着実な成長の「イオン」と、急拡大の「セブン&アイ」攻防の行方は?

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東京・大手町のセブン-イレブンの店舗

国内小売り大手のセブン&アイ・ホールディングス<3382>とイオン<8267>の業績の差が鮮明になってきた。

2023年2月期の当初の業績予想はイオンの売上高9兆円、営業利益2100億-2200億円に対し、セブン&アイの予想は売上高9兆6530億円、営業利益4300億円で、もともと差はあった。そこにセブン&アイが期中に業績予想を3度上方修正したことから、大きな差となって着地したのだ。

2024年2月期の予想ではこの差が若干縮まるものの、売り上げで1兆7540億円、営業利益で2930億円もの開きとなる。このまま差は開く一方なのか。イオンはコロナ禍の2021年2月期まではセブン&アイを売上高で上回る業界トップの座にあった。イオンの返り咲きはあるのだろうか。

当初予想よりも売り上げが2兆円上振れ

セブン&アイは2023年2月期の業績予想を第1四半期から第3四半期まで決算発表ごと毎回上方修正してきた。第4四半期を含む2023年2月期の実績も第3四半期の予想と比べると売上高は7億円ほど届かなったものの、営業利益は65億円上振れし、売上高11兆8113億300万円、営業利益5065億2100万円で着地した。

当初から、2021年5月に買収した米国のコンビニエンスストアのSpeedwayが業績に寄与すると見て、前年(2022年2月期)実績よりも10.3%の増収、10.9%の営業増益を見込んでいた。

これに加えてウクライナ情勢に伴う原油価格の高騰により、米国子会社の7-Eleven, Inc.が手がけているガソリン小売りの売り上げが大きく伸び、これに伴って営業利益も伸長したことから、売上高は当初予想よりも2兆円以上上振れし、営業利益も765億円ほど増えた。

【セブン&アイ・ホールディングスの2023年2月期の業績予想修正の推移】単位:億円、2023年2月期は実績

売り上げが加工最高を更新

一方、イオンの2023年2月期は売上高が9兆1168億2300万円で、当初予想よりも1168億円ほどの増収となった。売上高が9兆円を超えるのは初めてで、過去最高を更新した。

同期の営業利益は2097億8300万円で、当初予想に2億円ほど足りなかったが、ほぼ計画通りとなった。売上高、営業利益を前年度と比べると4.6%増収、20.3%の増益であり、堅調に推移したといえる。

M&Aを推進したヘルス&ウエルネス事業が増収増益となったほか、ネットスーパーやプライベートブランドの拡充などに取り組んだ総合スーパー事業が黒字に転換し、スーパーマーケット事業でもフジを子会社化したことになどで増収を実現した。

2024年2月については売上高9兆4000億円(前年度比3.1%増)、営業利益2200億円(同4.9%増)と着実な成長を見込む。

【イオンの業績推移】単位:億円、2024年2月期は予想

コンビニ事業に注力

セブン&アイはこれまで目指してきた総合小売業としての体制の見直しを進めており、傘下の百貨店「そごう・西武」(東京都豊島区)の全株式を米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループに譲渡することを決めており、2023年4月6日時点で「協議を重ねている」としている。

また総合スーパーのイトーヨーカ堂126店舗(2023年2月末時点)のうち14店舗の閉鎖を決めており、2026年2月末には93店舗まで削減するという。これらはいずれも減収要因となる。

その一方で、同社は米国でSpeedwayに次ぐM&Aを計画しており、コンビニ事業に注力することで成長を加速する戦略を掲げている。

着実な成長を目指すイオンとM&Aで成長を加速するセブン&アイの攻防は当面続くことになりそうだ。

【セブン&アイ・ホールディングスの業績推移】単位:億円、2024年2月期は予想

文:M&A Online