上場企業による子会社・事業売却が過去最多に 金額非公表が初の半数超え

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写真はイメージです

【1-6月の上場企業による子会社・事業の売却件数】のグラフを更新しました。(2020年8月5日)

M&A Online編集部がM&Aデータベースで調べたところ、2020年1-6月に上場企業による子会社や事業の売却案件が139件となり、2011年以降の過去10年間の同期間では2012年の128件を上回り最多となった。 

一方、139件合計の取引金額は3489億円で、過去10年間では2015年の3931億円に次ぐ6番目にとどまった。案件が小型化したのに加え、金額非公表が74件(非公表比率53.2%)に達し、こちらも過去10年では2012年の57件を上回る最多となった。金額非公表件数が半数を上回ったのは過去10年間で初めて。 

売却理由に新型コロナウイルスの影響を上げたのは、東京製綱<5981>が中国のスチールコード生産子会社を現地社に譲渡する案件などわずかだが、多くの案件で業績の悪化や経営資源の集中などが背景にあるため、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う景気低迷が要因の一つとなったことが予想される。 

【1-6月の上場企業による子会社・事業の売却件数】

全M&A件数も過去最多 

全上場企業に義務付けられた適時開示情報のうち経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)について集計した。 

2020年1-6月の全M&A件数は406件で、2019年1-6月の395件を上回り2011年以降の10年間の同期間で最多となった。 このうち上場企業による子会社や事業の売却案件は34.2%を占め、過去10年間の構成比順位では4番目にとどまった。

2020年1-6月に上場企業による子会社や事業の売却が突出して増えたわけではく、全体のM&A件数が増加する中で、上場企業による子会社・事業売却件数も増加したことが分かる。 

期間中、取引金額が最も高かったのが、アークランドサカモト9842が、LIXILグループ<5938>傘下でホームセンター中堅のLIXILビバを買収すると発表した案件。アークランドサカモトはTOB(株式公開買い付け)などを通じて全株式を約1085億円で取得し、完全子会社化する。

LIXILグループは主力の建材・住宅設備機器事業に経営資源を集中するため、約53%を保有するLIXILビバ全株式を566億円で売却する。

金額の2番目は米投資会社のベインキャピタルが最大694億円を投じて、三井E&Sホールディングス<7003>の子会社である昭和飛行機工業に対してTOB(株式公開買い付け)で全株式を取得すると発表した案件。

経営再建中の三井E&Sは65.6%(間接所有分を含む)を所有する昭和飛行機の全株式を455億円で売却した。

このほか金額非公表の案件として、三井E&Sホールディングスが、艦艇事業を三菱重工業<7011>に売却する案件や、オリンパス<7733>がデジカメなどの映像事業を投資ファンドの日本産業パートナーズに売却する案件などがあった。

東京都ではいったん減少した新型コロナウイルス感染者数が再び増加に転じており、動き始めた経済活動にブレーキがかかる懸念が浮上してきた。そうなれば、業績立て直しや経営資源の選択と集中などを理由に、子会社や事業の売却に踏み切る上場企業が増える可能性がある。コロナ禍の中、企業には難しいかじ取りが求められそうだ。

【金額上位の主な案件】単位は億円

売り手企業 対象企業・事業 買い手企業 金額
LIXILグループ LIXILビバ アークランドサカモト 566
三井E&Sホールディングス 昭和飛行機工業 米ベインキャピタル 455
東芝 東芝ロジスティクス SBSホールディングス 199
NEC NECディスプレイソリューションズ シャープ 92
RVH ミュゼプラチナム、不二ビューティ G.Pホールディング 78

文:M&A Online編集部