仮想通貨交換業者に追い風が吹き始めた。
コインチェックによる仮想通貨ネムの580億円にもおよぶ不正流出事件後、金融庁による立ち入り検査や行政処分などが一段落し、新たな仮想通貨交換業者の登録作業が動き出したためだ。
登録業者16社で構成する業界団体も近く自主規制規則を公表する見込みで、個人投資家だけでなく機関投資家なども参入しやすり環境が整いつつある。
世界に先駆けて仮想通貨の安定化を目指す日本の取り組みは、各国の注目を集めそうだ。
金融庁は仮想通貨交換業者への立ち入り検査の結果をとりまとめた「仮想通貨交換業者等の検査・モニタリング中間とりまとめ」を発表した。
この中の「今後の監督上の対応」の項目で、新規登録申請業者に触れ「書面やエビデンスでの確認を充実させる」「現場での検証や役員ヒアリングなどを強化する」などとし、今後登録審査に取り組む姿勢を示した。
仮想通貨交換業への新規参入を目指す企業は100社ほどあり、コインチェックの事件以来、登録審査は止まっていた。登録審査が動きだせば、仮想通貨の取り引きが拡大することが予想され、再び仮想通貨ビジネスが活況に転じる可能性が高い。
さらに監督上の対応では自主規制団体にも触れ「実効性のある自主規制機能が確立されるよう適切に審査する」とある。ここでいう自主規制団体というのは日本仮想通貨交換業協会が金融庁に認定を申請した「認定資金決済事業者協会」のことで、現在金融庁が認可を審査中。
認定資金決済事業者協会は仮想通貨交換業に関する自主規制規則の制定や、法令・自主規制規則の遵守のための会員に対する指導、勧告などを行うという。
現在、自主規制規則の制定や実効的な運用のための態勢の整備に取り組んでおり、近く公表する見込み。これらが実行されれば、利用者が安心して仮想通貨交換サービスをご利用できる環境整備が一歩前進することになる。
金融庁は自主規制団体との関係について「連携」という言葉を使っており、認定の審査という事務的な作業だけでなく、同協会が仮想通貨安定化に向けた大きな役割を担うことへの期待がうかがえる。
では、金融庁が発表した「仮想通貨交換業者等の検査・モニタリング中間とりまとめ」の中身はどうだろうか。
仮想通貨交換業者等の検査・モニタリング中間とりまとめによると、仮想通貨交換業者の企業規模(総資産)が平均で前年度比5.5倍に急拡大していることが分かった。
一方で、内部管理態勢の整備が追い付いていない実態も浮き彫りになった。「仮想通貨のリスク評価をしていない」「セキュリティー人材が不足している」「内部監査が実行されていない」などの問題点を指摘。利益を優先した経営姿勢や、利用者保護の意識や遵法精神について改善を求めた。
またマネーロンダリングやテロ資金供与対策についても、これら対策を行うための専門性や能力を持った要員が確保されていないと結論づけた。今後これら点について、引き続き立ち入り検査などを行い、必要な行政指導や処分を行うとしている。
専門性や能力を持った人員の確保など時間を要する案件が少なくないが、金融庁や自主規制団体の取り組みによって日本の仮想通貨ビジネスは着実に前進していると言えそうだ。
文:M&A Online編集部