「新たな信託ソリューションと法務」|編集部おすすめの1冊

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数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

「新たな信託ソリューションと法務」 みずほ信託プロダクツ法務研究会編、金融財政事情研究会刊

信託とは自身の財産を、信頼できる人に託して、運用、管理してもらう制度で、個人の財産だけでなく、企業の資産運用のほか高齢者や障がい者を対象とした公益、福祉のためのものもある。

あらゆる種類の信託が可能であり、信託でないと実現できないニーズを掘り起こすことで新しい価値を創出することができるという。

新たな信託ソリューションと法務

本書は、弁護士を中心にみずほ信託銀行の役員や社員ら合わせて20数人で構成する「みずほ信託プロダクツ法務研究会」が、M&Aや事業承継に関わる「議決権コントロール」をメインテーマに、問題解決につながる新しい信託について検討した結果を、信託銀行などの実務家や法律家、企業経営者向けにまとめたものだ。

M&Aや事業承継の際に、議決権をコントロールするための信託とはどのようなものなのか、信託を活用した議決権コントロールに関する信託法上、会社法上の許容性などを取り上げたうえで、TOB株式公開買い付け)規制、スクイーズアウト(少数株主を金銭などを交付して排除する制度)の会社法上の規制、さらには企業統合規制などで、それぞれ実務上の課題に対する信託の活用の可能性を示している。

このほかにも政策保有株式の処分やブロックチェーン技術を用いたデジタル証券の流通に関して信託の活用の可能性を探るなど、さまざまな企業取引において信託を活用した課題解決法があることが分かる。

信託に馴染みのない読者向けに信託の基礎を概説しているほか、各章にコラムも盛り込み、理解が進むように工夫してある。

これまでには無かった分野で信託を活用することで、企業活動や財産承継に関する問題が解決できるのであれば、日本経済にとってプラスとなる。信託に疎い人でも、一読する価値はありそうだ。(2022年2月発売)

文:M&A Online編集部