安倍元首相「国葬」2億円超は確実、では「社葬」はいくらかかる

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社葬にかかる費用はいくら?(Photo By Reuters)

安倍晋三元首相の国葬が9月27日に開かれることになった。政府は国葬にかかる経費について「物価情勢や新型コロナウイルス対策費なども勘案しながら、真に必要な経費となるよう努める」(松野博一官房長官)と述べるに留まり、予算は未確定だ。

トップ企業の社葬費用でも政治家合同葬の3分の1以下

2020年に開かれた中曽根康弘元首相の内閣・自民党合同葬では9643万円の公費(当初予算の予備費)を含む1億9300万円がかかっており、安倍元首相の国葬では2億円を超えるのは確実だ。政界に国葬があれば経済界には社葬あり。社葬にかかる経費はどれぐらいなのか?

社葬の経費は参列者数に左右される。大企業で取引先が多ければ、それだけ大規模となり経費がかさむ。一般の社葬では参列者1人当たり1万〜2万円が相場という。500人規模の社葬ならば約500~2000万円かかる計算だ。

2013年11月に開かれた豊田英二トヨタ自動車最高顧問の「お別れの会」には、政財官界から約3100人が出席した。社葬経費は明らかにされていないが、豊田家出身者で「トヨタ中興の祖」と呼ばれた功労者だけに1人当たり2万円以上のコストをかけたのは間違いないだろう。そうなると6000万円を超えたと考えてよさそうだ。

国内トップ企業の社葬にもかかわらず、かかった経費は政治家の国葬や合同葬に比べると3分の1以下とつつましい。

社葬費用は福利厚生費として損金計上できる

この「お別れの会」はトヨタ自動車や豊田自動織機などトヨタグループ17社が開いた。社葬費用はそれぞれの会社が分担したのだろうが、損金として認められるものも多い。社葬費用は福利厚生費として計上可能だ。

ホールやホテルなどの葬儀会場使用料や会場設営費、僧侶らへのお布施、生花・祭壇費、社葬通知状作成費用、会葬御礼、会葬御礼品、飲食費、告知広告費などが対象となる。一方、戒名料や納骨費などは遺族・親族が負担するのが一般通念とみなされ、企業の損金としては認められない。

社葬で気になるのは「香典」だ。参列者が多いだけにそれなりの額になりそうだが、会社側が受け取ると「収入」として計上され、税務上ややこしくなるので辞退するケースがほとんどという。つまり社葬費用は完全に企業側の「持ち出し」となる。

葬儀会社のユニクエスト(大阪市)の調査によると、過去1年間の個人の葬儀費用は一般葬で191万円、家族や親族のみが参列する家族葬で110万円という。政治家の国葬や合同葬は個人の葬儀の100人分以上の経費をかけることになる。これを高いと見るか、安いと見るか…。

文:M&A Online編集部

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