「日本電産」創業者・永守重信氏の後継者は誰になるのか

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日本電産本社(京都市)

関潤社長が退任へ

2022年8月25日、日本電産<6594>の関潤社長兼最高執行責任者(COO)が「退任する見通し」とのニュースが駆け巡った。

関氏は2020年1月に日産自動車から移籍し、社長や最高経営責任者(CEO)を務めていた。前社長の吉本浩之氏が商社(日商岩井=現双日)出身だったこともあり、創業者である永守重信会長は、技術の分かる人でないと日本電産の社長は難しいといった趣旨の発言を行い、関氏を高く評価していた。

ところが関氏は、担当する車載事業の業績が悪化したことから2022年4月に、COOに降格となった。CEOに就任してわずか1年足らずのことだっただけに、その後の進退が注目されていた。

吉本氏が社長に就任する前には、シャープ元社長の片山幹雄氏が後継者として有力視されていた。ところが、時間の経過とともに永守氏は、大企業の出身者は利益やコスト削減などに対する意識が低いとの趣旨の発言を行い、結局、片山氏への後継者指名はなされなかった。関氏が退任することになれば、3代続けて後継者と目されていた大企業出身者が退くことなる。

ブルームバーグが伝えるところでは、日本電産は今年10月に生え抜き中心の新経営体制を発足させる方針という。

残された時間は

永守氏は、M&Aを活用して日本電産を大企業に育て上げた。「M&Aは成長戦略の一環であり、膨張戦略の一環としてやっているわけではない。会社を膨らますだけではダメ。必ずきちんとした一定の利益を上げていくことが必要」と強調。徹底したコスト削減や在庫管理を推し進めてきた。

また「対外的には売上高が2兆円だとか、10兆円だとか、大きなことを言っているが、社内的には細かい話ばかりしている。明日にでも会社がつぶれるようなことを言っている」とも述べ、いわゆる“大企業病”がはびこらないように努めてきた経緯がある。

さらに、M&A成立後の統合プロセスであるPMIについても「現地を訪れ経営方針などをしっかりと伝えなければならない。実際の経営は現地の人に任せ、あくまでも株主と言う立場からその会社の経営に関わるのが大切」とし、自ら現地に乗り込んで、自身の考えを広めてきた。

こうした考えや行動を引き継いで実行できるのは誰なのか。永守氏と一緒に経営を支えてきた生え抜き組なのか。それとも4人目の大企業出身者なのか。永守氏は1944年8月28日生まれの77歳。残された時間はそれほど長くはなさそうだ。

文:M&A Online編集部