上場企業による子会社・事業の売却件数が2年ぶりに増加した。M&A Online編集部がM&Aデータベースで、2023年上期(1-6月)の上場企業による子会社・事業の売却案件(適時開示ベース)を集計したところ、件数は139件で、2022年上期の127件から12件増加したことが分かった。
2014年以降の10年間では2021年上期(168件)、2020年上期(140件)に次ぐ3番目の件数となった。ただ取引金額は2871億円と前年同期の4分の1ほどに大幅に減少。過去10年間では8番目の低位にとどまった。
コロナ禍の影響で業績不振に陥った企業が多かった2020年、2021年と比べると、件数は同様の水準にあるものの案件が小型化していることがうかがわれる。
2023年5月に新型コロナウイス感染症が、インフルエンザと同じ感染力の弱い5類に変更になったことから経済活動が活発化し、企業業績が上向いていることもあり、2023年下期(7-12月)は財務体質の強化を目的にした子会社や事業の売却は、件数、金額ともに減少する可能性が高そうだ。
子会社・事業売却の金額1 位は、ENEOSホールディングス<5020>が、チリに保有するカセロネス銅鉱山を運営する子会社SCM Minera Lumina Copper Chile(MLCC、サンティアゴ)の株式51%を、カナダの鉱物資源・エネルギー会社Lundin Mining Corporation(トロント)に譲渡すると発表した案件で、譲渡価格は約1246億円(9億5000万ドル)。
価格変動に業績が左右される資源事業のリスクを抑制し、先端金属素材など成長分野に経営資源を集中させるのが狙いで、今後、MLCCの株式19%をLundinまたは別の第三者に追加譲渡し、最終的な譲渡割合を70%とする。
金額の2番目は出光興産<5019>が、オーストラリアで保有するエンシャム石炭鉱山(クイーンズランド州)の全権益85%分を、現地Sungela Pty Ltd(シドニー)に譲渡することを決めた案件で、譲渡価格は約311億円(3億4000万豪ドル)。
石炭事業の構造改革の一環で、脱炭素への事業転換を進め、再生可能エネルギー、レアメタル(希少金属)、水素・アンモニアといった新規事業を拡大する。
金額の3番目は第一三共<4568>がジェネリック医薬品製造の第一三共エスファ(東京都中央区)をクオールホールディングス<3034>に譲渡する案件で、譲渡価格は250億円だった。
【上場企業による子会社・事業の売却金額上位10件】(2023年1-6月)
文:M&A Online