様子もなく、一週間ほどで話が進んだとの証言が関係者から得られています。その証言を裏付けるように、このM&Aは不自然な印象を拭えません。

オウケイウェイヴはアップライツの株式52.6%を999,999千円で取得しています。

■オウケイウェイヴが取得した株式数と取得価額

※「株式会社アップライツの第三者割当増資引受による株式取得」より

10億円で53%あまりの株式を取得していますが、アップライツにその価値があるのかは疑問です。この会社は子会社2社を合わせても純資産が2,000万円、総資産でも1億5,000万円ほどしかありません。営業利益はわずか2,000万円。しかも、オウケイウェイヴは価値算出根拠を一切示していません。

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■アップライツの財政状態

※「株式会社アップライツの第三者割当増資引受による株式取得」より

2022年6月期第2四半期の有価証券報告書によると、このM&Aでオウケイウェイヴは4億6,000万円ののれんを積みました。2022年6月期第3四半期において1,100万円ののれんの償却費を計上しています。2023年6月期は通期で4,000万円以上ののれんの償却費を出すことになります。

アップライツは通期の純利益が1,800万円程度であり、のれんの償却費すら埋められるようには見えません。これでは、将来的なのれんの減損損失は避けられないのではないでしょうか。

不可解な減資を行ったアップライツ

オウケイウェイヴの買収後、2022年5月25日にアップライツは資本金額を4億4,248万円減少し、資本金を1億円にする減資を行っています。

減資は累積した欠損金を整理したり、節税につながるなどのメリットはあります。しかし、2020年12月末時点での累積赤字額は190万円程度。累積赤字が膨らんでいる形跡はありません。

この減資が節税を狙ったものであることは間違いないにしろ、真の目的が有償減資だったとすれば問題です。

■アップライツの資本金の額の減少公告

※官報より

有償減資は株主への配当を目的として行うもの。減資を行った結果、剰余金が生じるために株主に配当を支払うことができます。オウケイウェイヴのアップライツ株の保有比率は52.6%。残りは代表の山田公平氏が保有していると考えられます。

佐久間氏と山田氏の関係が深いのは間違いなく、山田氏を介して流出した株式の買収資金を得ることも不可能ではないでしょう。

この減資も不可解な点が多いです。通常、減資は株主総会の特別決議が必要。当然、株主であるオウケイウェイヴがその意思決定に関わっています。しかし、公告で出されているアップライツの貸借対照表は2020年12月期のもの。本来は株主総会が行われた直前期である2021年12月期の貸借対照表を出さなければなりません。

2020年12月期の貸借対照表はオウケイウェイヴの増資前のものであり、減資によってどのような財務状況になるのかがわかりません。意図的に有償減資を匂わせる痕跡を消しているようにも見受けられます。

手続きが正しく行われていないのであれば、この減資は成立しない可能性もあります。

オウケイウェイヴはこの減資について一切開示をしていません。子会社の減資について開示しなければならない義務はなくても、成長期待の大きい子会社であれば、減資の目的について適切に情報開示をし、株主の理解を得るべきでしょう。減資は会社の信用力を失うことにもなりかねないからです。

オウケイウェイヴは、2022年8月25日に代表の福田氏などの解任を決める臨時株主総会を控えています。現経営陣は不可解な買収額など一連の疑問を払拭するため、説明責任を果たすべきではないでしょうか。

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