アパレルブランド「ニコアンド」を展開するアダストリアが好調です。2024年2月期通期の売上予想を従来より3.8%高い2700億円に引き上げました。純利益は予想比で27.7%増の120億円を見込んでいます。
新型コロナウイルス感染拡大、エネルギー価格高騰の影響が想定していたよりも悪化せず、予想を上回る見通しとなりました。猛暑も追い風になっています。
2022年にTOBで連結子会社化した飲食店運営のゼットン<3057>も業績回復が顕著。今期の売上高はコロナ前を上回る見通しです。
この記事では以下の情報が得られます。
・アダストリアの業績推移
・好調の要因
・ゼットン買収の背景
アダストリアは、コロナ禍で営業活動が制限された2021年2月期に売上高が2000億円を下回りました。しかし、その回復力は強く、2023年2月期の売上高はコロナ前の2020年2月期の数字を上回りました。
2024年2月期の業績が予想通りに着地をすると、売上高は前期と比較して11.3%、営業利益は56.3%も増加する見込みです。営業利益率は6.7%となり、コロナ前の2020年2月期の営業利益率5.8%を0.9ポイント上回ります。
2023年はアパレル業界にとって追い風が吹いた年となりました。コロナ禍の収束で商環境の正常化が進んだ他、春先から気温の高い日が続き、夏は記録的な暑さの日が続きました。アダストリアの2023年4月の全店の売上高は前年同月比で117.1%、7月は120.6%となりました。
ユニクロを運営するファーストリテイリング<9983>は、2023年8月期の売上高が前期比18.6%増の2兆7300億円を見込んでいます。2桁増収となるのは5期ぶりです。
アダストリアはニコアンドの他にも、グローバルワークやスタディオクリップ、ローリーズファームなど、上期だけで売上高が100億円を超えるブランドを多数抱えています。現在、店舗数を拡大して売上高の伸びが著しいのがラコレ。2024年2月期上半期の売上高は52億6300万円で、前年同期間比で1.5倍に拡大しました。
ラコレは衣服のみならず生活雑貨も扱っており、コストパフォーマンスに優れているのが最大の特徴。シンプルでクセがなく、万人に好まれるデザインになっています。
2022年4月にオープンしたエキソアレ西神中央店は、ラコレの国内最大級の店舗。面積は237坪で、ペットやフィットネスアイテムも扱っています。
エキソアレ西神中央は1階にスーパーマーケットがあり、2階には無印良品が出店しています。ラコレが出店したのは無印良品の向かい。アダストリアの主力ブランドであるニコアンドやグローバルワークは20~30代の男女を主要なターゲットとし、ショッピングモールを中心に出店してきました。ラコレはスーパーマーケットを利用する買い物客や、無印良品に足を運ぶ幅広い層をターゲットとしています。
ラコレのブランド展開が成功すると、アダストリアはブランドポートフォリオを強固なものにすることができます。万人受けしやすい衣服と雑貨を扱う店舗の出店攻勢を強めている現在は、事業が大きく変化する転換点にいると見ることができるでしょう。
アダストリアの業績で見逃せないのが、レストラン「アロハテーブル」を展開するゼットン<3057>の回復。アダストリアはもともと議決権ベースでゼットンの株式を25%保有していましたが、2022年にTOBを実施して51%に高めました。取得額は16億円。買収総額28億円を投じ、ゼットンを連結子会社化しました。
ゼットンはもともと「ヴァンパイアカフェ」や「バグース」などを運営するDDグループ<3073>の連結子会社でした。ゼットンの創業者・稲本健一氏はDDの取締役に就任し、海外事業を統括するなど精力的な活動をしていました。
状況を大きく変えたのが、新型コロナウイルス感染拡大の脅威でした。DDは2021年2月期に85億円もの純損失を計上。債務超過となりました。稲本氏は海外事業が赤字になった責任をとって2021年2月にDDの取締役を辞任。ゼットンの立て直しに奔走します。ゼットンは2020年2月末時点で自己資本比率が33.4%ありましたが、1年で4.2%まで縮小していました。
ゼットンは2020年11月にキーコーヒー(東京都港区)などを引受先とした第三者割当増資を実施。親会社DDの持株比率は40%を下回りました。
最終的にゼットンは、アダストリアの傘下に入るという決断を下します。
ゼットンは2024年1月期の売上高を前期比27.0%増の115億円と予想しています。
2024年1月期の売上高は、2021年2月期(ゼットンは2023年に決算期を変更)の数字を上回る予定です。
近年は、商業施設の屋上や公演の敷地にビアガーデンやバーベキュー場を積極出店しています。ゼットンは居酒屋やダイニングを得意としていましたが、時流を見極めて小回りを利かせた経営を行っています。
麦とホップ@ビールを飲む理由