毎年恒例となっている秋のアップル新製品発表会。今年は4モデルが同時発表された。ユーザーにとって悩ましいのは、新モデルが「買い」なのか、それとも「待ち」なのか?「iPhoneシリーズ」の場合、毎年必ず新機種が出るので、迷う人も多いだろう。そこで2021年9月15日(日本時間)に発表された新モデルの「買い」と「待ち」を評価してみた。
2年半ぶりのモデルチェンジとなる「iPad mini(第6世代)」は、2012年12月に発売された初代から、9年ぶりにデザインを全面変更した「フルモデルチェンジ」を遂げている。初代以来、ディスプレーの下にあったホームボタンを廃止。ベゼル(枠)を狭くするなどの工夫で、成人男性なら片手で持てる小型サイズのまま、画面を前モデルの7.9インチから8.3インチへ拡大。最上位機の「iPad Pro」や「同Air」を、そのまま小型化した外観になった。
iPhoneシリーズは指紋センサー(Touch ID)内蔵のホームボタンの廃止と同時に顔認証の「Face ID」へ移行したが、ユーザーからは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大で当たり前になったマスク着用時に認証しにくいと不満を持たれている。iPad mini(第6世代)では本体側面にTouch IDを移し、指紋認証でロック解除や認証ができる。デルタ株の流行で当面コロナ禍は続きそうで、Touch IDを残したのはアドバンテージだろう。
CPUには同時発表された最新の「iPhone13」と同じ「A15 Bionic」を採用。画像処理などに使われるGPUには、iPhone13シリーズの最上位機種「Pro」と同等の5コアバージョンを搭載している。miniの上位機で「A14 Bionic」搭載のAirをしのぐ処理能力を持つ。iPad Proに搭載されている「M1」もA14がベースとされており、最上位機種に迫る性能と言えそうだ。
セルラーモデルはiPad miniシリーズとしては初めて第5世代移動体通信規格(5G)に対応した。充電や外部アクセサリーを接続するポートは前モデルまでのアップル独自規格「Lightning」から、iPad ProやAirと同じ標準規格の「USB-C」に変更されている。ペン型入力デバイスの「Apple Pencil」も、前モデルでは使えなかった上位モデルの第2世代が利用できるようになった。
変わっていないところを探すのが難しいほどの全面改良ながら、価格は5万9800円(ストレージ容量64GBモデル、税込=以下同)からと、現行のAir(同64GBモデル、6万9080円から)や同じCPUを搭載している「iPhone13 Pro」(同128GBモデル、12万2800円)よりも安い。同じ256GBモデルで比べればiPhone13 Proの13万4800円に対して、iPad miniは7万7800円と半額近い。コストパフォーマンスの高さはピカイチだ。
miniの次世代機投入は2023年か2024年になる見込みだが、その際もCPUのバージョンアップやストレージの増量といったマイナーチェンジに留まるだろう。強く「買い」を推奨する。
「Apple Watch Series 7」はiPhoneシリーズ同様に1年ぶりの新モデル投入だ。健康志向の高まりと共にウェアラブル端末市場は活況を呈しており、今後も1年ごとのモデルチェンジとなりそうだ。Series 7で注目すべきは画面の大型化だろう。本体の大型化と併せてベゼルを狭くし、前モデルに比べて画面が約20%も大きくなった。画面を保護するクリスタルガラスは前モデル比で50%厚くなり、耐久性も向上した。
バッテリー駆動時間は前モデルと同じ18時間だが、充電速度は33%速くなり45分間で0%から80%まで充電できるという。期待された血糖値や血圧、体温なといった新たなヘルスセンサーは搭載されなかった。価格は発表されていないが、前モデルと同レベルと予想される。大幅な値上げや値下げはないだろう。
来年発売される「Apple Watch Series 8」では新たなヘルスセンサーが追加される見通しで、血糖値や血圧、体温などを常時モニターしたいユーザーは「待ち」かもしれない。だが、こうしたヘルスセンサーは医療機器の規制を受け、発売後直ちに利用できない可能性もあることに留意しておきたい。心電図センサー機能は2018年9月発売の「Apple Watch Series 4」から搭載されていたが、日本で利用できるようになったのは2021年1月からだ。Series 8が新たなヘルスセンサーを搭載したとしても、すぐに日本で使えるかどうかは分からない。
そうした将来の不透明性を考慮すれば、大画面化や充電速度の向上という使い勝手の良さを実現したSeries 7は今年買っても後悔はしないだろう。「買い」推奨だ。
今回の新製品発表の主役だった「iPhone13シリーズ」は、事前の予想通り小幅な変更に留まった。ラインナップも先代の「iPhone12シリーズ」と同じく「13」「13 mini」「13 Pro」「 13 Pro Max」の4本立て。販売不振で「廃盤説」が流れた「mini」も生き残った。
カメラやセンサーなどを配置する「ノッチ」とよばれる画面に食い込んだ部分は前モデルで20%小さくなったが、ディスプレーサイズは同じ。「13」「13 mini」は輝度が上がり、「13 Pro」「 13 Pro Max」はリフレッシュレートが120Hzに向上して動画などの動きがスムーズになった。
カメラは全モデルでセンサーシフト光学式手ぶれ補正や「シネマティックモード」などの新機能が追加されたが、相変わらず1200万画素のまま、カメラの数も「13」「13 mini」は広角、超広角の2個、「13 Pro」「 13 Pro Max」はそれに望遠を加えた3個で、前モデルと変わらない。
耐水性能も水深6メートルで最大30分間と前モデルと同じ(前々モデルの「iPhone11」は同2メートルで最大30分間だった)。ただ、CPUは最新のA15 Bionicに世代交代している。バッテリー駆動時間はいずれも前モデル比で「13 Pro」が5時間長い22時間、「13」が2時間長い19時間、「13 mini」が2時間長い17時間と伸びた。ストレージも最大容量が2倍に増えている。
前モデルに比べると地味にパワーアップしているが、即買いするほどの劇的な変化はない。iPhone13シリーズにプリインストールされる9月21日配信予定の「iOS15」は、2015年9月に発売された「iPhone6s」以降の全モデルで動くため、それ以前の超旧モデルでないのなら「様子見」という手もある。「iPhone14」は大幅な機能アップが見込まれる。「13シリーズ」は「待ち」でよいだろう。
「無印iPad」とも呼ばれる最廉価モデル「iPad」の第9世代も、iPhoneやApple Watch同様に1年ぶりの新型機投入となった。画面サイズやデザインに変更はなく、セルラーモデルの通信方式は4G LTEのまま。Apple Pencilも前モデル同様、第1世代しか使えない。
変更点としてはCPUに前モデルより1世代新しい「A13 Bionic」を搭載し、ストレージも2倍の64GBと256GBとなった。リモート会議や遠隔授業などで使われるインカメラは、120万画素から1200万画素へと大幅に強化された。背面カメラは800万画素で、変更はない。
特に買い替えを推奨するほどのモデルチェンジではないが、iPadを購入するユーザーの動機は「安さ」。「とにかく安くあげたい」となれば「iPad」一択だ。選択の余地はない。価格は3万9800円からと、最高で27万9800円もするiPad Pro(12.9インチ、ストレージ2TBのセルラーモデル)のように購入を悩むほどの高額商品でもない。子供用や「とりあえずiPadを使ってみるか」というユーザーが気軽に購入できるのがiPadの魅力だ。必要になったら「いつだって買い」のお試しモデルといえる。
文:M&A Online編集部
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