ウイズコロナでパイロットが足りない!航空会社はどう手を打つ?

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パイロット不足が航空会社にとって大きな問題に(写真はイメージ)

すでに「ウイズコロナ」に向けて動き出している航空業界。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックで「閑古鳥」が鳴いていた空港にも人の流れが戻ってきた。そこで新たな問題として浮上したのが、パイロット不足だ。

「パイロット確保」のために買収

2020年から2021年にかけてコロナ禍に伴う搭乗客の大幅減で大量解雇に踏み切った航空各社が、「ウイズコロナ」下の乗客急増に対応するためパイロット集めに躍起となっている。米大手コンサルティング会社のオリバー・ワイマンによると、北米では2022年にパイロットの需要が供給を上回っている状況という。

米ジェットブルー・エアウェイズは7月28日、その前日に米フロンティア・グループ・ホールディングスとの合併合意を撤回したばかりの米スピリットを38億ドル(約4980億円)で買収すると発表。航空業界を驚かせた。スピリット株1株当たり33.50ドル(約4390円)で買い取る。

フロンティアとスピリットは2022年2月に約29億ドル(約3800億円)の買収で合意したが、同4月にジェットブルーも名乗りをあげた。スピリット経営陣は独占禁止法上の懸念からフロンティアによる買収に乗り気だったが、株主の理解を得られなかった。

ジェットブルーが9億ドル(約1180億円)も上乗せしてまでスピリットが欲しかったのは、パイロットの確保だったとの見方が根強い。いわゆる「人を買うM&A」だ。パイロットの頭数を揃えるには、航空会社の買収が手っ取り早い。

人手不足で欠航が相次ぐ航空会社も

世界でも2023年に需要が供給を上回り、パイロット不足が問題になりそうだ。2025年には世界で3万4000人のパイロット不足に見舞われるとの予測もある。パイロット不足は航空路線の縮小や減便に直結し、深刻化すれば同業他社との競争に敗れることになりかねない。

豪ヴァージン・オーストラリア航空は7月26日までの3カ月間で、全スケジュールの5.9%に相当する2200便近くの運航を取りやめた。これは世界の航空業者で最悪の欠航率だ。同社に次いで欠航率が高いオランダKLMともども人手不足が原因という。

パイロットだけではなく、客室乗務員や地上スタッフなどの人材確保にも苦労しており、人手不足が「ウイズコロナ」で回復している航空需要の大きな足かせになっている。

日本でも過去最大となる新型コロナ感染爆発が起こっているにもかかわらず、国内航空11社のお盆期間(8月6日から16日までの11日間)における予約数は国際線が前年同期比4.63倍の27万5402人、国内線は同66.8%増の299万1387人と大きく伸びた。

コロナ前の2019年の同期間と比較すると国際線は62.7%、国内線では26.3%ほど下回っているが、コロナ禍を受けてのリストラで従業員数は減っており、パイロットや客室乗務員などの人手不足感は否めない。日本の航空業界でも「人を買うM&A」が活発化する可能性がある。

これまで航空会社の再編は業績不振に伴う「規模拡大のM&A」が主流だったが、人手不足を解消するための再編に突き動かされることになりそうだ。

文:M&A Online編集部

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