Web開発には欠かせない言語といえるJava Script。最近の買収事例を交えながら、非SEさんでも理解が進むよう人気アプリ開発者の鶏肋さんにわかりやすく解説してもらいました。
近年のJavaScriptに関わる企業買収事例として、 次の2件をご紹介します。いずれもNode.js開発企業であり、 クラウドサービスを提供しています。
年月 | 買収元 | 内容 |
---|---|---|
2015年9月 | IBM | Node.jsによるWeb API フレームワークを提供するStrongLoopを買収 |
2016年6月 | サムスン | Node.jsの開発企業でありクラウドサービスを提供するJoyentを買収 |
Node.js(ノードジェイエス)とは、 簡単にいうとサーバーサイドで動くJavaScript環境です。従来JavaScriptはWebブラウザ上で動くものでした。2009年にJoyent社のRyan DahlがNode.jsを開発したことで、 JavaScriptがサーバーサイドでも動くようになったのです。IBMが買収したStrongloopもまたNode.jsの開発に関わっている企業です。詳しくは「JavaScriptの歴史」という項目で後述しますので、 参照してください。
クラウドサービスについては、 【こっそり学ぶプログラミング言語】Rubyって何ですか?にてherokuを例に紹介しました。インターネット経由でソフトウェアを提供する仕組みだと考えていただければよいと思います。
まずはJavaScriptという言語について説明したいと思います。JavaScriptは、主にWebブラウザで実行されるスクリプトです。Webブラウザとは、Google ChromeやFireFox、Internet Explorer(Windows10からは Microsoft Edgeになりました)のことです。これらはみなさんのPC上で動いています。
一方、過去の連載でご紹介したRubyやPythonはインターネット上にあるWebサーバーで動いています。Webブラウザからリクエストを受け取ると、 サーバーはブラウザに対してコンテンツを送ります。(ちなみにM&A Online の場合はPHPというプログラミング言語が動いています。)これらはインターネットの向こう側、みなさんから遠いところで動いている言語です。
ただし、この役割分担が近年変わりました。Node.jsの登場で、JavaScriptがサーバー上で動くようになったのです。とはいえ、一旦は「JavaScriptはブラウザで動く」と理解していただいて良いと思います。
JavaScriptの主な用途は、動きのあるWebページを作ることです。クリックすると拡大する画像や、ポップアップを作るのにJavaScriptは使われています。M&A Onlineでは、PC版の検索フォームや、スマートフォン版のメニュー画面の挙動に使われています。
少し専門的な話をすると、JavaScriptはインタプリタ型のスクリプト言語です。RubyやPythonと同じで「書きやすく、手軽に実行できる」言語だと思ってください。
反対にJavaやC言語等のコンパイラ言語は、手軽ではないけれど実行が高速です。JavaとJavaScriptは名前が似ていますが全く別のプログラミング言語ですので、混同しないよう注意してください。
ここでJavaScriptの歴史を、簡単に説明します。
1995年、ウェブブラウザNetscape Navigator2.0にLiveScriptが実装されました。この時期Javaが流行していたため、LiveScriptはJavaScriptと改名されます。
翌年1996年MicrosoftがリリースしたInternet Explorer 3.0には類似のJScriptが実装されます。Flashもこのころ生まれ、動きのあるWebを実現するための技術が広まりました。2000年代前半までは、Flashが多く使われていました。
2005年のGoogle MapのリリースでJavaScriptが見直されます。マウスで地図を移動すると、移動先の地図データがシームレスに取得できるというところが画期的でした。なぜなら移動のたびにページを再読込しなくてもよいからです。
この技術はAjaxと呼ばれています。Ajaxの利用でより多様な表現が可能になり、JavaScriptが使われることが多くなりました。
2009年に、前述したサーバーで動くJavaScriptのNode.jsが登場します。これによりサーバー側、ブラウザ側ともJavaScriptだけでWebアプリケーションが作成できるようになりました。軽い処理を大量に実行することに向いています。例えばチャットアプリに向いています。
JavaScriptは動きのあるWebを作るために作られました。その後GoogleMapに代表される、再読込が不要なデータ通信を実現することで用途が拡大しました。これによりJavaScriptはブラウザ側で動く代表的な言語となります。
一方Node.jsの登場で、JavaScriptがサーバー上でも動くようになりました。細かい処理を大量に実行するチャットのようなアプリケーションの実装に使われるようになりました。これにより、JavaScriptはブラウザ上でもサーバー上でも動く言語になりました。
以上がJavaScriptの歴史の概要です。理解が深まったところで、改めてJavaScriptに関わる企業買収の事例をみてみましょう。
JavaScriptの概要と歴史を把握すると、企業買収事例の理解もしやすいと思います。例えばAppleが地図データ視覚化スタートアップ「Mapsense」を買収しましたが(2015年9月)、このような情報の視覚化にはブラウザ上で動くJavaScriptが向いています。
また冒頭で紹介した事例は、サーバーサイドで動くJavaScriptによるプロダクトです。これらを使う際はJavaScriptさえ覚えれば、ブラウザ側とサーバー側の両方のプログラムが書けるという利点がわかると思います。
年月 | 買収元 | 内容 |
---|---|---|
2015年9月 | IBM | Node.jsによるWeb API フレームワークを提供するStrongLoopを買収 |
2016年6月 | サムスン | Node.jsの開発企業でありクラウドサービスを提供するJoyentを買収 |
最後に初心者向けのおすすめの書籍をご紹介します。
おすすめ1 Head First JavaScript ―頭とからだで覚えるJavaScriptの基本
手を動かしながら楽しく学習できる書籍です。それでいて、一冊やりとげれば初心者を脱することができる内容になっています。プログラム未経験の方でも是非挑戦していただきたい入門書です。古い書籍ですが、サンプルコードは問題なく動きます。
おすすめ2 改訂新版JavaScript本格入門
最新の情報が書かれている書籍です。Head First JavaScriptを読んだ方は、こちらの書籍でキャッチアップするとよいと思います。
文:鶏肋/編集:M&A Online編集部