世界最大の流通企業アリババ、ジャックマーが次に見ている世界

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世界最大の流通企業アリババ、ジャックマーが次に見ている世界

中国Alibaba社(アリババ)のJack Ma(ジャックマー)氏を知らない、という人は少ないだろう。今や、アリババ社は年間流通総額50兆円を超え、世界No.1のEC(電子商取引)プラットフォームを提供している企業になった。

2015年の流通総額(※)は4,850億ドル(約51.9兆円)で、米小売り最大手であるウォルマートの16年の売上高4,821億ドルを上回り、世界最大の流通企業に。次にアリババが掲げている目標は「2020年度の総取引額6兆元(約108兆円)」である。

「アリババの正体を2016年度決算からひも解いた」を参考に内訳を紐解くと、8割の売上は国内C2CマーケットプレイスのTaobao(タオバオ)とB2CマーケットプレイスのTmall(Tモール)である。ただ、50兆円という流通総額にはB2Bのアリババや、越境ECのアリエクスプレスは含まれていないようだ。これらも含めると、約60兆円になる。

更に見逃してはいけない点として、決済サービスのAlipay(アリペイ)の存在である。現在、Alipayは別会社化され、独自に上場へ向けて動いている。2017年に上場すると言われており、上場した際には6兆円から10兆円になるという見方が多い。

Alipayは別会社のため、アリババ社の売り上げとしてはもちろん入っていない。Taobao(タオバオ)やTmall(Tモール)などのeコマースを始め、全てのアリババの取引ではこのAlipayが使用されており、中国ではそれ以外のゲーム、航空、トラベル、保険、教育、公共料金などの幅広い業界でもAlipayが使用されているため、その総額は数十兆円にも及ぶだろう。これらアリババ社の総流通総額+Alipay売り上げを合算すると、いくらになるのだろうか・・・凄まじい。

※流通総額と売上高について

ウォルマートの「年間売上高」とアリババの「年間総流通総額」は同意。よく、いろんな記事でこの流通総額と売上高が一緒に語られていることがあるが、ECでいう「流通総額」は消費者が購入した総額を指し、ECプラットフォーム運営者はその売り上げから大体10%~30%程度の手数料を受け取り、それが「売上高」に当たる。そこから人件費やらなんやら引いて純利益となる。つまり、ウォルマートでいう売上高は同じく消費者が購入した総額であり、そこから仕入価格やなんやらを引いて純利益となる。

楽天<4755>の流通総額 (2014-2016年)
出所:https://corp.rakuten.co.jp/investors/financial/indicators.html

ちなみに日本を見てみると、Amazonの年間流通総額は1兆円。業界最大手の楽天では直近の年間流通総額は約3兆円(2.897兆円)、売上高は7000億円、純利益は37.1%減の444億円である。

アリババと比較するとアリババは楽天の約20倍。中国と日本を人口比で比較すると、中国:約13.5億人、日本:約1.3億人と約10倍の差。この数字を見る限り、中国人がどれだけECを使用して買い物しているかがわかる。

また、三木谷さんは「ビジョン2020」を発表、20年12月期の流通総額の目標は5.2兆円、売上高は1兆7000億円を目指すのこと。

次なる未来、世界電子商取引構想

ジャックマーが次に目指しているのは、eWTP(Electronic World Trade Platform)というグローバルに世界を繋げる世界電子商取引プラットフォームの構築である。これは、現状のアリババをみてわかるように売り上げの9割は中国国内であり、ここから飛躍するには世界しかない。ジャックマーの記事や書籍を見ても、彼は昔から ”Small is beautifull” という言葉を唱えてきた。各国の中小企業にチャンスを与えたいということらしい。今まさにこの言葉を体現すべく、グローバルプラットフォームを構築しようとしている。

アリババグループ取締役局の馬雲(ジャック・マー)会長は、今回のG20ビジネスサミット(B20)中小企業発展ワーキンググループのリーダーを務めている。同ワーキンググループはE–WTPという世界電子商取引プラットフォーム構築を提唱した。その構想とビジョンは、これまでグローバル化に参与する機会のなかった中小企業、発展途上国、女性・若者が世界市場に参加し、携帯電話で世界各地の商品やサービスを売買できるようにして、中小企業の活力を最大限にかき立て、より多くの若者の就職、創業、富裕化を助けることである。
「以前は、中小企業サポートは見込みが薄かった。しかし今後、このE–WTPプラットフォームには大いに取り組む値打ちがある。すべての国の中小企業に国際貿易の機会を提供することができるだろう。馬雲氏は30数カ国を訪れ、電子商取引プラットフォームのメリットをPRしてきた」
http://japanese.beijingreview.com.cn/economy/201609/t20160903_800066602.html

※本記事は、細川亮氏の許可を得てブログより引用、一部内容をM&A Onlineにて編集して公開しております。

文:SSQQB Inc. 細川亮/編集:M&A Online編集部