上場企業子会社の「解散」「清算」「売却」コロナ禍で増加

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上場企業による子会社の解散、清算、売却が相次いでいる。帝国データバンク(東京都港区)の調査によると、2020年1月から10月末までの間に、解散、清算となった上場企業子会社は 73 件に上り、前年同期比 37.7%増となった。

またM&A Online編集部が調べたところ、2020年上半期(1-6月)に、上場企業による子会社や事業の売却案件は139件に達し、2011年以降の10年間の上半期では過去最多となった。

解散、清算の73件中、新型コロナウイルスが主要因となったのは16 件で、全体の21.9%を占めた。一方、売却では新型コロナウイルスが主要因となったのはわずかだが、業績の悪化や経営資源の集中などを理由に挙げているため、新型コロナウイルスによる景気低迷が要因の一つとなったものと見られる。

現在、新型コロナウイルス感染症拡大の第3波が押し寄せており、上場企業による子会社の解散、清算、売却は当面、高水準の状態が続きそうだ。

サービス業が最多

帝国データバンクは全上場企業に義務付けられた適時開示情報を基に解散、清算件数を集計した。それによるとコロナ禍を理由に子会社を解散、清算した16件中、最も多かったのがサービス業の5件で、全体の31.3%を占めた。現地に進出した日系企業のプロモーション事業を手がけていた企業などの事例があったという。

次いで多かったのは製造業、卸売業、小売業の3件ずつで、それぞれ全体の18.8%を占めた。製造業では航空機内部品や、ケーブルなどの電子部品を手がける企業の事例があったという。

業種別では製造業が21件と最も多く、全体の28.8%を占めた。次いでサービス業の20件(構成比27.4%)、卸売業の16件(同21.9%)と続いた。

子会社の所在地別では日本が28件(同38.4%)で最も多く、次いで中国の11件(同15.1%)、米国の8件(同11.0%)の順となった。

帝国データバンクでは、現時点で新型コロナウイルスによる重大な影響がない場合でも先行きの見通しが難しいことから「事業の合理化に着手し、子会社を解散、清算する動きが広がっている」と分析している。

売却金額が急増

M&A Online編集部は適時開示情報のうち経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)について集計した。上半期中に子会社売却で最も取引金額が多かったのは、LIXILグループ<5938>が、傘下のホームセンター中堅のLIXILビバを売却することを公表した案件で、発表時点での取引金額は約1085億円だった。   

また、売却理由に新型コロナウイルスの影響を上げたのは、東京製綱<5981>が中国のスチールコード生産子会社を現地社に譲渡すると発表した案件。

東京製綱は中国でタイヤ補強材のスチールコードを製造していたが、新型コロナウイルスの影響で受注が減り、工場の稼働を停止していた。安定操業再開の見通しが立たないことから、現地での事業継続を断念し、子会社を売却することにした。

下期に入っても、上場企業による子会社の売却案件は増加傾向にある。ソフトバンクグループ<9984>は、傘下の英半導体設計大手のアーム(ケンブリッジシャー州)を、米半導体大手のエヌビディアに最大4兆2000億円で売却すると発表した。これによって下期は取引金額が一気に膨らんでいる。

帝国データバンクによると「コロナ禍の長期化を見据え、子会社の解散、清算のほか、事業の譲渡や売却を勘案した選択と集中の動きは今後も続くとみられる」としている。

文:M&A Online編集部