【突撃MAOちゃん!】はじめての会社分析 <下>

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著書を手にする花房先生(左)と三木先生(右)。

こんにちは、MAOです。M&A Online編集長からの「M&Aをもっと身近にせよ」とのミッションを遂行すべく、M&Aをはじめとするビジネスや経済について体当たりで探っていくこのコーナー。

前回に引き続き、公認会計士の花房幸範先生と三木孝則先生のお二方に、就活生こそ知っておきたい決算書の見方を教えてもらいました。

就活生がチェックすべき数字は?

MAO:今年も3月に採用活動が解禁され、街中でもちらほらとリクルートスーツ姿の学生さんたちを見かけるようになりました。6月からはいよいよ面接などの選考が始まりますが、就職活動の際に見るべき数字となると、どんな数字でしょうか?

花房先生:就活生がまず興味を持つのは給与や勤続年数ですよね。経済誌などのランキングにもなっていますけど、あれは有価証券報告書に出ている情報を集計しているものです。給与水準を見る時に気をつけないといけないのが、その給与水準となる平均年齢が記されていないこと。だから給与水準だけで単純には比較できないですね。
それと、最近多い持株会社を導入しているグループだと、持株会社の平均給与しか出ていません。その子会社では、給与水準は全然違います。

MAO:ほかに決算書で面接に効くような、調べておくと役立ついいポイントはありますか?

三木先生:やはり会社のことをどれくらい調べているのかというのは採用要素の一つでもあるので、決算書まで見ているのはアドバンテージになると思います。
大きな会社だと事業もセグメントに分かれていて、有価証券報告書にそれらの情報も載っているので、「御社の中核は○○事業ですが……」「私が大学でやってきた△△は、この事業の××な部分に合っていると思います」などの話ができればかなり説得力がありますね。

花房先生:数字には客観性があるので、同じ話でも数字を入れることできちんと理解しているなと思わせることができると思います。企業は利益を出さないと成立しないので、ビジネスマンとしてそういう金銭感覚は必要です。例えば一つの企画をやるにしても、どれくらいの売上が出て、コストがいくらかかるのかということは何にせよ考えないといけない。
最近では、会議をやるにしても会議にかかっている人件費を参加者に知らせて、それ以上の価値を生む会議にしようと呼びかけている企業もあるそうです。

三木先生:会社のことを大づかみで理解するには、売上100円当たりのコスト構成を見るのがおすすめです。売上を何に使うのかは会社の意思決定でもあるので、どういう会社なのかが見えてきます。100円ならその比重が感覚的につかめますね。そのほとんどが仕入れなら安く物を提供したいと考える会社、内装費用や人件費が多いなら居心地がいい環境を提供したい会社、設備にお金をかけているならそれを元手に儲けていく会社といったように、その会社の方向性が見えて面接でも一言違ったことが言えるかと思いますよ。

花房先生:あとは成長性。例えば5年前ぐらいから売上がどう変化しているのかを見てみるのもいいと思います。急成長しているのであれば、入社後の自分の成長が見込めます。逆にほとんど変化がないのであれば、成熟した業種であり、急激な進歩はないということが何となくわかりますよね。
それと、数字ではないのですが、私たちが色々な会社を見る上で大事だと思うのが経営理念や企業文化。時代は変わっていくものですが、経営理念がぶれることなく受け継がれている会社はしっかりとした独自の企業文化を創り出していて、社員がやりがいを持って仕事をしていることが多いです。

あなたの会社は大丈夫? 決算書に現れる不吉な兆候

MAO:大企業に入っても安泰とは簡単には言えない時代。会社の先行きが危ない兆候は決算書にも表れるものですか?

