芝浦機械・アマダ・トルク…4月から新社名|社数は10年ぶりに1ケタ

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「芝浦機械」に社名を変える東芝機械

主力事業の変化やグローバル展開の進展などを踏まえ、毎年、多くの上場企業が社名変更に踏み切る。その時期が最も多いのは4月で、例年、10社以上を数える。ところが、今年4月は東芝機械、建設用ネジ卸売りの小林産業など6社と10年ぶりに1ケタにとどまる。前年4月(17社)に比べると3分の1だ。

今年に入り猛威を奮う新型コロナウイルスの感染拡大が影響したのかといえば、ノー。各社とも昨年中に社名変更を決定し、その後、中止したところはない。ただ、社数の大幅減は企業経営を取り巻く環境が端境期に差し掛かったことを示しているのかもしれない。

「芝浦機械」…敵対的TOBを制し船出

4月1日の社名変更で最も注目されるのは「芝浦機械」に移行する東芝機械。旧村上ファンド系の投資会社による敵対的TOB株式公開買い付け)の標的になり、多難な船出となるからだ。

TOBに反対する東芝機械は3月27日に臨時株主総会を開き、買収防衛策の発動に関する議案を可決し、最大の攻防戦をひとまず制した。1月下旬に始まったTOBは現在も進行中だが、今後、旧村上系がTOBを撤回すれば、発動を見送る構え。

その東芝機械は1938(昭和13)年に芝浦製作所(現東芝)の出資で「芝浦工作機械」として発足したことにさかのぼる。3年前に東芝の持ち株比率が2%台に低下し、東芝グループを離脱。往年の「芝浦」の社名に回帰して再出発するタイミングで敵対的TOBに見舞われたのだ。新社名の芝浦は工作機械のブランド(SHIBAURA)として現在も使われている。

持ち株会社制をやめ「アマダ」の3文字に

同じ機械大手のアマダホールディングスは2015年に導入した持ち株会社制の廃止に伴い、中核事業会社のアマダを吸収合併して、「アマダ」とする。経営と事業を一体化することで迅速な意思決定につなげる狙いだ。

地図・旅行ガイドブックの昭文社、歌手などのファンクラブ運営事業のエムアップの両社は持ち株会社制への移行に合わせ、「ホールディングス」の名前を冠する。カタカナ社名に変更するのは建設用ネジメーカーの小林産業。本格的な海外展開を見据え、「トルク」(英文表記はTORQ)を名乗る。

Jリート(不動産投資信託)の日本賃貸住宅投資法人は同業の日本ヘルスケア投資法人との合併に伴い、「大和証券リビング投資法人」に変更する。

社名変更は年明け1月、新年度入り4月、下期入り7月、年度後半が始まる10月が多いが、なかでも最も集中するのが4月。昨年4月は日本製鉄(旧新日鉄住金)をはじめ17社あり、2010年以降で最も多かったが、今年は一転して6社に急減。2010年(6社)以来10年ぶりの1ケタとなった。

5月以降、JXTGなど12社が予定

5月以降の社名変更は現時点で12社が予定する。横綱級は6月に「ENEOSホールディングス」に変更するJXTGホールディングス。同社は石油元売り最大手の旧日本石油を中核とするグループ。2017年に経営統合した東燃ゼネラル石油を表すTGが社名から消え、旧日石時代から使われてきたブランド「ENEOS」を社名に採用する。

持ち株会社制移行に伴う社名変更は、定食店運営のフジオフードシステム(7月)、旅行大手のエイチ・アイ・エス(8月)、家電量販店最大手のヤマダ電機(10月)、産業ガス最大手の大陽日酸(10月)などが控える。

反対に、12月には住宅設備・建材最大手のLIXILグループが持ち株会社制を取りやめ、LIXILとなる。

◎上場企業:2020年4月以降の社名変更

新社名 変更前
4月 エムアップホールディングス エムアップ
芝浦機械 東芝機械
アマダ アマダホールディングス
トルク 小林産業
大和証券リビング投資法人 日本賃貸住宅投資法人
昭文社ホールディングス 昭文社
5月 クシム アイスタディ
6月 ENEOSホールディングス(※) JXTGホールディングス
7月 デジタルホールディングス オプトホールディングス
フジオフードグループ本社 フジオフードシステム

デルソーレ ジェーシー・コムサ
サンネクスタグループ 日本社宅サービス
8月 I-PEX 第一精工

H.I.S HOLDINGS エイチ・アイ・エス
10月 日本酸素ホールディングス 大陽日酸

TVE 東亜バルブエンジニアリング
ヤマダホールディングス ヤマダ電機
12月 LIXIL LIXILグループ

※JXTGホールディングスは6月開催の定時株主総会日付。そのほかは各月の1日付で変更

文:M&A Online編集部