日本スキー場開発が過去最高売上に迫る、成長をけん引する3つの要因とは?

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※画像はイメージ

日本駐車場開発<2353>の連結子会社、日本スキー場開発<6040>の業績が急回復しています。2023年3月3日に通期業績の上方修正を発表。売上高を従来予想61億円の6.6%増となる65億円に引き上げました。同社は2019年7月期に売上高が66億2,800万円で過去最高となりましたが、それに迫る水準まで迫っています。

売上増に一役買っているのが、海外スキー客。2023年7月期のインバウンド来場者数は14万人を見込んでいます。2016年7月期の13万3,000人を上回るものであり、グループのスキー客全体の1割を占めます。

日本スキー場開発はコロナ禍の2021年7月期に売上高が45億4,600万円まで縮小しました。目覚ましい回復を遂げています。この記事では以下の情報が得られます。

・日本スキー場開発の業績推移
・業績が堅調な3つの要因

スキー人口が減少し続ける中で客数を伸ばせる理由

国内のスキー、スノーボード人口は減少しています。1998年に1,800万のピークを迎えましたが、2017年は620万人にまで縮小しています。

上下のウェアや板、グローブなどの必要な装備に5~10万円程度かかる上、遠方にあるスキー場に車や電車、バスで移動しなければなりません。場合によっては宿泊費もかかります。趣味としてはかかる費用が高額であり、バブル崩壊後に急速に人気を失いました。

■スキー・スノーボード人口の推移

※一般社団法人日本スノースポーツ&リゾーツ協議会「スノースポーツツーリズムの活性化について」より

下のグラフはGoogleトレンドで「スキー」に関連する検索動向を調べたものです。2004年1月1日を基準(100)とすると、2023年1月は70まで縮小しています。スキー関連のWeb検索が減少していることからも、現在もスキー人気が回復することなく、少しずつ興味関心が失われている様子がわかります。

■「スキー」の検索動向

※Googleトレンドによる調査結果

しかし、日本スキー場開発の売上高は2016年7月期に前期比5.1%減の55億8,400万円となったものの、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受ける前の2019年7月期まで増収を続けました。2021年7月期は営業損失を出しましたが、翌期には早くも営業黒字化を果たしています。

2023年7月期の業績が予想通り着地すると、営業利益率は12.3%となり、2019年7月期の9.5%を2.8ポイント上回ります。

※決算短信より筆者作成

日本スキー場開発の業績が堅調な要因は3つあります。1つ目はスキー客以外を取り込む施設づくりを行っていること。2つ目はインバウンド需要が旺盛なこと。3つ目は外部のスキー場に対するコンサルティングを行っていることです。

運営するスキー場の「白馬岩岳スノーフィールド」を、2023年7月期上半期ウィンターシーズンに訪れた人の数は5万3,000人。2019年7月期の同期間は4万8,000人でした。10.4%増加しています。その背景にあるのが、ノンスキー来場者の増加。2022年はノンスキーの来場者数が8,400人でした。2019年は3,400人。2.5倍に増加しています。

■「白馬岩岳スノーフィールド」ノンスキー来場者数推移

※決算説明資料より

「白馬岩岳スノーフィールド」は2018年に「Hakuba Mountain Harbor」を開業。北アルプスを一望できるテラスに、食事を楽しめるショップを設けました。2022年4月には「白馬ヒトトキノモリ」をオープンし、マウンテンバイクや乗馬などのアクティビティが楽しめる施設を提供しています。

スキーをしない子供にも雪遊びができる施設づくりを進めており、「スキー場」から「冬のテーマパーク」へと変貌を遂げようとしています。ポケモンスノーアドベンチャーなどの子供向けサービスを強化した「鹿島槍スキー場」の利用者数は、2019年の2,900人から2022年は6,400人まで2.2倍に増加しています。

スキー場の再生請負人になれるか?

インバウンド来場者数の回復も顕著。2023年7月期のインバウンド来場者数は14万人、2025年7月期は30万人を見込んでいます。計画通りに進捗すると、2019年7月期の23万3,000人を上回る数字です。

■インバウンド来場者数実績及び計画

※決算説明資料より

もともと、日本のスキー場の雪質は良いとされ、世界中のスキーファンに親しまれてきました。日本スキー場開発が運営するスキー場のリフト券は2,000円程度ですが、オーストラリアでは8,000円前後と高い傾向にあります。現在は円安が進んでいるため、旅費や滞在費も抑えられます。長期休暇中にスキーを楽しむのであれば、日本の方がコストパフォーマンスが良いと判断されるでしょう。

日本スキー場開発は海外営業部を設け、アジア圏を中心に顧客獲得を行っています。

グループ以外のスキー場への経営支援も見逃せない取り組み。2021年8月に宮城蔵王観光(宮城県刈田郡)が運営する「みやぎ蔵王えぼしリゾート」、同年10月には片品村振興公社(群馬県利根郡)の「オグナほたかスキー場」の集客支援を行っています。

キッズプログラムや共通割引リフト券を活用することにより、経営支援を行うスキー場の集客効果を高めます。

日本スキー場開発は、2023年7月期第2四半期において、コンサルティング事業の契約増で1,100万円の営業利益の押し上げ効果があったとしています。

老朽化して稼働が下がった施設の経営支援をする姿は、数々の旅館を再生させた星野リゾート(長野県北佐久郡)を彷彿とさせます。施設の価値を高めることに成功した星野リゾートは、その後、星野リゾート・リート投資法人<3287>を立ち上げて稼働率の高い施設を買収しました。

日本スキー場開発は、2006年に「サンアルピナ鹿島槍スキー場」を買収してスキー場の運営を本格的にスタートしています。その後、次々と運営会社を買収してグループ傘下に収めました。日本スキー場開発は、スキー場の再生請負人になるのかもしれません。

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