花房先生:表れますね。売掛金が売上の伸び以上に増えているとか。

三木先生:決算書の一つにキャッシュフロー計算書というお金の出入りを記したものがあります。その中の営業キャッシュフローの数字もチェックポイントです。営業キャッシュフローは、本業の営業活動でいくら稼いだのかを示す指標。これが何年か連続でマイナスになっていたら、危険信号ですね。
あとは、安全性という意味では自己資本比率も要チェックポイントです。

花房先生:最近は利益が少なくても、昔からの優良企業でキャッシュを貯めている会社は安心。少なからずも利益を出すということは大事なことで、それがだんだん減って来たというのも一つの兆候ですね。いきなり債務超過になることはなくて、徐々にです。

三木先生:短期の借入金が増えてくるのも要注意です。銀行もこの会社には貸付をしたくないとなると長期間の貸付をしてくれません。そのため、1年以内に返済する短期の借入を繰り返し刻んでいきます。要は、銀行の方も危ないと見始めたというシグナルになります。

MAO:うわー、けっこう表れるものなんですね……。決算書って、あまり自分には関係ないものだと思っていたけど、会社のことを知るには見ておくべきものだということがよく分かりました。花房先生、三木先生、ありがとうございました!

「ビジネスモデル分析術」「ビジネスモデル分析術2」 花房先生と三木先生も書かれた本
ビジネスモデル分析術
ビジネスモデル分析術2」では、
具体的な企業を挙げて、会社分析をしています。
会社の沿革や経営理念も載っているので
参考になりますよ!

まとめ:M&A Online編集部

花房 幸範(はなふさ・ゆきのり)
アカウンティングワークス株式会社 代表取締役
株式会社ビズサプリ パートナー 公認会計士

学歴:1998年 中央大学商学部会計学科卒業

職歴:1997年10月より、中央青山監査法人にて5年間、現場責任者として上場会社・外資系企業の会計監査の他、IPO支援・財務デューデリジェンス等に従事。
2002年10月より5年間、日本アジアホールディングズ(株)(現日本アジアグループ(株))の財務経理部長として資金調達、決算業務を主軸に、企業買収とその後の事業再生に携わる。
2007年から2年間、中小のコンサルティング会社にて主に製造業、金融業、小売業等の連結決算支援、内部統制構築・整備支援、業務改善支援等に従事し、2009年10月より独立。アカウンティングワークス㈱の代表取締役として、現在に至る。決算開示支援、業務改善、M&A支援等の会計コンサルティングを幅広く行うとともに、セミナー・執筆等も実施。特にM&A、連結会計、ワークシートを活用した業務効率化の導入支援に強みを持つ。

主な著書:
有価証券報告書を使った決算書速読術(阪急コミュニケーションズ)
最小限の数字でビジネスを見抜く 決算書分析術(阪急コミュニケーションズ)
ビジネスモデル分析術2(2014年最新刊)
三木 孝則(みき・たかのり)
株式会社ビズサプリ CEO 公認会計士

学歴:1998年 東京大学経済学部経営学科卒業

職歴:1997年10月より青山監査法人に5年勤務。多様な業種(製造業、サービス業、ホテル業、保険業等)における財務諸表監査(日本基準、米国基準、IAS(現IFRS)等)を経験する。その他、システム監査やデューデリジェンスにも従事。 その後、2003年1月から監査法人トーマツに転職し、エンタープライズリスクサービス部にて7年9カ月勤務。国内外の企業の内部監査や内部統制の導入コンサルティングやコソーシング、リスクマネジメント、システムに関わる業務改善等に主任として従事。また、一連のテーマに関する社内外のセミナー講師や機関紙の執筆等に関わる。専門家としてのコンサルテーションのみならず、複雑な環境下でのプロジェクトマネジメントや改善策の導入支援に強みを持つ。 2010年10月より独立し、株式会社ビズサプリを設立。IFRS導入支援やIPO支援等のコンサルティングを展開しつつ、現在に至る。

資格:公認会計士、公認内部監査人(CIA)、公認情報システム監査人(CISA)、TOEIC900点

主な著書:
統制環境読本(翔泳社)
IFRS決算書分析術(阪急コミュニケーションズ)
ビジネスモデル分析術(阪急コミュニケーションズ)