【ドイツ銀行】知っているようで知らない、外資系金融機関まとめ<5>

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新聞やテレビのニュースで名前は知っているけれど、街中で店舗を目にすることはあまりないし、敷居もちょっと高そう。そんな「知っているようで知らない、外資系金融機関」シリーズの第5回はドイツ最大の銀行である「ドイツ銀行」です。

日本進出(横浜)は創業2年後のなんと1872年(明治5年)

ドイツ銀行は外国貿易に特化した銀行として1870年にベルリンで創業しました。2年後の1872年(明治5年)に早くも、横浜と上海に支店を開設しています。さらにその翌年の1873年にはロンドン支店も開設しました。

ところが経営はうまくいかず、横浜支店と上海支店を開業3年後に閉鎖、それ以降はドイツ国内企業への投資に重心を移していきました。その後、紆余曲折を経てドイツ最大の銀行に成長。現在は世界中の主要な国や地域で事業を展開しています。

ただ、このところ業績は厳しい状況にあります。2017年度は3年ぶりに税引前損益が黒字になりましたが、税引後では2017年末に計上した米国税制改革に関連する費用が足を引っ張り、赤字となっています。

日本では銀行のほか、投信、証券などで4法人が活動

日本では「ドイツ銀行東京支店」「ドイチェ・アセット・マネジメント」「ドイチェ信託」「ドイツ証券」の主要4法人があり、証券・投資銀行、コーポレート・バンキング、資産運用など広範なサービスを提供しています。

ドイツ銀行東京支店は1971年の設立で、ドイツ銀行の日本拠点として外国為替、キャッシュ・マネジメント、貿易金融を含むコーポレート・バンキング・サービス全般、不動産ファイナンス、社債・証券管理サービスを提供しています。

次いで日本に開設したのがドイチェ・アセット・マネジメントで、1985年に営業を始めました。ドイツ銀行グループの資産運用部門の日本拠点として、主に個人投資家を対象とした投資信託ビジネスと公的年金、企業年金などを対象とした資産運用ビジネスを展開しています。

2005年にはドイチェ信託とドイツ証券が相次いで開設しました。ドイチェ信託は有限会社を組織変更して設立。ドイツ銀行グループの法人信託サービス部門の日本拠点として、信託の受託、社債登録機関の業務のほか、キャッシュ・マネジメント、SPC(特定目的会社)の運営代理人業務など、内外の資本市場での社債発行や証券化のアレンジに伴うサービスを提供しています。

一方、ドイツ証券はドイツ銀行証券業務の日本拠点で、東京、大阪両証券取引所の正会員となっています。株式、債券のセールス・トレーディング、資金調達、M&Aなど、ホールセール(事業法人・機関投資家など)向けに幅広い証券ビジネスを展開しています。

ドイツ銀行の沿革

沿革
1870 ドイツ銀行がベルリンで創業
1872 ドイツ銀行横浜支店を開設
1875 ドイツ銀行横浜支店を閉鎖
1971 ドイツ銀行東京支店を開設
1985 ドイチェ・アセット・マネジメント(東京)を開設
2005 ドイチェ信託(東京)を開設
2005 ドイツ証券(東京)を開設
2017 ドイツ銀行の税引き前損益が3年ぶりに黒字化2012年にはその年最大のM&Aに参画


調査会社トムソン・ロイターのまとめによるとドイツ銀行が2012年以降に日本企業のM&Aにかかわったのは3件あります。2012年はソフトバンク(現ソフトバンクグループ)<9984>が米国の携帯電話会社、スプリント・ネクステルを買収する際に、ソフトバンク側のアドバイザーとして、レイングループ、みずほ証券とともにM&Aを取りまとめました。買収額は1兆5845億円で、同年のM&A案件では最も大きな出来事となりました。

2015年に日本郵便<6178>がオーストラリアの物流大手、トールホールディングスを買収した際には、トールホールディングス側のアドバイザーとして参画。買収額は同年の4位となっています。

2017年、米国キー・セーフティー・システムズ(KSS)が欠陥エアバック問題で経営難に陥っていたタカタを買収した際は、KSS側のアドバイザーとしてかかわりました。買収額は1750億円で、同年の9位の規模でした。

ドイツ銀行が日本企業関連のM&Aアドバイザーとなった主な案件

被買収側 買収側 買収額
2017 タカタ キー・セーフティー・システムズ 1750億円
2015 ※トールホールディングス 日本郵便 7145億円
2012 スプリント・ネクステル ソフトバンク 1兆5845億円

(表はトムソン・ロイターの資料を基に作成。※は被買収側のアドバイザー、その他は買収側のアドバイザー

ソフトバンクとの関係は?今後もありそう大型M&A

ドイツ銀行は2012年以前にも大型のM&Aにかかわっています。2006年にソフトバンクがボーダフォン日本法人(現ソフトバンク)を買収する際は、ソフトバンク側のアドバイザーとして、みずほコーポレート銀行やゴールドマン・サックス証券とともに、M&Aをまとめました。買収額が当時、日本最大級となったため、大きな関心を集めました。ドイツ銀行とソフトバンクとの関係は強いようで、今後も大型のM&Aが実現する可能性は高そうです。

文:M&A Online編集部