数あるM&A専門書の中から、新刊を中心にM&A編集部がおすすめの1冊をピックアップ。選書の参考にしてみては
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「アクティビストの衝撃」菊地 正俊 著、中央経済社 刊
アクティビスト(物言う株主)といえば、日本ではとかく「疫病神」などといったマイナスイメージがつきまとう。2000年代半ば、旧村上ファンドや米スティール・パートナーズの脅威が猛威を振るった頃(第2次アクティビスト・ブーム)の悪評がいまだに払拭されていないことと無関係ではない。
今、日本は第3次アクティビスト・ブームの中にあるという。安倍政権のコーポレートガバナンス改革の流れを受けて、経営改善や株主還元に向けた株主提案が広がり、外資系ファンドの日本参入も活発化している。
そんな知っているようで知らないアクティビストについて、日本での活動の歴史を振り返りつつ、最新の動向を紹介したのが本書。アクティビストの実態と行動パターン、そしてターゲットとなった企業の反応・対応を豊富な実例を交えて明らかにする。
著者自身、海外のほとんどのアクティビストと面談したことがあるという。世界最大の運用資産(約4.2兆円)を持つ米エリオット・マネジメント、ソニーに半導体事業の分離を要求している米サードポイント、オリンパスに取締役を送り込んだ米バリューアクト、東芝の大株主になった米キングストリート、奥村組株を長期保有する英シルチェスターなど、海外大手アクティビストの成り立ちや投資内容を詳しく解説している。
アジアでは香港のオアシス・マネジメント、シンガポールのエフィッシモキャピタルマネージメントなど。エフィッシモは旧村上ファンド出身者が設立したファンドで、運用資産は1兆円超とされる。
日本勢ではストラテジックキャピタル、スパークス・グループ、みさき投資、あすかアセットマネジメントなど。その中で著者は、日本人が経営するファンドで、アクティビストのレッテルを張っても拒否しないのは、ストラテジックキャピタルぐらいだと、その立ち位置を“称賛”する。その同社も旧村上ファンド出身者が立ち上げた。
もちろん、最近、アクティビストとして復活した村上世彰氏の動静についても詳しくページを割いている。
アクティビストの投資対象になりそうな要警戒の企業とは? 第7章にはその候補企業のリストがまとめられている。(2020年3月発売)
文:M&A Online編集部