【コロワイド】市場縮小もM&Aにより成長軌道へ

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画像はイメージです。

M&Aによる成長で、
ワタミを抜き業界5位に

 1963年創業のコロワイド<7616>は、神奈川県・逗子を起点とし、手づくり居酒屋甘太郎の居酒屋事業を原点としている。97年、外食産業の市場規模は29兆円と大きなものであった。しかし、2011年の市場規模は24兆円と2割減少した状況下、コロワイドはM&Aを繰り返すことで売り上げを伸ばし、成長を可能としてきた。

 02年の平成フードサービスの買収を皮切りに、現在まで15社のM&Aを繰り返している。現在、外食産業における売上高ランキングでは、ワタミを追い抜き第5位の位置にある。特にコロワイドのM&Aの中で注目すべきは、12年の牛角を展開するレックス・ホールディングスの買収と、15年のかっぱ寿司を運営するカッパ・クリエイトホールディングスの買収である。これにより同社は、今期よりコロワイドの連結子会社となる。連結での売上高は2500億円弱を見込んでおり、15年度は日本マクドナルド・ホールディングスを追い抜き、業界第3位に浮上することが予測される。

■2014年度のコロワイドと飲食産業他社の売上高

■コロワイドの主なM&A

年月 内容
2002.1 和食レストランなどを展開する平成フードサービスの全株式を取得、4億円にて買収
2002.8 本格カリフォルニアレストランのダブリューピィージャパンの株式60%を1億2000万円にて買収
2002.11 明治製菓全額出資の外食子会社、明治製菓リテイルの全株式を取得
2003.2 居酒屋チェーン「いろはにほへと」などを展開するドリームフードから居酒屋店舗を10億円にて事業譲渡
2004.2 同業の贔屓屋の株式33.1%を11億4000万円にて買収
2004.3 贔屓屋の株式を50.12%まで追加取得
2004.6 贔屓屋の株式を2億8000万円にて58.41%まで追加取得
2004.8 民事再生法を適用した飲食店経営ユメキタスリンクの営業権を8億円にて取得
2004.8 和食店運営のなか卯の株式5.35%を1億9000万円にて取得
2004.10 居酒屋、レンタルビデオ、カラオケ店経営のアムゼの全株式を38億円にて買収
2004.10 贔屓屋の株式を14億6000億円にて100%まで追加取得
2005.6 焼肉屋などを経営するがんこ炎の株式88.64%を22億7000万円にて買収
2005.9 アトムから岐阜県内のセントラルキッチン店舗を5億円にて譲り受ける
2005.10 アトムの店舗の回転すし「にぎりの徳兵衛」などを1億2000万円にて譲り受ける
2005.10 アトムの親会社のオリンパス・キャピタル・ダイニング・ホールディングスの株式90.19%を8億円にて買収
2005.10 セルフ・オーダー・トータル・システム開発を行うワールドピーコムの株式90.19%を8億円にて買収
2006.7 ステーキを主とする飲食店「宮」の株式52.4%を72億円にて買収
2008.3 水産物加工、卸しの番能水産から2億9000万円にて事業を譲り受ける
2012.10 焼肉チェーン「牛角」などを展開するレックス・ホールディングスの株式66.6%を137億3000万円にて買収
2014.12 カッパ・クリエイトホールディングスの株式を公開買い付けおよび第三者割付増資により264億7000万円にて50.71%を取得


出典:コロワイド公式サイト

コロワイドのM&Aの特徴と
直近年の財務分析

 コロワイドの創業事業は居酒屋であるが、外食産業の中でも居酒屋の市場規模は1兆円といわれており、レストランの市場規模である12兆円より小さい。しかも居酒屋は、今後も若年層のアルコール離れなどの影響によりダウントレンドが続く可能性が高い。

 コロワイドは過去10年間、居酒屋以外の外食企業のM&Aを続け、業態を変化させてきた。12年には牛角を運営するレックス・ホールディングスを買収、14年には、かっぱ寿司のカッパ・クリエイトホールディングスを買収した。過去、多くの買収を行ってきたコロワイドでも、14年時点では6割が居酒屋、レストラン事業は4割程度という売上比率であった。これがカッパ・クリエイトホールディングスの買収により、一気に7割程度にまで増加する。売上比率が大きなものとなるため、業績が好調とは言い難いカッパ・クリエイトホールディングスの業績の改善は急務となるだろう。

■セグメント別売上高推移


 また、コロワイドにとって問題になるのは、財務の安全性という点であり、有利子負債の多さと自己資本比率の低さは同業と比べても目立つ数字となる。


 一般的に外食業界は自己資本比率が15%以上であれば問題ないとされているが、カッパ・クリエイトホールディングスの買収により、その比率は15%を割ってしまった。自己資本比率が小さく負債が大きい場合でも、好業績の時は問題ない。しかし、仮に業績不振に陥った場合、増資による資金調達の必要性や事業自体を売却しなければいけないといった問題が生じる可能性がある。

 コロワイドは、今後もM&Aを行い事業拡大すると明言している。これまで買収してきた企業は、自社で立て直しや収益化を図ってきており譲渡はしていない。この実績が、コロワイドがM&A巧者といわれるゆえんであろう。

 また、中期経営計画として現在の73業態を5年かけて約20業態に集約する予定である。昨年買収したかっぱブランドは集約する約20業態の中でもコア事業となるだろう。このかっぱ寿司ブランドの早期収益化をできるかできないかが目下の課題であり、コロワイドの手腕に注目度が集まる。

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ・M&A Online編集部