ぐるなび<2440>が運営するグルメメディアが、2023年10月2日から「楽天ぐるなび」に名称を変更します。楽天ポイントが貯まるサイトという認知を拡大し、楽天会員にとって利便性の高いサービスであることを訴求するというもの。かつてグルメメディアの王者だったぐるなびが、コロナ禍を経てブランド力を失った象徴的なニュースです。
ぐるなびの総有料加盟店はかつて6万を超えていましたが、現在は4万2000程度まで減少しています。2023年3月期の売上高は122億9600万円で、全盛期の3割程度まで縮小しました。
中古厨房機器販売のテンポスホールディングス<2751>に社員を出向させて労務費削減を図るなど、コストカットに奔走していますが、黒字化はできていません。
ぐるなび単独での業績回復は困難な状況となってきました。この記事では以下の情報が得られます。
・ぐるなびの業績推移
・ぐるなびの新たなビジネス展開
2022年3月にまん延防止等重点措置が解除され、飲食店は通常通り営業できるようになりました。しかし、ぐるなびは2023年3月期の売上高が、コロナ禍の2021年3月期、2022年3月期の水準を依然として割り込んでいます。
ぐるなびは飲食店から徴収する月額1万円からの広告掲載費に業績が支えられており、加盟店の減少が売上に直結します。新たな収益柱を構築すべく、2022年3月期にデリバリー・テイクアウトサービスを立ち上げましたが、わずか1年ほどで撤退しました。
2023年3月期で3期連続の営業赤字を計上。2024年3月期も7億円の営業損失を予想しています。4期連続の赤字となる見通しです。
売上回復が見込めないぐるなびは、大胆なコストカットを進めています。
2024年3月期第1四半期の原価は8億5100万円で、前年同期間比35.3%も縮小しています。ぐるなびは、採用の抑制、従業員の自然減、協業先企業への出向拡大によって労務費が減少したと説明しています。
ぐるなびは2022年5月に中古厨房機器を販売するテンポスホールディングスと業務提携契約を締結しました。ぐるなびの営業人員をテンポスに出向させ、テンポスバスターズを訪れる飲食店経営者に対し、モバイルオーダーシステムの提案を行うというもの。ぐるなびはかつてグルメメディアのブランド力を武器とした営業力の強い会社でしたが、今はその影もありません。
テンポスは2023年4月期において、ぐるなびからの営業人員111名を受け入れたと発表しています。ぐるなびの2023年3月期の従業員数は831名。13.4%の従業員がテンポスに出向していることになります。
ぐるなびは従業員の自然減が発生していると明らかにしていることからも、出向によって社員のモチベーションが下がっているのは間違いないでしょう。中長期的に営業力が弱体化する恐れもあります。
現在、ぐるなびが販売強化しているサービスがモバイルオーダーシステム。2021年8月にシステム開発のSHIFT<3697>と資本業務提携契約を締結。SHIFTが第三者割当増資を引き受けて保有割合は4.1%となり、第4位の大株主となりました。
ぐるなびは2021年6月にモバイルオーダーシステム「ぐるなびFineOrder」を本格リリースしています。このシステムは飲食店の店内注文とテイクアウト注文機能を備えたモバイルオーダーサービスで、顧客はアプリをダウンロードすることなくQRコードを読み取るだけで決済ができます。居酒屋店を運営するチムニー<3178>やSFPホールディングス<3198>など、2023年6月末の段階で52社が契約しています。
このサービスは2023年3月から楽天ポイントとの連携を開始しました。
ぐるなびは2018年7月に楽天グループ<4755>と資本業務提携契約を締結。現在の取締役会長・滝久雄氏が保有する株式の取得や、第三者割当増資を段階的に引き受け、楽天は16.6%の株式を保有する筆頭株主になりました。ぐるなびは楽天の持分法適用関連会社です。
ぐるなびは2019年7月に杉原章郎氏が社長に就任。杉原氏は楽天の常務などを務めた経験があり、この人事でぐるなびは楽天色が一層強まりました。2023年10月2日からはサイト名が「楽天ぐるなび」へと変更になります。
ぐるなびは、宴会場所を見つけるサービスとしての毛色が強いグルメサイトでした。
食べログの売上高はコロナ前の水準まで回復しています。食べログは食事をする場所を探し、その評判を確認するメディアとしての役割が強く、日常食やカフェ利用など外食に関連する様々なシーンで活用されています。
コロナ前は役割の棲み分けができていましたが、ぐるなびは宴会需要が縮小した影響を真正面から受けました。
■食べログ事業売上高推移
ぐるなびは、メディアの集客力においては楽天、飲食店への自社サービスの販売チャネルはテンポスバスターズに強く依存しています。単独での再起は難しく、冬の時代はしばらく続きそうです。
麦とホップ@ビールを飲む理由