結婚式場にも波及するコロナ倒産 大手ウエディング企業への影響は

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民事再生法の適用を申請したラビアンローゼの表参道ドレスショップ

新型コロナウイルスがウエディング業界にも深刻な影響を与えています。結婚式に関連する施設やサービスのコロナ倒産件数は5件。静岡県浜松市の人気結婚式場「ウエディング・セントラルパーク」を運営し、表参道にもドレスショップを構えるラビアンローゼ(本社:静岡県浜松市)が民事再生法の適用を申請しました。

上場企業への影響も甚大。レストランウエディングの名門「代官山タブローズ」などを運営するグローバルダイニング<7625>は、継続企業の前提に関する事項の注記(GC注記)が付きました。テイクアンドギヴ・ニーズ<4331>は、3月に予定していた結婚式1,200組のうち、600組が延期となっています。

この記事は新型コロナウイルスがウエディング企業に与えた影響をまとめたものです。以下の情報が得られます。

・結婚式場のコロナ倒産
・役員報酬の減額、業績の下方修正など上場企業への影響

式場のリニューアルもむなしく破産したロイヤルオークホテル

大型倒産となったホテルWBF(本社:大阪府大阪市)が運営する「ホテルWBFグランデ旭川」は、イオンモール旭川駅前店で結婚式場の紹介や案内をする「ブライズなび」と提携して結婚式の受注をしていました。宿泊、挙式・宴会、レストランのトリプルパンチを受けるホテルは、特に厳しい戦いを強いられています。

【ウエディング関連企業のコロナ倒産】

事業停止または破産手続き開始日 企業名 所在地 ブランド・施設名 事業内容 負債総額
3月2日 ルミナスクルーズ 兵庫県神戸市 ルミナス神戸2 ランチ、ディナー、ウエディングなどの観光クルーズ船を運航 12億4300万円
4月21日 ラビアンローゼ 静岡県浜松市 ラビアンローゼ(ドレスサロン)、ウエディング・セントラルパーク(結婚式場) 貸衣装、結婚式場の運営、ハネムーンなどの旅行代理店業 33億円
4月24日 人吉観光交通 熊本県人吉市 アンジェリーク平安 結婚式場の運営、タクシーの運行 7億円
4月27日 WBFホテル&リゾーツ 大阪府大阪市 ホテルWBF ホテルの運営
160億円
4月28日 ロイヤルオークリゾート 滋賀県大津市 ロイヤルオークホテルスパ&ガーデンズ ホテルの運営 50億円

ウエディングビジネスを主軸とした会社で、民事再生へと至った最初のケースがラビアンローゼでした。1981年創業で、ウエディングドレスのレンタルがメイン事業。ドレスショップは本拠地浜松だけでなく、表参道や名古屋、ハワイにまで拡大していました。また、静岡県浜松市の「ウエディング・セントラルパーク」や愛知県岡崎市の「スウィートローゼスクラブ岡崎」などのゲストハウスも運営しています。

結婚したカップル向けにハネムーンを企画して旅行代理店業へも進出。総合ブライダル企業として成長していました。しかし、競合結婚式場の乱立や婚礼の市場規模縮小により業績が悪化。そこに新型コロナウイルスの感染拡大によるキャンセルが相次ぎ、資金調達の見込みが立たなくなりました。

ロイヤルオークホテルスパ&ガーデンズは、敷地内にゲストハウス型施設「ル・ヴァンベール」を設けて積極的に結婚式を取り込んでいたホテルです。2018年6月に施設をリニューアルオープン。カフェテラスを新設し、披露宴にガーデンビュッフェやデザートビュッフェを取り入れる提案もしていました。

ロイヤルオークリゾートは、前身の株式会社ロイヤルオークシガ(後のビーケー産業)が、38億円の負債を抱えて2004年に破産。対外的な信用が失われ、金融機関からの支援も得られない状態が続いていました。2017年にロイヤルオークリゾートのオーナー一族が全株式をシンガポール系のファンドに売却。

京都が観光地として人気を博す一方、その影響が大津まで広がることはありませんでした。国内外の有名ブランドが京都に次々とホテルをオープンし、客足の途絶えたロイヤルオークホテルの経営は悪化していました。新型コロナウイルスによる緊急事態宣言を受けて6月30日までの休業を決定していましたが、先行きの見通しが立たないことから4月28日に従業員を解雇。負債総額50億円で自己破産申請することとなりました。

