スタートアップの出現率(設立5年未満の企業の割合)が最も高いのは、北九州市の小倉北区(11.0%)と小倉南区(同)で、全国平均(3.6%)の3倍ほどに達したことが分かった。
帝国データバンクが、各市、区ごとにスタートアップの出現率を算出したもので、トップの両区に続いて、北九州市の八幡西区(8.9%)、福岡市中央区(7.7%)などが上位を占め、福岡県勢の台頭が目立った。
帝国データバンクによると「北九州市は国家戦略特区に指定されている強みを活かし、スタートアップを中心にスモールビジネスを含め多様な支援策が奏功している」としている。
北九州市の取り組みとはどのようものなのか。
北九州市は2020年に「北九州市SDGsスタートアップエコシステムコンソーシアム」を設立し、スタートアップの支援に乗り出した。
同コンソーシアムは内閣府の「スタートアップ・エコシステム推進拠点都市」に認定されており、政府や政府関係機関、民間サポーターによる集中支援によって、世界と伍するスタートアップ・エコシステム拠点形成を目指している。
北九州市は、製鉄所を中心にモノづくりが発展した街で、同市の強みである環境や、ロボット、DX(デジタル技術で生活やビジネスを変革する取り組み)分野を中心にエコシステムを形成し、シード、アーリー、レイターの各段階のスタートアップを対象にした創業支援や成長支援などを行っている。
さらに創業前の個人を対象にした支援にも力を入れており、loT(モノのインターネット)や、ロボット、XR(現実空間と仮想空間を融合させて新たな体験を創造する技術)などのモノづくりに関する事業アイデアを持つ個人を、開発メンター(指導者)、制作メンターが支援しながら協賛企業とともに、試作品を製作するなどの取り組みを展開している。
また北九州市とジェトロ北九州は、福岡市とジェトロ福岡が2024年5月に開催したシンガポールやインド、ドイツなど7カ国のスタートアップの関係者約70人が参加した、スタートアップ企業の交流イベントにも連携して参画するなど、スタートアップ支援のムードを高めている。
スタートアップの出現率の高さは、こうした幅広い支援策の積み重ねの結果と言えそうだ。
帝国データバンクの調べによると、小倉の両区に次いで、3位となったのは松山市(9.3%)で、この後に北九州市の八幡西区、高松市(8.9%)が続いた。
首都圏では横浜市中区(6.9%)や、東京都渋谷区(6.8%)、東京都港区(6.6%)などが10位以内に入った。
同社では各地域の支援策が拡充される状況を踏まえて、「地域の特色を活かした取り組みが今後も盛り上がりを見せそう」と分析している。
順位 | 市、区名 | 出現率 |
---|---|---|
1 | 北九州市小倉北区 | 11.0 % |
1 | 北九州市小倉南区 | 11.0 % |
3 | 松山市 | 9.3% |
4 | 北九州市八幡西区 | 8.9% |
5 | 高松市 | 8.9% |
6 | 宮崎市 | 8.6% |
7 | 福岡市中央区 | 7.7% |
8 | 横浜市中区 | 6.9% |
9 | 東京都渋谷区 | 6.8% |
10 | 東京都港区 | 6.6% |
文:M&A Online
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