「磯丸水産」「焼鳥IPPON」「ブロンコビリー」コロナ禍の中、回復軌道に乗るのはどんな飲食店

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厳しい経営環境が続く飲食業界の中にあって、業績が回復する企業が増えつつある。2021年10月14、15日の2日間に決算発表した企業の中だけでも、レストランや居酒屋などを展開するクリエイト・レストランツ・ホールディングス<3387>や、DDホールディングス<3073>、ステーキ、ハンバーグ専門店を手がけるブロンコビリー<3091>などが黒字転換する見込みだ。

東京商工リサーチが10月7日に発表した2021年度上半期(4-9月)の飲食業界の倒産状況によると、コロナ関連融資や給付金、協力金などの支援策によって、倒産件数そのものは5年ぶりに減少したものの、コロナ関連倒産が5割近くを占め、相変わらずコロナ禍が飲食店の経営を圧迫している状況に変わりはなかった。

すでに牛丼店や回転寿司店などは回復軌道に乗っており、これに続き業績回復を見込む飲食店の実態は?

1年で黒字転換

「磯丸水産」や「かごの屋」などを展開するクリエイト・レストランツ・ホールディングスは、10月14日に業績を上方修正した。

売上高は緊急事態宣言の延長などによる影響で、前回予想を下回る見込みだが、利益はコスト削減効果が現れてきたほか、協力金や雇用調整助成金などが当初予想を上回り、営業、税引き前、当期の全段階で2倍前後の増益となる。

この結果、2022年2月期は、営業損益108億円(前年度は141億8100万円の赤字)、税引き前損益102億円(同150億2100万円の赤字)、当期損益65億円(同138億7400万円の赤字)と一年で黒字に転換する。

【クリエイト・レストランツ・ホールディングスの業績推移】単位:億円、2022年2月期は予想

2020年2月期 2021年2月期 2022年2月期
売上高 1393.28 744.25 912
営業損益 33.78 △141.81 108
税引き前損益 30.12 △150.21 102
当期損益 12.05 △138.74 65

「焼鳥IPPON」や「kawara CAFE&DINING」などを展開するDDホールディングスも、2022年2月期は1年で黒字転換する見通しだ。

前年度はコロナ禍で、売り上げが6割ほど減少し、100億円近い営業赤字に陥っていたが、テイクアウト・デリバリーの導入やランチ業態を別業態で運営するなどの取り組みで、復活を目指す計画だ。

半年が過ぎた2022年2月期第2四半期決算を発表した10月15日時点で、この計画に変更はなく、通期の売上高は332億9700万円(前年度比41.8%増)、営業損益は3億1800万円(前年度は97億300万円の赤字)、経常損益は2億9700万円(同90億3400万円の赤字)、当期損益2億3000万円(同85億700万円の赤字)を見込む。

【DDホールディングスの業績推移】単位:億円、2022年2月期は予想

2020年2月期 2021年2月期 2022年2月期
売上高 573.69 234.83 332.97
営業損益 28.46 △97.03 3.18
経常損益 29.16 △90.34 2.97
当期損益 14.42 △85.07 2.3

ブロンコビリーは、2020年12月期に6億円ほどの当期赤字に陥っていたが、2021年12月期は9億円の当期黒字を見込む。

緊急事態宣言の発出などで売り上げが伸び悩み、営業利益は当初予想よりも減益となるが、それでも前年度と比べると23%ほどの増益となり、経常利益は協力金や給付金などにより前年度の5倍強に拡大する。

【ブロンコビリーの業績推移】単位:億円、2021年12月期は予想

2019年12月期 2020年12月期 2021年12月期
売上高 223.24 172.72 162
営業損益 23.95 1.62 2
経常損益 24.58 2.5 13
当期損益 15.44 △5.88 9

倒産件数は5年ぶりに減少

東京商工リサーチによると、飲食業は人件費の高騰などで2016年度上半期(4-9月)以降、倒産が増加傾向をたどっており、ここにコロナ禍が加わり、2020年度上期は過去30年間で最多(436件)を記録していた。

2021年度上半期はコロナ関連融資や給付金、協力金などの支援策によって、倒産件数(338件)は上半期としては2016年以来、5年ぶりの減少となったものの、コロナ関連倒産(158件)が全体の5割近くを占め、引き続きコロナ関連の倒産は高い水準にある。

倒産の内訳は「酒場、ビヤホール(居酒屋)」(76件、うち新型コロナ関連倒産42件)、「バー、キャバレー,ナイトクラブ」(32件、同14件)が多かった。

緊急事態宣言が解除され、11月以降は移動制限も緩和される見通しの中、今後は3社のように経費削減や業態転換などが進むことで、業績が回復に向かう企業は増えていきそうだ。

文:M&A Online編集部