2022年6月8日に新規上場したANYCOLOR<5032>の株価が、6月16日に一時9,200円の高値をつけました。公開からわずかな期間で公募価格1,530円の6倍にまで達したのです。ANYCOLORはVTuberグループ「にじさんじ」を運営する会社。動画サイトで活躍するクリエイターを抱え、広告や投げ銭で収益を得るモデルはUUUM<3990>と似ていますが、他社にはないANYCOLOR独自の強さを持っています。
ANYCOLORはなぜこれほどまでに評価されているのでしょうか?この記事では以下の情報が得られます。
・ANYCOLORの業績
・事業内容
ANYCOLORの2022年4月期の売上高は前期比85.5%増の141億6,400万円、経常利益は同185.9%増の41億4,900万円でした。上場前の6月8日に2022年4月期の業績予想を出しており、売上高を132億5,900万円、経常利益を31億3,100万円としていました。売上高、経常利益ともに予想を上回っての着地となっています。
ANYCOLORは極めて成長性の高い会社です。2021年4月期に経常利益は前期の35倍となる14億5,100万円となりましたが、2022年4月期はそのおよそ3倍。2023年4月期は業績予想に幅を持たせているものの、上限値で着地をすると1.6倍に伸びることになります。
2018年4月期 | 2019年4月期 | 2020年4月期 | 2021年4月期 | 2022年4月期 | 2023年4月期 予想 |
|
売上高(百万円) | 16 | 866 | 3,478 | 7,636 | 14,164 | 21,000 |
前期比 | - | 5412.5% | 401.6% | 219.6% | 185.5% | 148.3% |
経常利益(百万円) | -3 | 47 | 42 | 1,451 | 4,149 | 6,480 |
前期比 | - | - | 89.4% | 3454.8% | 285.9% | 156.2% |
経常利益率 | - | 5.4% | 1.2% | 19.0% | 29.3% | 30.9% |
VTuberとは二次元のオリジナルのキャラクターに、配信者と呼ばれる声の出演者を掛け合わせ、ライブストリーミングを通してチャンネル登録者などとコミュニケーションを図るものです。YouTuberとよく似ていますが、ヒトが表に出るかどうかに大きな違いがあります。
ANYCOLORの2021年4月期の経常利益率は29.3%。事業内容が近いUUUMの2021年5月期の経常利益率は3.5%です。25ポイント以上も引き離しています。利益率が驚くほど高い理由はANYCOLORがVTuberのイラスト、キャラクターなどのIPを会社が保有していること。有価証券報告書にはIPを保有することで、コマース領域やプロモーション領域への展開がしやすいとしています。
ANYCOLORは動画配信のライブストリーミング、物販のコマース、リアルイベント、企業とのタイアップ案件であるプロモーションの4領域に渡る事業を展開しています。強さの秘訣はそれぞれの構成比率に表れています。
■ANYCOLOR4半期ごとの事業別売上高
VTuberの主戦場だと思える動画配信のライブストリーミングの売上高は全体の3割程度。コマースの方がはるかに多く稼いでいるのです。
にじさんじはWeb上にオフィシャルストアをオープンしています。その中で売れ筋商品となっているのが「ボイス」と呼ばれる音声データ。にじさんじに参加しているメンバーが集まり、新規書下ろしの台本に沿って音声のみのドラマを展開するものです。
「ボイス」は200~2,000円ほどで販売されています。
ANYCOLORの2021年4月期の原価率は61.5%。UUUMは73.5%です。ANYCOLORは原価を低減しやすいコマースの売上構成比率が高いことが利益を押し上げている要因の一つです。
UUUMは売上高の大半をアドセンスと企業とのタイアップ案件が占めています。このような売上構成の場合、UUUMは収益の大半をYouTuberに支払うことになり、原価率を下げることができません。
■UUUM4半期ごとの事業別売上高
UUUMとANYCOLORは事業モデルが似ているようにも見えます。しかし、UUUMはYouTuberをマネジメントする会社、ANYCOLORはIPを活用してビジネスを展開する会社です。IPでビジネスの幅を広げている会社にKADOKAWA<9468>があります。ANYCOLORの事業展開はどちらかというとKADOKAWAに似ています。
ANYCOLORの伸びしろが海外展開。
■NIJISANJI EN
ANYCOLORは2021年5月に英語圏向けのグループ「NIJISANJI EN」を立ち上げました。海外事業は2022年2-4月に売上高8億円を突破し、主力4事業の1つであるプロモーション事業の売上高を抜いています。
唯一無二のビジネスモデルであることや、利益率・成長性が高いことが市場から評価されている要因だと考えられます。
また、ANYCOLORはベンチャーキャピタルからの出資が比較的少なく、上場前は代表の田角陸氏が43.11%を保有していました。売出株数が少なく、希少性が高かったことも株価を押し上げる一因になったと考えられます。
■上場前の上位10の株主
麦とホップ@ビールを飲む理由