5期連続営業赤字のミニストップはなぜ衰退の道を歩み始めたのか

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ミニストップ新川崎店

イオン<8267>の連結子会社ミニストップ<9946>が苦戦しています。2022年2月期に31億3,700万円の営業損失を計上。2023年2月期も2億円の営業損失を予想しています。予想通りに着地すると5期連続の営業赤字となります。ミニストップは2022年1月に韓国事業をロッテグループに売却する契約を締結。売却益によって2023年2月期は102億円の純利益を見込んでいるものの、本業での稼ぐ力がついていません。

ミニストップはなぜ競合と差がついたのでしょうか?この記事では以下の情報が得られます。

・ミニストップの業績
・競合との比較
・ミニストップが他のコンビニと後れをとった要因

日商でセブンイレブンに1.6倍の差をつけられたミニストップ

ミニストップの2022年2月期の売上高にあたる売上総収入は前期比1.9%増の1,836億8,000万円。2021年2月期はコロナ禍の影響によって売上総収入は前期比6.9%減少していました。回復傾向にはあるものの、コロナ前の2020年2月期との差は5.1%開いています。

ミニストップは2022年2月にフィリピン事業であるロビンソンズ・コンビニエンス・ストアーズ・インクの株式40%を、合弁相手であるロビンソンズ・スーパーマーケット・コーポレーションに売却。2021年10月には中国から完全撤退していました。更に韓国事業をロッテに売却したことで、国内とベトナムに経営資源を集中する大改革を行っています。

そのため、2023年2月期の売上総収入は前期比56.2%減の805億円を予想しています。不採算だった海外事業を整理しても2億円の営業赤字を予想しており、黒字化は果たせそうにありません。

■ミニストップの業績推移

※営業利益の目盛は右軸

2016年2月期 2017年2月期 2018年2月期 2019年2月期 2020年2月期 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期
予想
売上総収入(百万円) 213,528 196,955 206,964 205,304 193,439 180,187 183,680 80,500
前期比 131.7% 92.2% 105.1% 99.2% 94.2% 93.1% 101.9% 43.8%
営業利益(百万円) 2,597 1,241 10 -551 -3,031 -5,532 -3,137 -200
前期比 87.6% 47.8% 0.8% - - - - -
営業利益率 1.2% 0.6% 0.0% - - - -

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決算短信より筆者作成

セブン&アイ・ホールディングス<3382>の2022年2月期国内コンビニ事業の営業収益は前期比1.7%増の8,732億円、営業利益は4.4%減の2,233億円でした。営業利益はわずかに落ちましたが、営業利益率は25.6%と稼ぐ力そのものは衰えていません。

ローソン<2651>単体の2022年2月期の営業総収入は前期比0.1%増の3,551億200万円、営業利益は1.1%減の258億7,000万円でした。営業利益率は7.3%。ローソンはコロナ禍で2桁だった営業利益率が2021年2月期に7.4%に低下。2022年2月期も同様の水準となりました。しかし、2023年2月期の営業総収入は3,500億円、営業利益は300億円を予想しており、予想通りに着地すると営業利益率は8.6%となります。収益性の改善に向けて動き始めています。

コンビニの収益を左右するのが1店舗当たりの日商。ミニストップは401,000円。セブンイレブンは1.6倍の646,000円。ローソンは1.2倍の498,000円です。

■コンビニの日商比較(単位:千円)

※決算説明資料より筆者作成

ミニストップは1店舗当たりの売上高で大きく水をあけられています。

コンビニはフランチャイズ加盟店を募って加盟金や利益分配などによって儲けるビジネスモデル。加盟するオーナーにとってはできるだけ日商が大きいブランドを選ぼうとします。ミニストップは1店舗が稼げるモデルを構築しなければなりません。

差別化戦略が裏目に出たか

ミニストップ最大の特徴は「コンボストア」と呼ばれる、コンビニ機能とファーストフード機能を併設した店舗づくりです。フライヤーなどの厨房機器、ソフトクリームフリーザーとイートインコーナーをぼぼ全店に導入しています。

これにより、コールドスイーツやホットスナック、総菜などのホームデリを提供できるようにしました。他のコンビニにはない強みですが、消費者のミニストップの評価は競合と比べて極めて低い水準に留まっています。

■コンビニのイメージに関するアンケート調査

マイボイスコム「コンビニのイメージに関するアンケート調査」より

伊藤忠商事グループのリサーチ会社マイボイスコム(東京都千代田区)の調査によると、信頼性・安心感があると思うコンビニで、ミニストップと回答したのはわずか9.0%。セブンイレブンの57.6%、ローソンの44.4%と比較して大きな差が生じています。

満足度を得られない要因の一つが店舗オペレーションが迅速に行えないことによる、レジの待ち時間が長いことが挙げられます。

シチズン時計<7762>はコンビニでのレジの待ち時間において、イライラする長さを調査しています。それによると、3分が25.8%でトップ。これを過ぎると8割超がイライラするとしています。

ミニストップは人気の「ハロハロ」の注文を受けた場合、アイスクリームを抽出するなどレジを離れて作業を行う必要があります。その間、空白時間が生じてしまうのです。コールドスイーツの注文が続くほど、レジに遅れが生じて後ろに並んだ人はイライラします。それが高い満足度を得られない一因です。

そうかといって、店員の数を増やせば人件費が嵩んで利益が圧迫されるため、オーナーは進んで人員を補充しようとはしません。レジを無人化する取り組みを行っていますが、使い慣れない消費者がいればかえって時間をとることにもなりかねません。オペレーションの側面だけを切り取ると、スタッフはレジや接客に集中した方が効率的です。

また、キラーコンテンツだった「ハロハロ」などのコールドスイーツの人気は衰えています。ミニストップは2016年2月期に売上総収入が前期比31.7%増の2,135億2,800万円となりました。このときの日商は427,000円で今よりも6.4%上回っていました。

2016年2月期は「ハロハロ」や「プレミアムベルギーチョコソフト」などのコールドスイーツが過去最高の販売数を達成。売上増に寄与しました。しかし、翌年は販売数を更新することができませんでした。

コールドスイーツはその年の気温にも左右されますが、人気を失った背景の一つに競合の商品開発力があります。

セブンイレブンは店内のコーヒーマシンを使ってフラッペのようなドリンクを作る「飲むスイーツ氷」を2017年から一部店舗で販売を開始。現在では「スムージー」を一部店舗で試験導入しています。セブンイレブンはコーヒーマシンを使って、できたてスイーツを提供する体制を構築しています。これであれば、店舗オペレーションに負担がかからず、レジの待ち時間が長くなることもありません。

スイーツを得意とするローソンもセブンイレブンの動きに追随する可能性があります。競合の商品開発力が上がれば、それだけミニストップのデメリットが目立つ結果となります。

ミニストップは韓国事業の売却で売却益が得られます。その資金をどの分野に投資するのか。注目が集まります。

麦とホップ@ビールを飲む理由