GYAO!だけじゃない、YouTubeも…動画配信サービスの黄昏

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動画配信サービスに「冬の時代」がやって来た。国内動画配信大手のGYAO!(東京都千代田区)が、2023年3月末で全サービスを終了すると発表したのだ。2月13日に「GYAO!ストア」での販売を終了し、3月31日の17時以降は購入済みの商品も視聴できなくなる。「老舗」すら立ち行かなくなるほど、動画配信ビジネスは苦境に立たされている。

老舗の「GYAO!」が3月末で終了

GYAO!は、2005年4月にUSEN(東京都品川区)が立ち上げた無料映像配信サービス。2009年に「Yahoo!動画」を提供していたヤフー(東京都千代田区)の子会社となり、両社の動画サービスが統合された。視聴作品ごとに課金する「GYAO!ストア」はあったが、動画配信のサブスクリプション(月額使い放題)化の流れを受けて、2016年2月に月額見放題プラン「プレミアムGYAO!」をスタートする。

ところが、すでにhuluやネットフリックスをはじめとする動画サブスク配信の先行組が存在し、視聴可能なコンテンツも似通っていた。後発組だった「プレミアムGYAO!」の契約数は伸び悩む。2年後の2018年2月には同サービスを終了した。「GYAO! ストア」は残したものの、無料の映像配信サービスに力を入れることになる。

しかし、無料配信サービスもテレビ朝日系の「AbemaTV」(一部有料)や民放各局の「TVer」などに押されて苦戦。そもそもサブスク配信モデルを断念した時点で、GYAO!の命運は尽きたと言えるだろう。無料サービスモデルでは広告収入に依存することになるが、動画広告はYouTubeやTikTokといったグローバル動画プラットフォームが圧倒的に強く、GYAO!が参入できる余地はなかったからだ。

巨大動画プラットフォームといえども、安穏とはしていられない。YouTubeは2022年7−9月期に創業以来初めて広告売上高が前年同期を下回った。マイナス幅は1.8%と小さかったが、親会社の米アルファベットは直ちに動いた。YouTube内で商品を購買できる「ライブショッピング」の強化などの増収策を打ち出した。

ただ、そうした取り組みはYouTubeの増収にはつながっても、視聴者を呼び寄せる効果は期待できない。人気YouTuberからも、このところの視聴回数の激減を指摘する声が上がっており、ネット上で「動画離れ」が進んでいることが浮き彫りになっている。

退場か、業界再編か…動画配信事業者が迫られる決断

海外の大手動画サブスクサービスも相次いで大幅な値上げに踏み切った。米アップルは「Apple TV」の月額料金を従来の1.5倍となる月額900円に引き上げた。スポーツ動画サブスクの「DAZN」は同1925円から同3000円へ一気に引き上げる。

こうした値上げは、本国でも実施された。動画サブスク世界最大手の米ネットフリックスは北米で値上げに踏み切り、一般的な「スタンダードプラン」は創業時の2倍近い金額になっている。同社は2022年から加入者数が減少に転じており、低料金の広告付きプラン投入やID・パスワードの共有禁止を強化するなど、利益維持に全力を注ぐ。だが、こうしたユーザーにとってメリットがない増益策は顧客の反発を受け、さらなる契約者の減少を招きかねない。

無料にせよ有料にせよ、動画配信は同じコンテンツがほとんどで、差別化ができなくなっている。こうした状況を打開しようと同業界では自主制作コンテンツを充実させたり、サッカーワールドカップのようなキラーコンテンツの放送権を高値で競り落としたりする動きが活発だ。

しかし、これが動画サブスク事業者の高コスト体質を生み、市場が飽和して加入者が減少すると直ちに収益を圧迫する要因となっている。このところの動画サブスクの値上げラッシュも、それが要因だ。

もはや市場が飽和した以上、事業者を整理するしかない。GYAO!のような「退場者」に加えて、グローバルなM&Aによる動画配信サービスの業界再編が近づいている。

文:M&A Online編集部

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