御手洗会長が「M&A強化」を宣言したキヤノンに買われた会社

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日本経済新聞によると、キヤノン<7751>の御手洗冨士夫会長兼社長最高経営責任者(CEO)が2022年内に医療・産業機器の材料分野でのM&Aを実施する方針という。キヤノンは過去にも積極的にM&Aに取り組んできた。これまでにキヤノンは、どんな会社を「買った」のだろうか。

東芝の「虎の子」医療機器ビジネスを買収

キヤノン最大のM&Aは2016年3月に発表した、東芝<6502>の子会社でMRIやCTなどの医療用画像診断装置を手がける東芝メディカルシステムズ(現・キヤノンメディカルシステムズ、栃木県大田原市)の買収だった。金額は6655億円。東芝はこの前年の粉飾決算事件で業績が低迷し、「虎の子」の同社をキヤノンに売却せざるをえなくなった。

この買収には「おまけ」がつく。東芝メディカルシステムズは医療用機器リース会社の東芝医用ファイナンス(東京都中央区)の株式35%を所有していたのだ。キヤノンは2017年2月に、残り65%の株式を取得して完全子会社化すると発表した。

現在、キヤノンメディカルシステムズはCT装置の世界シェアで2割強を占め、医療用画像診断装置で国内トップにいる。2020年12月には光の通過量を機械的に分析して、新型コロナウイルスを迅速に判定できる抗原検査キットを開発した。キヤノングループの医療機器事業を支える重要な企業だ。

監視カメラと業務用プリンターでも大型買収

金額が2番目に高かったのは2015年2月に発表したネットワークビデオソリューションを開発・販売するスウェーデンのアクシスに対するM&Aで、金額は3330億円(当時の為替レート)。同社の全株式をTOB株式公開買い付け)で取得し、完全子会社化している。

アクシス創業者を含む上位3株主(合計で約39.5%の株式を保有)がTOBへの応募に同意した、友好的TOBだった。キヤノンはネットワーク監視カメラ事業を今後のグループの成長原動力として位置づけており、アクシスを取り込んでネットワークシステム製品の販売・サービス網を拡充する。

金額の3番目は、業務用大判プリンターで欧米で高いシェアを持つオランダ・オセのTOBによる連結子会社化。金額は約974億円(同)。オセは欧米市場を中心に、文書・産業用印刷システムや高速大判デジタルプリントシステムの開発・製造・販売を展開していた。子会社化により、業務用プリンターの研究開発力やサービス網の強化を狙う。

キヤノンの主な買収

NO. 年月日 取引価額 (億円) 内  容
  1 2017年4月26日 株式交換 デジタルカメラ製造の宮崎ダイシンキヤノンを完全子会社化
  2 2017年2月21日       31.40 医療用機器リースの東芝医用ファイナンスを買収
  3 2016年3月17日 6,655.00 東芝子会社の東芝メディカルシステムズを買収
  4 2015年2月10日 3,337.00 スウェーデンのネットワークビデオソリューション会社アクシスを買収
  5 2011年11月9日        24.39 キヤノンマーケティングジャパンを通じて昭和情報機器をTOBで買収
  6 2011年4月21日        37.95 キヤノンマーケティングジャパンを通じてエルクコーポレーションをTOBで買収
  7 2009年11月16日      974.79 オランダのプリンター製造大手オセをTOBで買収
  8 2008年12月12日     非公表 キヤノンマーケティングジャパンを通じてIT研修事業のNRIラーニングネットワークを買収
  9 2008年10月14日        35.79 キヤノン電子を通じてアジアパシフィックシステム総研をTOBで買収

これからキヤノンが、どの会社を買収するのか?御手洗会長兼社長は「有機ELや3Dプリンター向け材料、体外診断に使う検査試薬」などの素材メーカーをターゲットにしているという。すでに水面下ではM&Aの交渉が進められているかもしれない。

文:M&A Online編集部