イギリス発のカフェブランド「コスタコーヒー」の国内1号店「コスタコーヒー CIRCLES渋谷店」が8月4日にオープンしました。9月1日に大手町、10月6日に銀座店がオープンする予定です。チェーン展開による規模拡大を視野に入れています。
仕掛けたのは双日<2768>とロイヤルホールディングス<8179>の合弁会社双日ロイヤルカフェ(東京都渋谷区)。2023年1月に双日60%、ロイヤルホールディングス40%の出資比率で設立した会社です。
セルフサービス型のカフェはスターバックス、タリーズコーヒーなど、強力なライバルがひしめく苛烈な市場です。コスタコーヒーに勝算はあるのでしょうか?
この記事では以下の情報が得られます。
・コスタコーヒーの概要
・主な国内カフェチェーンの店舗数
コスタコーヒーは1971年にロンドンで誕生。現在、イギリスとアイルランドで2,800店舗、その他の国々で1,100店舗以上を展開しているカフェチェーンです。2018年にアメリカの飲料大手コカ・コーラが51億ドルで買収。国内では日本コカ・コーラ(東京都渋谷区)が、ペットボトル入りのコーヒー飲料を2021年4月から販売しています。
ファミリーレストランだけでなく、ホテルの運営も行っていたロイヤルホールディングスは、新型コロナウイルス感染拡大の影響を激しく受けました。2020年12月期は275億3,200万円もの純損失(前年同期は19億2,300万円の純利益)を計上。自己資本比率はわずか1年で49.6%から19.7%まで急低下します。
救世主となったのが双日。2021年2月に第三者割当増資で、ロイヤルホールディングスの株式13.30%を100億円で取得、更に新株予約権を引き受けました。両社は戦略的パートナー関係を構築します。
2023年1月に設立した双日ロイヤルカフェは、その年の2月にイギリスのコスタインターナショナルから日本市場での店舗開発・運営に関わる独占的フランチャイズ権を取得。コーヒーチェーンのFC展開に乗り出しました。
ロイヤルホールディングスは、「ロイヤルガーデンカフェ」「スタンダードコーヒー」「ラッキーロッキーチキン」など、カフェやファーストフード店の運営実績があり、すでにノウハウを構築しています。双日は2002年10月にTOBでなか卯(東京都港区)を子会社化しましたが、2005年ゼンショーホールディングス<7550>に持株を売却しました。それからは目立った飲食店チェーンの経営に関わっておらず、コスタコーヒーのチェーン化は成功させたいでしょう。
コスタコーヒーはラテやカプチーノが442円、エスプレッソのシングルが383円。コーヒーの他に抹茶フラッペやフルーツフラッペ、オリジナルハーブティーをラインナップするなど、価格やメニューはスターバックスと重なります。渋谷の1号店は、スターバックス渋谷2丁目店の隣に出店していることからも、競合として意識しているのは間違いないでしょう。
ただし、1号店と2号店ともにイートインスペースは設けられておらず、テイクアウトが基本。居心地の良さで選ばれるスターバックスとはターゲットが異なります。
3号店の銀座店はフラッグシップ店に位置付けられており、この店舗がチェーン展開の本丸でしょう。渋谷店や大手町店はテストマーケティングという意味合いが強いと考えられます。
厚生労働省によると、日本の喫茶店業界のコロナ前の市場規模は1兆円から1.2兆円で、20年間ほぼ横這いで推移。店舗数は2008年の29万件をピークに減少に転じており、2017年の時点で20万件ほどとなっています。コスタコーヒーの新規参入は、既存のプレーヤーにとって市場の奪い合いを加速させる脅威となります。
国内の店舗数はスターバックスが1,846で圧倒的。ドトールが1,275で、その後を追いかけています。
■カフェチェーン店舗数
スターバックス | 1,846 |
ドトールコーヒー | 1,275 |
コメダ珈琲 | 968 |
タリーズコーヒー | 700 |
サンマルクカフェ | 353 |
※公式ホームページより筆者作成
コスタコーヒーは価格面の違いから、ドトールやサンマルクカフェの脅威にはならないでしょう。フルサービス型のコメダ珈琲も競合にはなりません。店舗数1位のスターバックスと、4位のタリーズコーヒーがライバルとなります。
コスタコーヒーの一番の強みが知名度。日本コカ・コーラはコスタコーヒーの広告キャンペーンに米倉涼子さんを起用。2022年に調査を行ったところ、ブランド認知度が全世代で6割になったと明かしています。メインターゲットの30~50代の男女に至っては7割に及んでいるとしています。
店舗運営において、ブランド認知が高いことは相当な追い風。渋谷店はオープン前から行列ができていたことからも、顧客の実店舗への期待度が高まってる様子がわかります。
コスタコーヒーは、すでにブランド構築とメニュー開発が済んでいます。ゼロから立ち上げるよりも圧倒的に有利なポジションにいます。店舗拡大のポイントは人材獲得と育成になるでしょう。
高単価のカフェは、居心地の良さが顧客のブランド選好因子に強く影響することが分かっています。掃除や接客、提供スピードなどオペレーションの難易度が高いのです。スターバックスは長い時間をかけて人材を育成し、ブランド力を磨き込みました。アルバイトの獲得難と時給高騰という逆風下の中で、コスタコーヒーが人材獲得や育成に成功すれば、カフェチェーンの勢力図を大きく塗り替えることができるかもしれません。
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