「社会人となってM&Aに関わるビジネスがしたいけど、いったいどの大学で、何を学んだらいいの?」そんな受験生向けに「M&Aが学べる大学(ゼミ)」の情報をお届けします!
M&Aと聞くと、「派手に大金が飛び交う世界」とか「事業に失敗してやむなく救いの手を求めた」という印象をお持ちの方が多いと思います。
しかし実際にはM&Aのごく一面をとらえたに過ぎず、M&Aの本質とは“産業の新陳代謝を進め、そして企業の成長と発展を促す”ために欠かせない経営手法なのです。
「リタイアしたいので会社を譲りたい」とか「合併や他の企業の傘下に入って会社を成長させたい」、最近は「上手に譲って別の新たな事業に取り組みたい」といった目的もあるでしょう。
そうした目的を達成する“主役”は誰かというと、もちろん経営者です。すなわちM&Aに関して「主役の立場で取り組みたい」と考えるなら、学ぶベき大学・学部は多くの社長を輩出しているところがふさわしいことは言うまでもありません。学部としては、国公立・私立を問わず経済・経営系の学部がメインでしょう。
一方、M&Aビジネスは公認会計士・税理士、弁護士、金融機関、M&Aアドバイザーなど多くの専門家の協力・サポートがあって実現できるものです。その観点に立てば、国公立・私立を問わず経済・経営系の学部はもちろんのこと、法学系の学部もいいでしょう。
さらに文系だけでなく、理系出身者も活躍しています。M&Aの現場では、経営工学、金融工学、統計学など従来の文系・理系の枠にとらわれないジャンルの学問・知識・スキルが求められる機会も増えています。
また、国内企業にとどまらず、海外にも活動の幅が広がってきました。グローバル企業のM&Aに携わりたいならば、英語・中国語などの語学はビジネスの基礎スキルとして必須とさえいえます。
大学において、「M&A学部」「M&A学科」といった名称を強く打ち出しているところはないため、学問としての“マーケット”はまだ大きいとはいえません。しかし、M&Aのプロとして活躍するための入口は、たくさん用意されていると考えることもできます。
そのなかで、よりM&Aを学べる「ゼミ」をいくつか紹介します。
東京工業大学の井上光太郎教授のゼミは、「現場とトップマネジメントをつなぐ研究室」として、コーポレートガバナンスと企業行動・企業パフォーマンスの国際比較研究の基盤研究を行っています。
研究テーマは、「コーポレートファイナンス(経営財務)、企業の財務意思決定・投資意思決定の分析、M&A、IPO、設備投資、R&Dなど、コーポレートガバナンス(企業統治)、効率的な経営メカニズムの解明、最適統治システムの分析、取締役会、経営者報酬など、これらの領域と行動ファイナンス(心理学)の領域、経営者行動、投資家行動、裁定の限界」などです。
素養としては「研究手法として理系のアプローチがさまざま使えますが、研究領域はファイナンス・経営管理・経済領域であり、その文理両方を習得する意気込みと能力が必要」としています。
井上ゼミの特徴は、外部の研究者や省庁・企業などとの連携を活発に行っている点です。経済学・経営学領域の学問ですが、「欧米には理系出身のファイナンス研究者が多い。理系学生の強みを活かす!」とのことですので、理系でM&Aを研究したい受験生におすすめのゼミです。
「井上光太郎研究室(http://www.me.titech.ac.jp/~inouelab/)」
早稲田大学商学部の宮島英昭教授のゼミでは、「日本企業システムの経済分析」すなわち、「現在、日本型経済システムとして内外の注目を集める経済諸制度の形成過程とその変容ならびに制度の経済的機能を分析する」ことを課題としています。
具体的には、「企業金融、コーポレートガバナンス、M&Aと事業ポートフォリオ、企業間の垂直的関係、企業の境界問題(事業部制・カンパニー制・分社の選択問題)、さらに企業集団(メインバンクシステムを含む)と政府・企業間関係(産業政策)の分析」に焦点を当てています。
「スポーツのように勉強する!」がモットー。「多少転ばないとスキーも上達しないように、研究もしっかりと基礎的なことを練習(勉強)しないと一向に面白くならない」と考えています。3年次は「ゼミを進める上で不可欠な日本の経済成長に関する事実の習得や、日本企業システムを理解する上での知識と統計的手法を身につけることを目的として活動」し、4年次は「卒業論文の作成及び必要な統計分析の手法の応用力の強化を目的として活動」しています。
「ようこそ!宮島英昭研究室ホームページへ(http://www.waseda.jp/sem-miyajima)」
慶應義塾大学商学部の牛島辰男教授は、「経営戦略,経営財務,企業の経済学」を専門領域としています。その領域のなかで、M&Aについて学ぶことができます。
主要な研究テーマは「企業戦略(事業の多角化)と組織構造が企業の市場価値にどう影響するか、戦略と組織の変更(リストラクチャリング)がどのように実施されるか」です。そのテーマについて、「主に計量経済学的な手法を用いて分析する。多角化企業に代表される巨大で複雑な企業の方向性(戦略)をいかに定め、企業としての形(構造)をどのように作るかが基本的な関心」としています。
「慶應義塾大学商学部 牛島辰男研究会(http://tatsuoushijimasemi.wixsite.com/homepage)」
中京大学 経営学部の矢部ゼミでは、企業への経営戦略提案を中心に学ぶことができます。幅広く経営戦略全般を学びたいという方におすすめのゼミです。矢部教授はM&A領域の研究者でもあります。
また、経営財務(コーポレート・ファイナンス)の講義で2回ほどM&Aをテーマを取り上げているそうです。
「中京大学経営学部矢部ゼミ(https://manage.chukyo-u.ac.jp/student_news/article/cat1/1.html)」
ここで挙げたのは、「M&Aが学べる大学・学部」の一例です。これらのゼミをはじめ、全国でM&Aを学べる大学・学部・研究室が増えつつあります。
国内企業・海外企業を含めた全体のM&A件数は増加の一途をたどり、その時流を受け、学生のM&Aに関する認知度・関心度も高まってきました。M&Aに関わる学問・ビジネスの門戸も、学生が思っている以上に広がっています。
さあ、受験生のみなさん、もう一踏ん張りです! ビッグチャンスをつかんで、桜咲く春を迎えましょう!!
次回は、M&Aが学べる大学院を特集します。
文:M&A Online編集部