日本市場で積極姿勢強める「JPモルガン」大量保有報告書の提出件数が2.2倍に

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JPモルガン・アセット・マネジメントが2018年1月1日から2018年11月7日までに提出した大量保有報告書の件数が、2017年(1月1日―12月31日)の2.2倍に達していることが分かった。

情報・通信に積極投資

2017年の大量保有報告書の提出件数は128件で、その内訳は保有割合を増やした企業が32社、新規保有が25社、保有割合を減らした企業が71社だった。

これに対し2018年(1月1日-11月7日)の大量保有報告書の提出件数は281件で、その内訳は保有割合を増やした企業が117社、新規保有が50社、保有割合を減らした企業が117社となった。

2018年に保有割合を増やした企業は2017年の3.7倍と大きく増え、新規保有も2倍に膨らんだ。保有割合を減らした企業も増えたものの1.6倍にとどまった。

新規保有した50社の業種は情報・通信が12社で全体の24%を占め、次いでサービスの9社(構成比は18%)、医薬の6社(同12%)の順となった。この上位3業種で全体の半分を超える54%を占めた。

保有割合の増減と新規保有

増加 新規 減少 合計
2017年 32 25 71 128
2018年 117 50 117 284
増減倍率 3.7倍 2倍 1.6倍 2.2倍

JPモルガン・チェースの資産は288兆円

日本市場で買いの姿勢を強めているJPモルガン・アセット・マネジメントは、JPモルガン・チェースのグループ企業で、現在日本では、JPモルガン証券、JPモルガン・チェース銀行東京支店、JPモルガン・アセット・マネジメントの3社が事業を展開している。

JPモルガン・チェースは2兆6000億ドル(288兆円)の資産を有する金融サービス会社で、投資銀行業務のほか消費者、中小企業向けの金融サービス、商業銀行業務、金融取引処理、資産管理などを手がけている。

創業は1799年で、220年の歴史を持つ。この間1200以上の企業や機関が合併して、世界有数の規模になった。現在100以上の市場に拠点があり、世界で25万人以上の従業員を抱えている

インフラ投資に特徴があり、1833年にJPモルガン・チェースの前身の企業が、マンハッタンとブルックリンを結ぶ最初の橋の建設に必要な約1500万ドルの大半を提供した。

1904年には大西洋と太平洋を結ぶために建設されたパナマ運河に、4000万ドルを拠出。2014年にもデトロイトの経済を変革する取り組みを支援するために5年間で1億ドルを拠出した。

関東大震災の震災復興公債を引き受け

日本とのかかわりもインフラ投資がきっかけだった。関東大震災の翌年の1924年に日本政府が初めて発行した震災復興公債1億5000万ドルを引き受けた。この功績が認められ、1927年には当時の幹部が日本政府から勲章を授与されている。

その後日本での活動を拡大し、1947年にはJPモルガン・チェース銀行の前身であるチェース・ナショナル銀行が外国銀行として初めて東京支店を開設。

1961年にJ.P.モルガンの銀行部門であるモルガン銀行が東京に駐在員事務所を設立し、1969年にはモルガン銀行駐在員事務所を東京支店に昇格した。

1972年にはグローバルな資産運用の調査拠点として、J.P.モルガンが日本での活動を開始。1987年にはJ.P.モルガン証券会社東京支店を開設した。

JPモルガン・アセット・マネジメントの日本での受託資産総額は7兆6645億円(2017年12月末)に達している。今後どのような投資を行っていくのか。情報・通信にさらに重点投資するのか。今後の動きから目が離せない。

2018年に新規保有した企業の業種

業種 件数 割合
情報・通信 12 24%
サービス 9 18%
医薬品 6 12%
化学 3 6%
小売業 3 6%
電気機器 3 6%
卸売業 3 6%
金属製品 2 4%
建設 2 4%
証券 2 4%
その他製品 2 4%
機械 1 2%
精密機器 1 2%
その他金属 1 2%
合計 50 100%

文:M&A Online編集部