400組の挙式延期で28億円の借り入れを決めたエスクリ

ゲストハウス運営のエスクリ<2196>は、2月下旬から3月中に予定していた1,000組の結婚式のうち、400組が延期となりました。新型コロナウイルスの影響で延期を余儀なくされた顧客に対しては、手数料をとらないとしています。同社は2020年3月期の売上予想を344億円から313億1600万円に9.0%引き下げ。経営を安定させるため、28億円の借り入れを決めました。

「ホテル雅叙園東京」を運営するワタベウェディングも130億円の借り入れを決議。コロナにより主力の海外ウエディングが激減したほか、2008年にゆうちょ財団(東京都千代田区)から取得したホテルメルパルクの宿泊客が減少しました。2020年12月期に固定資産の減損損失3億7600万円を計上し、見通しが立たないことから通期の業績予想を未定としています。

2016年3月に上場した新興ウエディング企業ブラス<2424>は、代表の月額報酬50%をカットするなど、役員報酬の減額に動いています。

【通期業績下方修正(百万円)】

企業名 修正後売上予想 修正前売上予想 増減率 決算 理由
東天紅 6,777 6,800 △0.3% 2020年2月期 宴会の延期、キャンセルが発生しているため。
テイクアンドギヴ・ニーズ 63,500 66,000 △3.8% 2020年3月期 3月に予定していた1,200組のうち600組が延期。
エスクリ 31,316 34,400 △9.0% 2020年3月期 2月下旬から3月中に予定していた1,000組のうち400組が延期。
帝国ホテル 54,490 59,000 △7.6% 2020年3月期 宿泊客の減少と宴会のキャンセル、延期が相次いだため。
京都ホテル 9,750 10,232 △4.7% 2020年3月期 宿泊客の減少と宴会のキャンセル、延期が相次いだため。
クラウディアホールディングス 未定 12,600 未定 2020年8月期 婚礼衣装の予約キャンセルが発生し、挙式・披露宴の延期、キャンセルが発生しているため。
ワタベウェディング 未定 52,000 未定 2020年12月期 リゾート挙式、ホテル・国内挙式ともにキャンセルが発生。固定資産の減損損失3億7600万円を計上。
藤田観光 未定 71,000 未定 2020年12月期 宿泊客の減少と宴会のキャンセル、延期が相次いだため。
グローバルダイニング 未定 9,540 未定 2020年12月期 4月の売上が前年同月比80%以上も激減し、今後の見通しが立たないため。

【借り入れ(百万円)】

企業名 借入額 金利 借入期間 実行日 備考
エスクリ 2,800 基準金利+スプレッド 1年~10年 2020年4月末 -
テイクアンドギヴ・ニーズ 10,000 変動金利 契約締結日より1年以内 2020年4月末 当座貸越契約
ワタベウェディング 13,000 - 1年以内 2020年4月下旬 -
藤田観光 22,000 固定金利 5年超 2020年4月30日以降 -

【役員報酬減額】

企業名 役員報酬減額、返上の内容 対象期間
ブラス 代表取締役社長:月額報酬の50%
取締役:月額報酬の20%
監査役:月額報酬の20%
2020年7月まで

現金4億8000万円に対して年内返済の借入金が6億6800万円のグローバルダイニング

イタリアンレストラン「ラ・ボエム」や、創作和食「権八」を運営するグローバルダイニングにGC注記がつきました。同社は「タブローズ代官山」や「ステラート白金台」など、代官山・青山エリアを中心にレストランウエディングを展開しています。

2020年4月の売上高は前年同月比で80%以上減少。非常事態宣言が5月31日まで延長されたことから、5月以降も同様の状況が継続するとみられています。

2020年12月期第1四半期時点での現金及び預金は4億8400万円。売掛金は1億1200万円です。売掛金は2019年12月期末に3億5800万円ありました。四半期で68.2%減少したことになります。一方、買掛金は2億4300万円、短期借入金が3億円、1年内返済予定の長期借入金が3億6800万円あります。年内に返済する借入金に対して、現金が明らかに足りていません。流動比率は44%。100%を下回ると危険水域に入ると言われる水準の半分以下です。

グローバルダイニングは金融機関からの借り入れや取引先への支払い猶予の依頼、役員報酬の減額などの施策を実施し、財務状況の安定化に努めるとしています。

新型コロナウイルスの影響は長期化するとの見方が強まっています。刻一刻と状況が変化する中、結婚式業界最大の繁忙期となる10月に状況は好転するのか。見通しの立たない状況が続いています。

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