消費税率が8%から10%に引き上げられる2019年10月1日を前に、関心の薄らいでいた仮想通貨に、LINE<3938>、楽天<4755>という身近な企業の参入が相次いでいる。
消費税率アップに伴い、スマートフォン決済サービスなどのキャッシュレス支払いで2%と5%のポイントを還元する事業がスタートするため、日本のキャッシュレス比率が急速に上昇することが見込まれている。
一方、仮想通貨に用いられるブロックチェーン技術は、多方面で実証実験が進み、今後の経済システムを変える可能性を秘めているといわれる。
LINEや楽天などの馴染みの深い企業による仮想通貨事業に、キャッシュレス化やブロックチェーンなどの新しい技術が結びつくことで、これまでにない世界が出現しようとしている。
LINEは2019年9月17日に、日本国内で利用できる仮想通貨取引サービスBITMAXの運用を始めた。
国内で月間8100万人以上が利用するアプリLINE内のLINEウォレットからBITMAXを選び、本人確認の審査が完了すると、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、リップル(XRP)、ビットコインキャッシュ(BCH)、ライトコイン(LTC)の5種類の仮想通貨を取引できる。
仮想通貨事業を手がけるLINE子会社のLVC(東京都品川区)が2019年9月6日に仮想通貨交換業者の登録を完了させ、日本国内でのサービス提供の準備を進めていた。
LINEは2018年7月に仮想通貨取引所BITBOXを立ち上げ、日本と米国を除く世界各国でサービスを提供しているが、BITMAXはこれとは別のサービスになる。
BITMAXでは顧客の資産と、BITMAX を運営するLVCの資産を分別して管理し、取り扱う仮想通貨はコールドウォレットで管理する。
コールドウォレットはインターネットから完全に切り離された専用の機器や紙などで仮想通貨を管理するもので、不正アクセスによって仮想通貨が盗まれることがなく、安全性が高い。
仮想通貨の売買に関する日本円の入金はLINE Payからの入金と、LINE Payに登録している銀行口座からの入金の2通りから選べ、取引額は1000円以下の少額でも可能なため、仮想通貨を試してみたい人でも簡単に取引できるという。一方、日本円への出金はLINE Payウォレットへの出金となる。
仮想通貨の売買や入庫には手数料は発生しないが、日本円の入出金には108円(2019年10月1日からは110円)の手数料が、仮想通貨の出庫には一定割合の手数料がそれぞれ必要。
楽天の子会社で仮想通貨交換業を営む楽天ウォレット(東京都世田谷区)も2019年8月19日から仮想通貨の取引サービスを始めた。
スマートフォンアプリを配信し、アプリ上で仮想通貨の取引を行うもので、顧客の資産と楽天ウォレットの資産を分離し、仮想通貨はコールドウォレットで管理し、安全性を高めるという。
ビットコイン、イーサリアム、ビットコインキャッシュの3種の取引が可能で、仮想通貨の売買や入庫、日本円の入金についての手数料は無料で、日本円への出金は300円、仮想通貨の出庫には一定割合の手数料がかかる。
仮想通貨については2018年1月に、コインチェック(東京都渋谷区)から580億円分もの仮想通貨が流出した事件を機に、安全性の問題がクローズアップされたほか、その後価格が下落したこともあり、仮想通貨に対する関心は薄らいでいた。
不正流出はインターネットにつながった記憶装置で仮想通貨を管理するホットウォレットで発生しており、今回LINEと楽天の両社はインターネットにつながっていないコールドウォレットで仮想通貨を管理する。
さらに米国のフェイスブックが価格変動の起こりにくい仮想通貨リブラを発行し、送金や決済などを簡単に安く行えるようにする計画を打ち出したこともあり、次第に仮想通貨への関心が上向いてきた。
スマートフォンを用いたキャッシュレス、仮想通貨、ブロックチェーンなどが結びつく世界はすぐそこまで来ている。
文:M&A Online編集部